【専門家が解説】CES-D(うつ病自己評価尺度)
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CES-Dとは?
CES-Dとは、一般人におけるうつ病の発見を目的として開発されたテストです。
The Center for Epidemiologic Studies Depression Scale の略で、米国国立精神保健研究所(NIMH)により疫学研究用に開発された、自記式で実施するうつの心理検査で、患者さん本人が質問項目に答えていくことで、うつの症状を評価することができます。項目数も20項目と比較的少なく、エネルギーが低下したうつ状態の方でも行うことができる心理検査です。
実際、うつ状態であっても、本人はうつを自覚できない場合があります。そのため、うつ病の早期発見のスクリーニングのために、職場や学校などでも使われています。治療過程での症状の評価のために、治療の場でも使われています。
CES-Dは、ZungのSDS、BeckのBDI、MMPIなどの今まで使用されてきたうつ病の評価尺度を参考に、それぞれの項目を取捨選択して作成されました。
- 16個のネガティブ項目 (symptom-present) :うつ気分・身体症状・対人関係
- 4個のポジティブ項目(symptom-absent) :ポジティブ気分
の20項目から構成されています。
CES-Dは、うつ状態の症状を確認することによって、スクリーニング検査や治療評価、研究目的などで広く使われています。
うつの心理検査 CES-Dの目的
先述の通り、CES-Dは、一般的な生活を行っている人の中でうつ状態に陥っている人を発見することを目的に開発されました。そのため、CES-Dの検査を行うことは、客観的にうつ状態であるかを評価する一助になります。質問が少なくて簡便であるだけでなく、検査としての有効性も優れていることから、職場や医療機関、研究など様々な領域で実施されている心理検査です。
医療機関では、
- 診断の補助
- 治療効果の判定
のために使われることが多いです。
うつ状態の程度を知る参考になりますし、治療経過でCES-Dを実施することにより、客観的に症状の変化を見ていくことができます。
このように治療効果を判定するために使うこともあります。
CES-Dの料金
CES-Dは、保険が適用される心理テストの1つです。
診療報酬上は、認知機能心理検査の中でも『簡易な検査』に分類されるため、80点(800円)が加算されます。
そのため、3割負担の場合には、240円となります。
検査を受ける際に特別な時間や場所などを要さず、問題用紙を読んで患者さん自らが〇を付けるという実施のしやすさから「簡易な検査」とされています。
自由診療を行っているクリニックや心理オフィスなどでは、CES-Dはカウンセリング料金に含まれていることもありますし、別途請求されることもあります。
HPやクリニックへのお問い合わせで、事前に確認しておくとよいでしょう。
CES-Dの検査をする際の注意点
身体の調子が悪くなり、今までとは明らかに違う症状があれば、その症状のつらい箇所に合わせた診療科のある医療機関を受診されるかと思います。そして、つらい箇所の症状に合わせてレントゲンや採血など、様々な検査を行っていきます。
一方で、心の病となると、画像や血液検査などで病名を判断することは、非常に難しくなってきます。
そのため、診察や治療を進めるにあたり、現在の症状などを客観的に評価する補助的な役割として心理検査を行います。
もちろん心理検査だけですべては決まりません。
じっくりと問診を行ったり、診察を行っていくうちに診断が決まっていきますが、自分の症状を正しく認識できていなかったり、医師に状況を上手く伝えられないこともあります。
心理検査はそのような患者さんの症状を客観的に知り、投薬治療や心理療法を開始する上で参考にするための検査になります。
心理検査といっても、過度に意識せず、ありのままの状態を記入してください。また、治療経過の中で実施する際にも、ありのままの現在の状態を検査用紙に記入してください。
心理検査であるCES-Dは、学校のテストとは違います。点数が高ければよいとか、何点以上が合格というわけではありません。病気の症状に対しての正解もありません。
CES-Dは、うつの評価尺度を知るための検査ですので、高得点であればうつ状態である可能性を考えることができます。しかし、CES-Dの結果はあくまで補助にすぎず、それをもとに診断や治療を行うことはしません。
その結果を踏まえて、客観的に症状を評価したり、なかなか治らないと感じている患者さんに対して実施し、過去の結果と比較して改善している部分に気づいていただくために使ったりします。
繰り返しになりますがCES-Dを実施いただくときは、身構えずにありのままを記入してください。
CES-Dの検査・採点方法
CES-Dの検査対象は中学生以上です。
検査にかかる時間は5~10分くらいです。質問数が20問と少なめで、誰でも簡単に回答することができる点がCES-Dの利点の1つです。
問題の内容は、
- 16問のネガティブ項目(symptom-present) :うつ気分・身体症状・対人関係
- 4問のポジティブ項目(symptom-absent):ポジティブ気分
から構成されています。
これは、質問の中にうつ傾向とは関係ないポジティブな項目を混ぜることで、精度を上げています。例えば、何でも「はい」に〇をつけてしまったときに、点数の正確性がわからなくなってしまうなどの問題を回避することができます。
選択肢がAからDの4つの段階に分かれており、直近1週間の様子を振り返って、当てはまるものに〇をつけていきます。
- A. 稀に あるいは なかった(1日未満)
- B.いくらか(1~2日)
- C.たまに あるいは ある程度の時間
- D.ほとんど あるいは 全ての時間(5~7日)
このように、1週間のうちで何回ほどあったかという形で、20項目の質問にこたえていきます。点数は男女差や年齢差はなく、カットオフ16点以上がうつ状態を疑っていくラインとなります。
カットオフ16点以上としたときのCES-Dの精度は、研究者によっても報告がバラバラです。
CES-Dでわかること
CES-Dで分かることはうつ状態の度合いです。
16点以上を高得点と考えて、病状を考えていく参考にしていきます。
また、CES-Dは、大うつ病性障害のスクリーニング検査(早期発見目的の検査)としても有用とされ、ここではその精度についてお話しします。
- 感度:病気の人が16点以上となる割合
- 特異度:病気でない人が15点以下となる割合
と考えたときにCES-Dは、
- 感度63.6%、特異度93.9%
- 感度73%、特異度100%
- 感度86%、特異度90%
- 感度86%、特異度53%
感度・特異度ともにバラつきがあります。しかしながら、スクリーニング検査としては十分に有用である水準にあります。
このようにCES-Dは実施方法も簡単であるため、一般生活を送る中でのうつ状態の発見を目的とした心理検査として、職場や学校などでも広く使われています。
このようなスクリーニング目的で作られた検査ではありますが、簡便で場所や人を選ばず、短い質問に答えることができるため、医療機関でも多数使われています。
また、従来のうつ尺度とは異なる点として、身体症状や抑うつ気分の症状以外にも、対人関係上の他者評価や認知についての項目がある点があげられます。対人関係の考え方や、認知の歪みなどが客観的にみることで、治療の際に役に立てることができます。
CES-D検査は治療経過の評価にも有用
CES-Dは「うつ」を客観的に知るために大変役に立つ検査です。
うつといっても、抑うつ気分とうつ状態は異なります。
- 抑うつ気分:正常でも見られる一時的な気持ちの落ちこみ
- うつ状態:不眠や食欲低下、意欲や集中力低下などを伴う落ちこみ
うつ状態は様々な病気で陥ることがあり、しばらくの期間続くことが多いです。その原因として、最も多いのがうつ病です。
CES-Dはこれらの「うつ」の程度を客観的に評価することができます。そして、身体症状や精神症状だけでなく、うつ状態特有の対人関係の思い込みや認知の部分なども、客観的な評価ができます。
点数の高低で診断をつけるわけではなく、臨床症状から総合的に診断をしていきます。そして、治療を行っていくうちに、少しずつうつ状態がよくなっていきます。その治療効果を評価するためにも、治療前後でCES-Dを行っていくことは有用とされています。
CES-Dは簡便で正確性の高い検査なので、うつ状態の把握がとてもしやすい検査になります。当院でも治療効果を判断していく場合や、本人に改善の自覚が乏しいときにフィードバックする目的で、CES-Dを実施することがあります。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:心理検査 投稿日:2019年5月10日
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