幻覚で人が見えるのは認知症ですか?原因・治療薬・対応法を解説

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認知症では、実在しない人が見えたり、聞こえるはずのない声が聞こえたりすることがあります。

信じがたいことであり、本人や周囲の方は驚き、不安になることでしょう。どうしてこんなことになるのでしょうか?

本記事では、幻覚とは何か、認知症で幻覚はなぜ起こるのか、幻覚は治るのか、幻覚の対応はどうしたよいのかについて解説します。

幻覚が見られる認知症の方を介護する際に役立ててみてください。

幻覚とは

実際に存在しない感覚を体験してしまうことです。幻覚には以下の5種類があります。

1.幻視

実在しないものが見えることです。

  • そこに人がいる
  • カーテンの向こう側に子どもが隠れている
  • 何匹もねずみがいる

いずれの場合も本人には、はっきりと見えています

2.幻聴

聞こえるはずのない声や音が聞こえるものです。

  • 誰かが自分の悪口を言っている
  • 正体不明の声がする

本人には、はっきりと聞こえています。

3.体感幻覚

事実でないにもかかわらず、体に感じる幻覚です。

  • 体にたくさんの虫がついている
  • 病気やケガではないのに体が痛い

虫を手で払いのけようとしたり、大声を上げたりすることがあります。

4.幻味

変わった味を感じる幻覚です

  • 食べ物に変な味がする
  • 口の中に何も入れていないのに味がする

5.幻臭

変わったにおいがする幻覚です。

  • 変なにおいがする
  • 何もないのににおいがする

認知症で幻覚はなぜ起こる?

幻視は、脳の後頭葉で視覚に関係するところの障害で起こります。幻聴は、自分の気持ちや考えが、話し声や音となって現れると考えられています。体感幻覚は、内臓感覚、皮膚感覚、痛覚等の異常です。

しかし認知症で幻覚が起こるメカニズムは、はっきりとは分かっていません。

幻覚は主に、レビー小体型認知症で見られます。記憶をつかさどる側頭葉や情報を処理する後頭葉に異常をきたすためと考えられます。

また認知症になると、神経同士の情報のやり取りがうまくいかなくなり、視覚・聴覚・触覚などの五感に異常が生じて幻覚が起こります。

さらに認知症になると周囲に対する不安感が強くなり、幻覚を起こしやすくなるでしょう。

人や虫がいるような幻覚は認知症ですか?

「人がいる」というのは幻視であり、「虫がいる」というのは幻視あるいは体感幻覚と考えられます。幻覚は認知症以外の病気でも起こります。

たとえば統合失調症、双極性障害、発達障害、肝性脳症、ヘルペス脳炎などの病気です。アルコールの過剰摂取や薬の副作用で幻覚が起こることもあります。

ですから幻覚が見られるからといって、認知症というわけではありません。幻覚以外に記憶障害などの症状があれば認知症の可能性があります。

認知症による幻覚は治るのですか?

認知症は治る病気でないのと同様に、幻覚も完全に治ることはありません。

ただし生活環境の改善や薬の調整によって幻覚症状が軽くなることがあります。こういった意味で、認知症による幻覚は改善するといえるでしょう。

認知症による幻覚を抑える薬は?

「BPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン」によれば、認知症による幻覚に対して、リスペリドン、オランザピン、アリピプラゾールなどの抗精神病薬の使用が推奨されています。

またクエチアピンの使用を検討してもよいとされます。

ただし有効性の評価を行いながら、常に減薬、中止が可能かどうか検討することが必要です。

リスペリドン

セロトニン受容体・ドパミン受容体遮断薬。高血糖、糖尿病がある方でも使用可能です。副作用としてパーキンソン症状に注意が必要です。

リスペリドンの効果と副作用

オランザピン

セロトニン受容体・ドパミン受容体遮断薬。高血糖、糖尿病がある方では禁忌です。レビー小体型認知症に対して使用を考慮してもよいとされます。鎮静・催眠効果もあります。

オランザピンの効果と副作用

アリピプラゾール

ドパミン受容体部分刺激作用があります。高血糖、糖尿病がある方では慎重な投与が必要です。鎮静・催眠効果は弱いです。

最近は同じタイプでレキサルティという新しい薬も使われています。

アリピプラゾールの効果と副作用
レキサルティの効果と副作用

クエチアピン

セロトニン受容体・ドパミン受容体遮断薬。高血糖、糖尿病がある方では禁忌です。レビー小体型認知症に対して使用を考慮してもよいとされます。鎮静・催眠効果もあります。

クエチアピンの効果と副作用

参照サイト:BPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン

認知症による幻覚への対応法は?

認知症の方に幻覚が見られる場合、周囲の方の対応法を解説します。

頭から否定しない

頭から否定されると、よけいに不安感が増します。本人の訴えを受け止めてあげてください。

たとえば「人の声が聞こえるのですか?心配ですね」といった具合です。

安心感を与える

幻覚の症状、本人の性格、認知症の状態を見ながら、なるべく安心感を与える方法を検討してください。

たとえば幻視で動物が見えるならば、危険はないことを伝えるなどです。

興奮をなだめる

興奮して暴れるとケガをすることがあります。安心感を与えながら興奮をなだめることが必要です。

たとえば幻視で人が見えるならば、追い払う振りをするのがよいでしょう。

部屋を明るくする

幻視は暗い所で見えることが多いため、部屋を明るくしましょう。

錯視を誘うものを取り除く

幻視や幻聴を誘発すると思われる、壁のしみや機械音は取り除きましょう。

気分転換をはかる

散歩に連れ出すなどの気分転換に効果が見られることがあります。

参照サイト:認知症による幻覚や錯覚への対応法|相談e-65

まとめ

認知症では、幻視、幻聴などの幻覚が見られることがあります。幻覚は完全に治ることはありませんが、生活環境の改善や薬の調整によって幻覚症状が軽くすることは可能です。

たとえばリスペリドン、オランザピンなどの薬が使えます。介護者の対応法として、頭から否定しない、安心感を与えるなどに気をつけてください。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:認知症  投稿日:2023年11月3日

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