精神科訪問看護指示書とは?書き方のポイントを解説

【お願い】
「こころみ医学の内容」や「病状のご相談」等に関しましては、クリニックへのお電話によるお問合せは承っておりません。

診察をご希望の方は、受診される前のお願いをお読みください。

精神科訪問看護指示書の作成の流れについて、詳しく解説していきます。

「訪問看護サービスを提供するためになくてはならないのが、訪問看護指示書という文書です。

訪問看護師として、訪問看護指示書に関する知識は必須と言えます。

今回は、特に精神科訪問看護に関する指示書について、解説していきます。

訪問看護指示書とは?

訪問看護指示書には、利用者の基本情報や傷病名・治療状況、必要な医療処置等が記載されています。

訪問看護指示書には、以下の通り5種類あります。

  • 訪問看護指示書
  • 特別訪問看護指示書
  • 在宅患者訪問点滴注射指示書
  • 精神科訪問看護指示書
  • 精神科特別訪問看護指示書

精神科訪問看護の場合は「精神科訪問看護指示書」が必要です。

また、訪問看護は、利用者の疾患によって診療報酬(医療保険)で請求する場合と介護報酬(介護保険)で請求する場合に分かれます。

精神科訪問看護指示書が発行されている場合には、診療報酬(医療保険)で請求するため、指示書の種類には注意しましょう。

精神科訪問看護指示書で訪問できるのは看護師だけではない

精神科訪問看護指示書が発行された場合、看護師以外にも作業療法士や精神保健福祉士、保健師の訪問が可能です。

精神科訪問看護指示書は誰が作成する?

訪問看護指示書は、主治医が患者にとって訪問看護が必要と認めた際に、訪問看護ステーションに対して交付します。

精神科訪問看護の場合も同様ですが、精神科訪問看護指示書を交付できるのは「精神科を標榜する保険医療機関において、精神科を担当する医師に限る」とされています。

各自治体のホームページに、精神科を標榜する医療機関一覧があるので、初めて指示書の交付を受ける医療機関については、念のため確認しておくほうが良いでしょう。

指示書の取り扱いは?

原本を訪問看護ステーションに交付し、発行した医療機関が指示書の控えを保管します。

発行された指示書を元に、精神科訪問看護師は、精神科訪問看護計画書を作成します。

その為、しっかりと指示書の内容を確認することが大切です。

精神科訪問看護指示書の見方

次に、精神科訪問看護指示書の見方について、特に知ってほしいポイントを中心に解説します。

精神科訪問看護指示書の具体例を示します。
精神科訪問看護指示書記載例(PDF)

指示期間

訪問看護サービスを提供できるのは、指示期間内のみです。

指示期間として記載できるのは、最大6ヶ月までというルールがあります。

指示期間が空白の場合は、記載日から1ヶ月間が指示書の有効期限となります。

主たる傷病名

利用者の病名が記載されています。

精神科訪問看護指示書には、もちろん精神疾患名が記載されています。

ただし、精神科訪問看護指示書で注意が必要なのは、認知症と記載されている場合です。

認知症の場合、精神科に通院する患者さんも多いですし、訪問看護を必要とする方もいます。

しかし、主たる傷病名に認知症しか記載されていない場合、精神科訪問看護指示書が無効になることがあります。

※指示書を発行する医療機関が精神科在宅患者支援管理料を算定している利用者は、精神科訪問看護の対象です。認知症しか記載がない精神科訪問看護指示書を交付された場合は、発行している医療機関に、この加算を算定している確認しましょう。

病名告知

病名告知がなしに丸がついている場合は、利用者に病識がないことが想像されます。

事前に主治医と利用者への関わり方について確認しておきましょう。

複数名訪問の必要性

複数名訪問とは、訪問看護師が単独で訪問するのではなく、2名以上で訪問することです。

複数名訪問が必要かどうかは、以下のような判断基準があります。

  • 暴力行為、著しい迷惑行為、器物破損行為等が認められる者
  • 利用者の身体的理由により一人の看護師等による訪問看護が困難と認められる者
  • 利用者及びその家族それぞれへの支援が必要な者

短時間訪問の必要性

精神科訪問看護は、1回あたりの訪問時間が30分以上と定められています。

ただし、30分以上介入することが、利用者さんにとって病状の悪化等に繋がる恐れがある場合もあります。

そのような利用者に対しては、短時間訪問の必要性「あり」の指示になります。

精神訪問看護に関する留意事項及び指示事項

精神科訪問看護師に対して必要な指示内容が記載されています。

記載されている内容は精神科訪問看護計画書にしっかりと反映して、個別性のある計画書を作成しましょう。

また、医療処置が必要な場合には、主治医に依頼して、必ず指示書に記載してもらいましょう。

訪問看護師の業務は、病院で働く看護師と同様に「診療の補助」と「療養上の世話」です。

「診療の補助」は医師の指示に基づいて行う医療行為なので、その点も意識して指示書を確認しましょう。

さいごに

今回は精神科訪問看護指示書について解説しました。

これらのポイントをしっかりと押さえて、精神科訪問看護師としての知識を深めていきましょう。

【お願い】
「こころみ医学の内容」や「病状のご相談」等に関しましては、クリニックへのお電話によるお問合せは承っておりません。

診察をご希望の方は、受診される前のお願いをお読みください。

【お読みいただいた方へ】
医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。

クリニック一覧

医療職はもちろんのこと、法人運営スタッフ(医療経験を問わない総合職)も随時募集しています。

(医)こころみ採用HP

取材や記事転載のご依頼は、最下部にあります問い合わせフォームよりお願いします。

画像名の[sample]の部分に記事の名前を入れます

執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:訪問看護  投稿日:2023年3月10日

\ この記事をシェアする /

TWITTER FACEBOOK はてな POCKET LINE

関連記事

悲哀のプロセスとは?対人関係療法で扱う喪失体験への対応

大切な人を失う体験は、人生の中でも大きなストレスイベントであるとされています。 喪失体験を乗り越えていく過程では、行き場のない感情や身体症状など多様な反応が起こります。 人生における危機の一つといえますが、時間の経過とと… 続きを読む 悲哀のプロセスとは?対人関係療法で扱う喪失体験への対応

投稿日:

認知症にならないために注意すべきポイント

この記事では、認知症にならないために、食生活、運動、社会活動、ストレス発散、質の良い睡眠、聴力低下の対策、レクリエーションにおいて注意すべきポイントを解説します。 認知症にならないために注意すべきポイントになります。 認… 続きを読む 認知症にならないために注意すべきポイント

投稿日:

認知症の中核症状と周辺症状の違い・覚え方・対応策

認知症の方には、さまざまな症状が見られるため、介護する際に困惑することが少なくありません。 その際に、認知症の症状を中核症状と周辺症状に分類してとらえると理解しやすいです。 この記事では、認知症の中核症状と周辺症状の違い… 続きを読む 認知症の中核症状と周辺症状の違い・覚え方・対応策

投稿日:

人気記事

デエビゴ(レンボレキサント)の効果と副作用

デエビゴ(レンボレキサント)とは? デエビゴ(一般名:レンボレキサント)は、オレキシン受容体拮抗薬に分類される新しい睡眠薬になります。 覚醒の維持に重要な物質であるオレキシンの働きをブロックすることで、睡眠状態を促すお薬… 続きを読む デエビゴ(レンボレキサント)の効果と副作用

投稿日:

睡眠薬(睡眠導入剤)の効果と副作用

睡眠薬(精神導入剤)とは? こころの病気では、睡眠が不安定になってしまうことは非常に多いです。 睡眠が十分にとれないと心身の疲労が回復せず、集中力低下や自律神経症状などにつながってしまいます。ですから睡眠を整えることは、… 続きを読む 睡眠薬(睡眠導入剤)の効果と副作用

投稿日:

抗不安薬(精神安定剤)の効果と作用時間の比較

過度な不安が辛いときに有効な『抗不安薬』 不安は非常に辛い症状です。心身へのストレスも強く、身体の自律神経のバランスも崩れてしまいます。 抗不安薬(精神安定剤)は、耐えがたい不安で苦しんでいる方には非常に有用なお薬です。… 続きを読む 抗不安薬(精神安定剤)の効果と作用時間の比較

投稿日: