抗うつ剤の性欲低下・性機能障害と5つの対策
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抗うつ剤による性機能障害で悩んでいる方へ
抗うつ剤、とくにSSRIのパキシルやジェイゾロフトでは、性欲低下・勃起(興奮)障害・オーガズム障害などの性機能障害の副作用が7~8割にみられます。
しかし、診察でもなかなか打ち明けづらい内容のため、相談できずに悩んでいる方も多いのではないでしょうか?
ここでは、抗うつ剤で性機能障害がおこったときの対策について、考えていきたいと思います。
※抗うつ剤について概要を知りたい方は、『抗うつ剤(抗うつ薬)とは?』をお読みください。
※抗うつ剤の副作用全体について知りたい方は、『抗うつ剤によくある副作用と対策とは?』をお読みください。
まずは主治医へ打ち明けてください
「性」の悩みは、診察の中で相談していただけることがとても少ないです。
以前私の勤務していた病院では、話題にしにくい副作用を問診票にして確認していましたが、性機能障害には実に多くの方が悩まれていることに気づかされました。
抗うつ剤は、基本的には長い付き合いになるお薬です。
その間ずっと副作用に悩まされているのは辛いことですし、性は本能やパートナーとの関係性にも影響するので、おろそかにはできない問題です。
伝えづらいかとは思うのですが、悩んでいる方は主治医に打ち明けてください。
治療方針にも影響がありますし、何より納得してお薬を続けていただきたいのです。
その上で、どのような対策があるのか、お伝えしたいと思います。
対策1:様子を見る
性機能障害に対する感じ方は人それぞれです。
その副作用が大して苦にならないという方もいれば、自分自身の問題や、パートナーとの関係性で大きな支障になってしまっているという方もいるはずです。
性の問題は、本能であるがゆえに、おろそかにすることはできませんが、しばらくは許容できる範囲だという場合は、様子を見ていくのも方法です。
半年ほどで30~45%の方に改善がみられたという報告もあります。
抗うつ剤による性機能障害は、お薬を飲んでいる間だけの一時的なものです。
それによって性機能がダメージを受ける心配はありませんので、生活や精神的に大きな支障がない場合は様子を見てみましょう。
対策2:減薬する
症状が安定していて、抗うつ剤を減量しても問題ない状態でしたら、少しずつ減薬してみるのも一つの方法です。
もちろん、主治医と相談の上で行ってください。
ただし、減薬したからといって、必ず副作用が無くなるという明確な根拠はありません。
とくに性欲低下の副作用は、少し減らすくらいでは大きく変わらないことが多い印象です。
勃起障害や射精障害の方に関しては、改善することがあります。
対策3:飲み方を工夫する
できるだけ薬の影響を少なくするという意味では、「性交後に服用する」「朝食後に服用する」など、飲み方を工夫するという方法もあります。
お薬は飲んだ後、しばらくしてから血中濃度のピークがやってきて、効果も副作用も一番強くなります。
そして少しずつその影響が薄れていきます。
ですから、性交のタイミングに血中濃度が少なくなるように服用時間を調整してみます。
このときも、お薬の種類で回数や半減期などが違いますから、主治医と相談の上で行ってください。
ただ、これに関しても、勃起障害や射精障害の方には効果があることがありますが、性欲低下は改善されないことが多いです。
性機能障害は、心の反応も大きな影響があります。
「工夫をしたから大丈夫」という心持ちになれる方もいれば、「意識しすぎてしまう」という心持ちになる方もいらっしゃいます。
対策4:改善の可能性のある薬を追加する
抗うつ剤のなかでもセロトニン2A受容体をブロックするタイプの鎮静系抗うつ剤(リフレックス/レメロン、テトラミド、レスリン/デジレル)は性機能障害がでにくく、それらのお薬を追加すると、まれに性機能障害が改善することがあります。
このなかでも、まれな副作用として「持続性勃起障害」があるレスリン/デジレル(トラゾドン)が使われることが多いです。
この方法は、お薬を追加することで他にもメリットがある場合に検討します。
例えば、睡眠が不安定なときには、これらのお薬は眠りが深くなるので有用です。
総合的に見て抗うつ剤の効果を増強したほうが良い場合も、検討する価値があります。
また、お薬についての様々な研究をまとめた報告では、「抗うつ剤での男性の勃起障害にED治療薬が有効」とされています。
バイアグラやシアリス、レビトラといった薬です。本当に困っている方には、処方も検討します。
対策5:他の抗うつ剤に変更する
これまでお伝えしたやり方で対応できないときは、性機能障害が少ない抗うつ剤に切り替えていくことを検討します。
お薬を変えることで、改善がみられる方は多いのです。
まず候補にあがるのが、トリンテリックスになります。
抗うつ剤のなかでも性機能障害の副作用が少ないことがわかっていて、全体的に副作用がマイルドなお薬になります。
SSRIの中では、ルボックス/デプロメールやレクサプロは性機能障害の副作用が比較的少なく、選択肢に入ります。
>性欲低下や勃起障害がみられる方ではレクサプロ、オーガズム障害がみられる方にはルボックス/デプロメールがよいと思われます。
NaSSA(リフレックス/レメロン)も性機能障害の副作用が少ないです。
ですが、SSRIと比べると眠気や体重増加といった副作用が強く、デメリットもしっかりと考慮しなければいけません。
※抗うつ剤ごとの性機能障害の発生率の比較をくわしく知りたい方は、『副作用としての性機能障害の抗うつ剤での比較』をお読みください。
抗うつ剤だけが性機能障害の原因ではないことも
抗うつ剤を中止した後も性機能障害が続き、「薬のせいで後遺症が残ったのでは」と心配される方もいらっしゃるのですが、抗うつ剤が慢性の性機能障害を引き起こすことはありません。
そもそも、性機能はさまざまな影響を受けて変化し、抗うつ剤以外の要因でも性機能障害は認められます。
お薬の調整や休止でも改善がみられないときは、以下のような原因も考えてみましょう。
うつ病の症状の1つ
典型的なうつ病の方ですと、食欲や物事への関心などとともに性欲も低下します。
パートナーとの問題
パートナーとの関係性の中で、性機能が上手く働かなくなる場合もあります。
性の問題はパートナー間でもオープンにしづらいですから、病気や性機能障害のことでお互いが気を使い、リラックスした状態になれなくなってしまうと、性機能に支障が出てくることがあります。
心理的・体調の不調
健康な方であっても、悩みを抱えているときや落ち込んでいるとき、体調が悪いときなどには性欲が低下したり、勃起障害やオーガズム障害がみられることもあります。
睡眠リズムの乱れ
睡眠も性機能と密接に関係しているといわれています。ですから、睡眠状態が安定していることも重要です。
ホルモンの影響
ホルモンが影響することもあります。プロラクチンというホルモンが高いと、性機能障害につながります。
プロラクチンは、女性の母乳を出すホルモンです。
プロラクチンが高いということは、妊娠子育てをしている状態と同じなので、女性の方は生理が乱れて性欲が低下します。
男性でもプロラクチンは分泌されていますから、性欲低下の原因になります。
また、甲状腺ホルモンが減るとプロラクチンが増えてしまい、これも性機能障害の原因となります。
男性ホルモンのテストステロン、女性ホルモンのエストロゲンが低下していると、性機能低下がみられます。
まとめ
性機能障害は、抗うつ剤、とくにSSRIのパキシルやジェイゾロフトでは必発といってもいいくらい多い副作用です。
診察ではなかなか伝えづらいかもしれませんが、お薬を納得して飲むためにも、悩んでいる方は主治医へ打ち明けてください。
けれど、性機能障害は抗うつ剤の影響ばかりではなく、病気の症状としてや、心理面・体調・睡眠・ホルモンなど、さまざまな要因で引き起こされます。
お薬の調整後や休止後も性機能障害が改善されないときは、他の原因も考えていきましょう。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:抗うつ剤(抗うつ薬) 投稿日:2023年3月27日
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