認知症の中核症状とは?対応の仕方も紹介

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認知症の中核症状について、精神科医が詳しく解説していきます。

認知症にはいろいろな症状があって混乱してしまいがちです。この記事では認知症の中核症状を分かりやすくまとめてみました。

また中核症状を覚えるために「語呂合わせ」をご紹介しています。さらに中核症状の対応法も解説します。

認知症の方の介護をする際に、役立ててみてください

認知症の中核症状とは

認知症の症状について、精神科医が詳しく解説します。

認知症で脳の働きが低下することで直接的に起こる症状です。認知症なら誰にでも、以下のような症状が見られます。

  • 記憶障害
  • 見当識障害
  • 理解・判断力の低下
  • 実行機能障害
  • 言語障害(失語)
  • 失行・失認

記憶障害

新しいことを覚えられなくなります。覚えが悪いのではなく、まったく覚えられなくなるのが特徴です。その結果、以下のような症状がみられます。

  • つい今しがた聞いたこと、したことが思い出せない
  • 夕食を食べたことを忘れる
  • 昔から覚えていたことを忘れる

しかし子どもの頃のことは比較的覚えているのが特徴です。

見当識障害

時間・年月日が分からなくなると以下のような症状がみられます。

  • 約束の時間を守れない。
  • ゴミの日が分からない。
  • 医療機関の受診日が分からない
  • 自分の年齢が分からない

季節感がなくなると、夏に冬服を着るなどの症状がみられます。

場所が分からなくなった場合は以下のとおりです。

  • いつも通っている道に迷う
  • 自分の家のトイレの場所が分からない

自分と家族の関係が分からなくなり、息子を「お父さん」と呼ぶ事例もあります。

理解・判断力の低下

理解するのに時間がかかり、以下のような症状がみられます。

  • 一度に2つ以上のことを言われると分からない
  • 早口で言われると理解できない
  • 目に見えないことは理解できない

また情報を処理できなくなった場合の症状は以下のとおりです。

  • 自動販売機が使えない
  • 自動改札口を通れない
  • 銀行のATMが使えない
  • 車の運転ができない

外出にふさわしい服装が選べなくなり「暖かい格好をしてね」と言われると分からないのですが、「セーターを着てね」と言われると分かることがあります。

「早く出かけようね」というと分からないのですが、「何時に出かけよう」というと分かるといったケースも特徴的です。

実行機能障害

物事を順序立てて行えなくなります。
たとえば以下のような事例です。

  • 買い物に行って必要なものをそろえられない
  • すでに買ってあるものをまた買う
  • 料理を手順通りにできない
  • 掃除・洗濯ができない。

言語障害(失語)

言葉の理解・表出が難しくなります。
たとえば以下のような症状です。

  • 音として聞こえていても、言葉として理解できない
  • 質問の意味を理解しても答えられない
  • 自分の思っていることを伝えられない
  • 「あれ」「これ」といった表現が多くなる

失行・失認

失行とは運動機能は正常なのに日常的な動作ができない症状です。

  • スプーンやはしを使えない
  • 服を着られない

失認とは自分の身体の状態や目の前にあるものを認識できないことです。

  • 物や人によくぶつかる
  • 時計の文字盤が読めない
  • 空間の半分を認識できなくなり、ご飯を半側だけ残す(半側空間無視)

認知症の中核症状の覚え方

認知症の中核症状を覚えるために工夫がなされています。以下の語呂合わせが覚えやすいでしょう。

語呂合わせ

「排水口で密室は危険!」と覚えましょう。

  • 排 :判断力の低下
  • 水口:遂行機能障害
  • 密室:3失(失語・失行・失認)
  • 危 :記憶障害
  • 険 :見当識障害

参考サイト:みんなでつくる看護師国試ごろ合わせプロジェクト

認知症の中核症状の対応方法

認知症の中核症状の対応について、詳しくお伝えしていきます。

認知症の中核症状に対して、どのように対応したらよいかを解説します。

記憶障害

本人には記憶障害の自覚がなく、周りから「間違っている」と否定されると不安や恐怖を感じ始めます。

たとえば夕飯を食べた記憶がないのに、周りから「食べた」と言われる事例です。こういったケースでは、まず本人の言葉を受け止めてください。

本人の言動を否定せず、周りの人が合わせてあげることが大切です。

見当識障害

認知症の方に見当識障害があると、ちぐはぐな言動がみられ、周囲の人はイライラすることがあります。

しかし本人はわざとしているのではありません。その点を理解し、対応してあげてください。

話しかけるときは、面と向かってゆっくりと話しましょう。周りの環境の変化を少なくして、本人のストレスを減らすことも大切です。

判断力障害

判断が間違っていても怒らず、大らかな気持ちで接してください。本人を不安にさせたり、恐怖を抱かせたりしないようにしましょう。

買い物がうまくできない場合は、万引につながりかねないため、介護者が付きそうことが必要です。

実行機能障害

実行機能障害がみられる場合は介護者が付き添い、するべきことを確認したり、メモ書きしたりするとよいでしょう。

ただし全部代行するのはだめで、ひとつずつ言葉をかけながらサポートしてください。

失語・失行・失認

失行のせいでできないからといって全部手伝うと、さらに何もできなくなります。介護者は見守りながら、必要に応じて手を貸すようにしてください。

参照サイト:【認知症学会理事監修】認知症の中核症状 – 認知症介護:症状と対応

まとめ

認知症の中核症状には、記憶障害、見当識障害、理解・判断力の低下、実行機能障害、言語障害(失語)、失行・失認がみられます。

この症状につれて、ちぐはぐな言動がみられ、周囲の人はイライラすることがあるでしょう。

しかし認知症の方は自覚がなく、否定されたり、叱られたりすると傷つきます。判断が間違っていても怒らず、大らかな気持ちで接してください。

また一人でできないからといって全部手伝うと、さらに何もできなくなります。
介護者は見守りながら、必要に応じて手を貸すようにしてください。

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カテゴリー:認知症  投稿日:2023年5月17日

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