デエビゴ(レンボレキサント)の効果と副作用
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デエビゴ(レンボレキサント)とは?
デエビゴ(一般名:レンボレキサント)は、オレキシン受容体拮抗薬に分類される新しい睡眠薬になります。
覚醒の維持に重要な物質であるオレキシンの働きをブロックすることで、睡眠状態を促すお薬になります。
オレキシンは生理的に変動している物質で、日中は増加して夜間は減少しています。
デエビゴは睡眠と覚醒に関係する生理的な物質に働くことで、睡眠を促していくお薬になります。
デエビゴは、
- 中途覚醒
- 早朝覚醒
- 熟眠障害
に使われることが多い睡眠薬になります。同じタイプのベルソムラと比較して、入眠障害に対しても効果が期待できます。
オレキシン受容体拮抗薬は、
- ベルソムラ(一般名:スボレキサント):2014年発売
- デエビゴ(一般名:レンボレキサント):2020年発売
と二種類になります。
デエビゴの睡眠薬での位置づけ
デエビゴの睡眠薬の中での位置づけをみていきましょう。
睡眠薬は、その作用メカニズムの違いから2つに分けることができます。
- 脳の機能を低下させる睡眠薬
- 自然な眠気を強くする睡眠薬
デエビゴは、自然な眠気を強くする睡眠薬になります。
主に睡眠薬として使われているお薬は、脳の機能を低下させるメカニズムになります。
覚醒に働いている神経活動を抑えることで、眠気を促していきます。「疲れきって眠ってしまうとき」に近い状態を作り出し、強引さのある効き方になります。
それに対してデエビゴは、私たちの睡眠・覚醒の周期に関係する生理的な物質の働きを調整し、睡眠状態に仕向けていくお薬です。
本来の眠気を強める形ですので、効果が人によっても異なります。
このようなタイプの睡眠薬は、現在のところ2つのお薬が発売されています。
- メラトニン受容体作動薬:ロゼレム・(メラトベル)
- オレキシン受容体拮抗薬:デエビゴ・ベルソムラ
どちらも自然な眠気を強めるため、
- 中途覚醒
- 早朝覚醒
- 熟眠障害
に使われることが多いです。
オレキシン受容体拮抗薬の方がメラトニン受容体作動薬に比べ、入眠の効果には優れて実感が得やすい印象があります。
デエビゴの特徴
<メリット>
- 自然な眠気を強くする
- 中途覚醒や早朝覚醒、熟眠障害に有効
- 入眠障害にも効果が期待できる
- 依存性が極めて少ない
- 30日までの処方制限がない
<デメリット>
- 悪夢や金縛りの副作用がある
- 眠気が残ることがある
- ジェネリックが発売されていない(薬価が高い)
それではデエビゴの特徴を、
- 効果
- 副作用
- 剤形と薬価
に分けてみていきましょう。
デエビゴの効果
デエビゴは、自然な眠気を強くするタイプの睡眠薬になります。このような睡眠薬は、
- 依存性が極めて少ない
- 強引さがなくて、効果と副作用に個人差がある
という特徴があります。
デエビゴは入眠作用も期待できますが、強引さはありません。このため、入眠障害に対してはやや効果が不十分となる可能性があります。
しかしながら臨床試験では、海外で発売されているゾルピデムER6.25mg(マイスリーの徐放性製剤でマイスリー5mg相当)との比較試験が行われています。
そちらの比較試験では、1か月後にデエビゴが有意に改善しているという報告があります。
実際にデエビゴは、入眠障害にも効果的な臨床実感があります。
また、オレキシン受容体拮抗薬として、
- 中途覚醒
- 早朝覚醒
- 熟眠障害
に対して、効果が期待できます。
デエビゴの副作用
デエビゴの副作用としては、
- 眠気が残る
- 悪夢
- 睡眠麻痺(金縛り)
の3つが代表的です。
デエビゴの効果は個人差があり、翌朝にも効果が残ってしまって眠気が続いてしまうことがあります。
睡眠の質への影響は少ないデータとなっています。
しかしながらベルソムラと同様に、夢が増える可能性は念頭に置く必要があります。
またデエビゴは、生理的な覚醒物質であるオレキシンと同一成分です。
このため依存性が極めて少ないという特徴がある一方で、睡眠麻痺(金縛り)が認められることもあります。
デエビゴの副作用頻度は、
- 傾眠(10.7%)
- 頭痛(4.1 %)
- 疲労(2.9%)
- 異常な夢(1.8%)
- 浮動性めまい(1.6%)
- 睡眠時麻痺(1.6%)
- 体重増加(1.6%)
- 悪夢(1.4%)
となっています。
デエビゴの剤形と薬価
デエビゴのお薬としての特徴についてみていきましょう。
デエビゴにはジェネリックは発売されておらず、先発品のみとなります。現在デエビゴは、
- 2.5mg錠
- 5mg錠
- 10mg錠
の3剤形となります。
薬価は、
- 2.5mg錠:53.7円
- 5mg錠:85.2円
- 10mg錠:127.5円
※2023年4月現在になります。
これに自己負担割合(1~3割)をかけた金額が、患者さんの自己負担になります。薬局では、これにお薬の管理料などが加えられて請求されています。
デエビゴは向精神薬として指定されておらず、処方日数の制限がありません。
多くの睡眠薬では、30日の処方制限がありますが、ベルソムラ同様に処方制限がないのも特徴的です。
ベルソムラ錠とデエビゴ錠の違い
同じオレキシン受容体拮抗薬であるベルソムラ錠とデエビゴ錠の違いについてみていきましょう。
デエビゴはベルソムラに比べて、
- 入眠障害にはデエビゴ、中途覚醒にはベルソムラ
- オレキシン2受容体に強く作用
- 用量調整や保管がしやすい
- 他のお薬への影響が少なめ
- 肝腎機能への影響がやや多め
という点が挙げられます。
まずは臨床的な実感として、入眠障害については明らかにデエビゴに軍配があがります。
一方でベルソムラは、中途覚醒については期待ができ、起きてしまっても再入眠しやすいという印象があります。
デエビゴは、オレキシン1受容体よりも2受容体に強く作用します。
オレキシン2受容体の方が睡眠と覚醒の調整により大きな役割を担っているといわれていますので、催眠効果として優れている可能性があります。
マイスリー5mgと比較して、デエビゴ5mgは睡眠潜時を有意に改善するという報告がありますので、入眠障害への効果が期待されます。
またベルソムラでは、夢が増えることで悪夢という副作用が知られています。その点はデエビゴでも同様です。市販後3か月調査でも、
- 眠気が残る
- 悪夢
- 睡眠麻痺(金縛り)
などの副作用報告が認められました。
ベルソムラの弱点として、吸湿性が悪いためにドーム状のアルミシートに包装する必要があり、半分に分割すると失活してしまいました。
デエビゴでは錠剤として安定性が確認されているため、一包化処方などにも対応できますので管理がしやすくなります。
また剤形も豊富で、用量調整が細かく行うことができます。
またデエビゴは、お薬を代謝する肝臓の酵素であるCYPの関与が少なく、おもにCYP3Aによって代謝されます。
このため他のお薬との飲み合わせが比較的によく、ベルソムラでは抗生物質のクラリスと併用禁忌となっていますが、併用注意となっています。
その一方で肝臓や腎臓機能の影響をうけやすく、デエビゴには代謝された物質にも活性があるため、肝腎機能障害があると代謝が遅れてしまい、薬効が強く表れてしまう可能性があります。
このためベルソムラに比べて、肝腎機能低下がある方は慎重投与となっています。(重度肝機能障害では禁忌)
デエビゴの用法と効果のみられ方
デエビゴの用法は、以下のようになっています。
- 開始用量:5mg ※相互作用があるお薬では2.5mg
- 用法:1日1回就寝前
- 最高用量:10mg
- 剤形:錠(2.5mg・5mg・10mg)
デエビゴはベルソムラと異なり、年齢によって用量が決まっていません。
5mgからはじめ、症状によって適宜増減することで使っていくお薬になります。
後述するような併用すると効果が強まってしまうお薬を使っている場合は、2.5mgまでとなっています。
また肝臓の影響を受けやすく、重度肝機能障害の方は禁忌、中等度肝機能障害の方は5mgまでとなっています。
デエビゴの効果は、即効性が期待できます。服用から30分ほどして自然な眠気が強まっていきます。
明け方になると生理的なオレキシンが上昇して、デエビゴの効果が薄れて目が覚めます。
デエビゴの効果が強すぎて翌日に残ってしまう場合は、
- デエビゴを減量
することで対処していきます。
デエビゴの服用時間を早めることで問題が生じることは少ないですが、作用時間が早いために、いつでも就寝できる状態になってから早めの服用が進められています。
【参考】デエビゴの半減期
お薬の効き方を見ていくにあたっては、
- 半減期:血中濃度が半分になるまでの時間
- 最高血中濃度到達時間:血中濃度がピークになるまでの時間
が重要になってきます。
デエビゴは、
- 半減期(T1/2):31.55時間
- 最高血中濃度到達時間(Tmax):1.55時間
となっています。
このようにみると非常に長いお薬のようですが、血中濃度は二相性の変化をとっているので、薬効としては長くはありません。
こちらをみると、投与後4時間もすると半分程度の血中濃度になっていることが見てとれます。
デエビゴの作用時間は、生理的なオレキシンとデエビゴの奪い合いによって変化するため、個人差があります。
明け方になると生理的なオレキシンが上昇して、オレキシン受容体をデエビゴから奪っていきます。
そして次第に覚醒が優位になって、目が覚めるといわれています。
【参考】デエビゴの併用注意薬
デエビゴは、CYP3Aという肝臓の酵素で代謝されて分解されていきます。
このためCYP3Aの働きに関係するお薬には、併用に注意が必要です。
【併用注意:CYP3Aを阻害するお薬】
- 抗真菌薬:イトラコナゾール
- 抗菌薬:クラリスロマイシン・エリスロマイシン・フルコナゾール
- 抗不整脈薬:ベラパミル
【併用注意:CYP3A4を誘導するお薬】
- 抗てんかん薬:フェニトイン
- 抗結核薬:リファンピシン
これら以外には、アルコールは中枢神経作用があるために、相互に作用を強めてしまうために併用注意となっています。
デエビゴの副作用の対処法
デエビゴの副作用としては、
- 眠気
がよく認められます。
そして他の睡眠薬からデエビゴに切り替える場合は、不眠がひどくなってしまうことに注意が必要です。
睡眠薬を急に入れ替えてしまうと、前の睡眠薬の離脱症状が起こることがあります。
それによって、反跳性不眠(不眠がひどくなってしまうこと)となってしまうことがあるのです。
それではデエビゴの副作用が認められた場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
また、お薬による体重増加を気にされる方も少なくありません。そして特殊な副作用として、悪夢や金縛り(睡眠麻痺)が知られています。
これらの副作用について、それぞれご説明していきます。
デエビゴと眠気
デエビゴは自然な眠気を促すお薬ですので、人によって効き方に個人差があります。
人によっては効きすぎてしまって、翌朝に眠気や倦怠感が残ってしまいます。
デエビゴの眠気は、多くの方が午前中の早い時間帯に回復しますが、一部の方で遅くまで残ってしまいます。
デエビゴの承認時には、10.7%の報告があります。
デエビゴで眠気が認められた場合の対処法としては、
- お薬の量を減らす
- 服用時間を慎重に早める
- 他の睡眠薬に変える
などがあります。
デエビゴと悪夢・金縛り
デエビゴでは、いわゆる夢を見ている睡眠であるレム睡眠の割合が多くなるという報告はありません。
とくに睡眠相への影響についての報告は見つかりませんでした。
レム睡眠の割合が変わらないという報告が多く、全体的な睡眠が増加することで朝方に多いレム睡眠の影響が大きくなると考えられます。
副作用報告としては、
- 異常な夢(1.8%)
- 睡眠時麻痺(1.6%)
- 悪夢(1.4%)
とされています。夢は誰もが見るものですので、不眠で悩まれている方は悪夢を見やすいということが影響しているかもしれません。
また金縛り(睡眠麻痺)もレム睡眠中の異常と考えられていますが、体が動かないのに覚醒している状態です。
デエビゴでは、おもに入眠時に認めらることがあります。
デエビゴと体重増加(太る?痩せる?)
オレキシンは睡眠だけでなく、私たちのからだの様々な働きに関係していることが分かってきています。
オレキシンは覚醒を維持するのに重要な物質で、摂食や代謝にも関係しています。
血糖値が下がって空腹を感じると、オレキシンが活発になります。
そして食事をとることを促します。その一方でオレキシンは、代謝をよくしてエネルギーを消費します。
このように摂食行動や糖・エネルギー代謝にオレキシンは影響していると考えられています。
オレキシンの働きをブロックするベルソムラでは、何らかの影響があるのではと懸念されてはいました。
承認時の副作用報告では、
- 体重増加:1.6%
- 食欲亢進:0.7%
- 体重減少:0.1%
となっています。そこまで影響はないと思われますが、わずかに食欲を増加させるのかもしれません。
睡眠によい生活習慣を心がけることが大切
デエビゴを使っていくにあたっては、睡眠習慣を見直すことも重要です。睡眠習慣と合わせて取り組むことで、睡眠薬に依存することなく不眠の改善を行っていきましょう。
ここでは特に、睡眠薬の使い方に関係する部分についてお伝えします。不眠で寝付けないとき、多くの方が間違った対処法を行っています。
- お酒に頼る
- なるべく早く寝る
この2つは不眠を悪化させてしまいます。お酒は寝つきを一時的に良くしてくれますが、睡眠の質を落としてしまいます。
また、なるべく早く寝てベッドで粘っている方もいらっしゃいます。
ベッドでゴロゴロして眠れない時間をすごすことは、「なかなか眠れない」という失敗した認知を強めてしまいます。
むしろ睡眠時間は、ギリギリまで絞ってしまったほうがよいです。
そして眠れないときは、粘らずに睡眠薬を使ってしまったほうが不眠はよくなります。
睡眠時間を5~6時間にしぼってデッドラインを設定し、その時間までは自然な眠気が生じたらベッドに入るようにしていきます。
その際にお薬を使っていただき、それでも眠れなければ頓服をすぐに使ってください。
このようにして、ベッドに入れば眠れるという認知を作っていくことが大切です。
その他にも、睡眠に良い生活習慣があります。
睡眠に関する正しい知識を理解して、生活で取り入れられることは意識していくことが大切です。
詳しく知りたい方は、不眠症(睡眠障害)のページをお読みください。
デエビゴの運転への影響
睡眠薬は、原則的にすべてのお薬が運転や危険作業が禁止となっています。
これは眠気やふらつきなどの副作用が生じる可能性があるためです。
そういったリスクがある以上は、製薬会社も「運転禁止」とせざるを得ませんでした。
デエビゴの添付文章でも同様に、
本剤の影響が服用の翌朝以後に及び、眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること。
という表現となっています。
実のところ、デエビゴの自動車運転能力への影響については、8日間の投与をおこなった成人と高齢者を比較して統計的に影響は明らかには認められませんでした。
しかしながら翌日の眠気などの影響が出る可能性があるため、結局のところ禁止の方向となってしまいました。
しかしながら、不眠のままで運転する方が悪影響があるかもしれませんし、薬を服用したら運転禁止とするべきかは悩ましいところです。
運転できないことが、社会復帰の妨げになってしまうこともあります。
自己責任にはなりますが、お薬を服用しながら運転されている方もいるのが実情です。
ただし、
- はじめて使ったとき
- 他のお薬からの切り替えをしたとき
- 量を増減させているとき
- 体調不良を自覚したとき
は無理をせず、運転は控えていただいたほうがよいです。
デエビゴの妊娠・授乳への影響
デエビゴの妊娠への影響から見ていきましょう。ベルソムラのお薬の添付文章には、
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合
にのみ投与すること
このように記載されています。
もちろん妊娠中は、お薬を避けるに越したことはありません。
しかしながらデエビゴを中止したら不眠が強まってしまう場合は、続けていくことも少なくありません。
動物実験では、臨床用量の400倍近くのデエビゴを投与したときに、催奇形性が認められたという報告があります。
認められなかったという報告もあるのですが、念のために有益性投与となっています。
次に、デエビゴの授乳への影響をみていきましょう。デエビゴのお薬の添付文章には、
授乳中の婦人には投与することを避け、やむを得ず投与する場合には授乳を中止させること。
このように記載されています。
動物実験で母乳への移行が確認されているため、このような記載になっています。
ですが母乳で育てることは、赤ちゃんにも非常に良い影響があるといわれています。
アメリカの添付文章では、お母さんの状態と薬の悪影響のバランスを見て検討するという記載となっています。
生後まもなくは頻繁に授乳することになるので、睡眠薬は使わない方が多いです。
落ち着いてきたら、ご自身の判断で服薬を再開される方もいらっしゃいます。
デエビゴは物音などがあれば目が覚めやすいお薬ではあるため、授乳中には使いやすい睡眠薬といえるかもしれません。
悩ましいところではありますが、デエビゴの影響を少しでも減らすためには、服用してからの授乳間隔を少しでもあけていただく方が良いです。
具体的には、服用の直前に母乳を与えてください。
そしてアメリカの添付文章にもありますが、赤ちゃんの過鎮静(元気がない・体重が増えない)ということに注意してください。
デエビゴ錠のジェネリック医薬品
デエビゴは、2020年に発売されたお薬になります。
お薬の開発には莫大なお金が必要となるため、発売から10年ほどは成分特許が製薬会社に認められて、独占的に販売できるようになります。(先発品)
デエビゴのジェネリックは、この特許が切れた後に発売されます。(後発品)
このためジェネリック医薬品が発売されるには、しばらく期間が必要になります。
ジェネリック医薬品の名称は、近年は薬の一般名がつけられます。デエビゴ錠であれば、レンボレキサント錠になるかと思います。
ジェネリック医薬品になると、様々な製薬会社が製造を行います。これらのお薬は有効成分は同じですが、それぞれが微妙に異なります。
というのも、お薬の製造方法や製剤工夫が会社によって異なるためです。
ですがジェネリック医薬品は、先発品と同じように効果を示すための試験をクリアしていて、血中濃度の変化がほぼ同等になるように作られています。
デエビゴは自然な眠気を促すお薬になります。このためジェネリック医薬品に変更しても、効果に大きな差はないと推定されます。
とはいえ、心配になってしまう方もいらっしゃいます。その場合はもちろん、先発品のまま使っていくことも可能です。
【参考】オレキシンとは?
デエビゴの作用メカニズムには、「オレキシン」という覚醒に関係する物質が大きく関係しています。
オレキシンは視床下部の神経で作られていて、脳の覚醒に関係するモノアミン系の神経伝達物質の働きを強め、神経細胞を活性化する働きがあります。
つまりオレキシンは、覚醒を維持するための物質といえます。
オレキシンには生理的な変化があり、日中に増加していき、夜間になると減少しています。
このようにオレキシンは、睡眠状態と覚醒状態を切り替えるスイッチのような役割を果たしています。
またオレキシンは、空腹や感情の乱れによって活発になるため、こういったときに目が覚めてしまうのはオレキシンが関係しています。
突然の過眠症状が認められるナルコレプシーという病気は、このオレキシンを作る神経が変性してしまって、オレキシンの働きが上手くいかないことが原因と考えれています。
オレキシンは睡眠と覚醒だけでなく、糖代謝やエネルギー代謝にも関係していることがわかっています。
また、ストレスによってオレキシンは活性化される一方で、うつ状態では低下することが分かっています。
オレキシンをターゲットにしたうつ病のお薬の開発なども進められています。
【参考】デエビゴの作用機序
デエビゴは、オレキシン受容体拮抗薬になります。オレキシンが作用する受容体に働き、ブロックしてしまうお薬になります。
これによって覚醒状態から睡眠状態にスイッチを切り替えて、睡眠状態を促していくお薬になります。
睡眠と覚醒に関係する生理的な物質を調整することで、睡眠作用を期待していくお薬になります。
オレキシン受容体には、
- オレキシン1受容体(OX1R)
- オレキシン2受容体(OX2R)
の2種類があります。どちらも覚醒に関係していますが、オレキシン2受容体が大きな影響があることが分かっています。※オレキシン1受容体は情動に関係が深い
デエビゴとベルソムラの違いとして、
- デエビゴ:OX1R<<OX2R
- ベルソムラ:OX1R≦OX2R(ほぼ同程度)
となっています。デエビゴは、オレキシン2受容体への作用が強いお薬になります。
このため理論的にはより効果が期待できそうではありますが、直接比較した研究はなく、臨床的に使われていくうちにわかってくるかと思います。
デエビゴおよびベルソムラは、2種類の受容体に働くことで総合的に睡眠作用をもたらしていると考えられていて、DORA(Dual Orexin Receptor Antagonist:両方のオレキシン受容体拮抗薬)と呼ばれています。
これによってデエビゴは覚醒物質を抑え、睡眠状態にスイッチさせることで睡眠作用をもたらします。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:デエビゴ 投稿日:2023年3月23日
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