認知症の薬は飲まないほうがよい?薬物療法は早期発見が鍵!
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アルツハイマー型認知症は発症すると徐々に進行していく病気です。
アルツハイマー型認知症を根本的になおす薬はなく、治療において薬物療法は必須ではありません。
治療薬の目的はあくまで症状の進行を遅らせることです。
またレヴィー小体型認知症の治療薬はありますが、血管性認知症や前頭側頭型認知症に使える薬はありません。
副作用があるから薬は飲まないほうがよい?
今回紹介する薬は安全性が高く、副作用が出ても薬を止めれば元に戻ります。
また別の薬に変えるのもよい方法です。
MCI(軽度認知症)や軽症の認知症で薬物療法を始めると、進行を遅らせる可能性があります。
ですから主治医と相談しながら飲むとよいでしょう。
ただし人によって合うあわないがあります。
また進行した認知症には効果がありません。
アルツハイマー型認知症の治療薬一覧
現在、アルツハイマー型認知症に使われている薬は以下の4種類です。
- アリセプト/アリドネ(塩酸ドネペジル)
- レミニール(ガランタン)
- イクセロン/リバスタッチパッチ(リバスチグミン)
- メマリー(メマンチン)
アリセプト(塩酸ドネペジル)
アルツハイマー型認知症の初期から中期において進行を遅らせます。
神経伝達物質「アセチルコリン」の減少を防ぎ、脳の働きを元気にしてくれる薬です。
レヴィー小体型認知症の治療薬としても認可されています。
薬の形状は、口腔内崩壊錠(OD錠)、ゼリー剤、ドライシロップの3種類で、アリドネパッチという貼り薬も発売されています。
1日1回3mgから開始し、副作用がなければ、1∼2週間後に5mgへ増量できます。
高度の認知症の場合、5mgを4週間続けた後に10mgまで増量することが可能です。
効果
記憶障害の緩和
副作用
吐き気・嘔吐・食欲不振・下痢・興奮
脳内のドーパミンが増えて興奮したり幻覚・妄想を起こしたりすることがあります。
その場合は、減量するか中止すれば元に戻ります。
不整脈など心臓の病気がある場合は使えません。
レミニール(ガランタン)
軽度および中等度のアルツハイマー型認知症に適応されます。
神経伝達物質「アセチルコリン」の減少を防ぎ、脳の働きを元気にしてくれる薬です。
薬の形状は、錠剤、口腔内崩壊錠(OD錠)、内用液の3種類があります。
1回4mgを1日2回、1日8mgより開始し、副作用がなければ4週間後に1日16mgへ増量できます。
さらに24mgまで増量が可能です。
効果
記憶障害、見当識障害症状を緩和
副作用
吐き気・嘔吐など
心臓の病気、気管支喘息、胃潰瘍、パーキンソン病、てんかんがある方は慎重に投与してください。
イクセロン/リバスタッチパッチ(貼り薬)
軽度および中等度のアルツハイマー型認知症に適応されます。
神経伝達物質「アセチルコリン」の減少を防ぎ、脳の働きを元気にしてくれる薬です。
張り薬のため、薬を飲めない人に向いています。
薬の形状は、4.5mg、9mg、13.5mg、18mgの4種類です。
4.5mgあるいは9mgより開始し、副作用がなければ4週間ごとに1段階ずつ大きくして18mgまで増量できます。
効果
記憶障害の緩和
副作用
貼った部位のかゆみ・発疹、頭痛、胸の痛みなど
貼る場所にステロイドのローションを塗ると予防できます。
アリセプト・レミニールで吐き気・嘔吐がみられて使えない場合でも、本薬なら大丈夫なことがあります。
心臓の病気、気管支喘息、胃潰瘍、パーキンソン病、てんかんがある方は慎重に投与してください。
メマリー(メマンチン)
中等度以上のアルツハイマー型認知症に適応があります。
脳の神経細胞を興奮させる「グルタミン酸」という神経伝達物質を減少させることにより、興奮を静める薬です。
もの取られ妄想、興奮などがみられ、介護負担が大きい場合に処方されます。
1日1回5mgから開始し、副作用がなければ1週間ごとに5mgずつ増量が可能です。
4週間後に20mgを目指しますが、副作用が出ないように5~20mgで維持してください。
効果
精神を落ち着かせる効果
イライラを抑え、気持ちを穏やかにしてくれます。
副作用
過剰に摂取すると「日中も寝てばかり」という事態を起こします。
その場合は最小量に減量してから徐々に増量していくとよいでしょう。
他にめまい、便秘も見られます。
腎臓の悪い人は慎重に投与してください。
MCI(軽度認知症)で治療を始めることが大切
MCI(軽度認知症)で必要な対処を始めると、進行を遅らせる可能性があります。
MCIの定義
- 本人あるいは介護者から物忘れの訴えがある
- 客観的に記憶障害がある
- 全般的な認知機能は保たれている
- 日常生活に問題はない
65歳以上でMCIの人は全国に400万人いるといわれます。
本人は気づかないことが多いため、介護者が症状に気をつけることが大切です。
MCIを放置していると、高い確率で認知症に移行してしまいます。
MCIの段階で適切な対策を講じれば、認知症への移行を防げる場合があります。
認知症とその対策について詳しく知りたい方は以下のリンクをご参照ください。
※MCI対策につきましては厚生労働省のHPより参照
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:認知症 投稿日:2023年11月30日
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