ニトラゼパム(ベンザリン/ネルボン)の効果と副作用
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ニトラゼパム(ベンザリン/ネルボン)とは?
ベンザリン(商品名:ベンザリン/ネルボン)は、ベンゾジアゼピン系に分類される睡眠薬になります。
ニトラゼパムは作用時間が比較的長いお薬になり、寝付きやすい土台を作るようなお薬になります。
このような睡眠薬は、「なかなか寝つけない」という入眠障害だけでなく、中途覚醒や早朝覚醒に効果が期待できます。
このようにニトラゼパムは、
- 入眠障害
- 中途覚醒
- 早朝覚醒
など、さまざまな睡眠障害で効果が期待できます。
ニトラゼパムは、先発品としてベンザリン錠やネルボン錠の2つが発売されました。
発売から年月もたっており、ジェネリック医薬品として一般名(成分名)のニトラゼパム錠が発売となっています。
※以下では「ベンザリン」として、ニトラゼパムの効果や副作用をお伝えしていきます。
ベンザリンの睡眠薬での位置づけ
ベンザリンの睡眠薬の中での位置づけをみていきましょう。
睡眠薬は、その作用メカニズムの違いから2つに分けることができます。
- 脳の機能を低下させる睡眠薬
- 自然な眠気を強くする睡眠薬
ベンザリンは、脳の機能を低下させる睡眠薬になります。
覚醒に働いている神経活動を抑えることで、眠気を促していきます。「疲れきって眠ってしまうとき」に近い状態を作り出していきます。
一方で、自然な眠気を強くする睡眠薬も発売されています。
私たちの睡眠・覚醒の周期に関係する生理的な物質の働きを調整し、睡眠状態に仕向けていくお薬です。本来の眠気を強める形ですので、効果が人によっても異なります。
ベンザリンなどの脳の機能を低下させるタイプのお薬は、ある程度の効果や副作用が計算できるというメリットがあります。このため、
- 作用時間
- 強さ
から睡眠薬を選んでいきます。
ベンザリンは作用時間は中間型になり、即効性も期待できますが、服用を続けていくうちに薬が体に蓄積していき、寝付きやすい土台を作るようなお薬になります。
効果の強さは標準的にはなりますが、中途覚醒や早朝覚醒が認められている方には効果が期待しやすいです。
また、抗不安効果も日中に持続するため、不安や緊張が強くて眠れない方には使いやすい睡眠薬になります。
ベンザリンの特徴
<メリット>
- 入眠障害に効果が期待できる
- 中途覚醒や早朝覚醒に有効
- 抗てんかん効果が期待できる
- 離脱症状が少ない
- ジェネリックが発売されている
- 90日まで処方が可能
<デメリット>
- 眠気(翌朝への持ち越し)の副作用に注意が必要
- ふらつきの副作用に注意が必要
- 筋弛緩作用から睡眠時無呼吸が悪化することがある
- 高齢者でせん妄を生じることがある
それではベンザリンの特徴を、
- 効果
- 副作用
- 剤形と薬価
に分けてみていきましょう。
ベンザリンの効果
ベンザリンは、脳の機能を低下させることで睡眠を促す睡眠薬になります。
ベンザリのお薬としての特徴は、
- ベンゾジアゼピン系であること
- 作用時間が長いこと
- 抗てんかん薬として認められていること
があげられます。
ベンザリンは、ベンゾジアゼピン系睡眠薬に分類されます。このため催眠作用だけでなく、抗不安作用や筋弛緩作用も認められます。
比較的に作用時間も長いため、寝付きやすい土台を作るようなお薬になります。このため、不安や緊張を和らげる効果も日中に期待することができます。
またベンザリンは、抗てんかん薬としての適応も認められています。
近年は様々な抗てんかん薬が開発されているので、てんかん治療目的ではあまり使われていません。
てんかん治療でも使うことができるため、通常の睡眠薬は30日処方に制限されることが多いですが、ベンザリンは90日まで処方することができます。
ベンザリンの副作用
ベンザリンの副作用としては、「眠気の持ち越し」と「ふらつき」に注意する必要があります。
ベンザリンは中間型の睡眠薬ですので、翌朝にもお薬の作用が残りやすいです。
このため、睡眠作用が翌朝に続いてしまって眠気が残ってしまったり、日中に眠気が出てしまうことがあります。
そしてベンザリンには筋弛緩作用があります。このため、ふらつきや転倒にも注意が必要です。
これによって睡眠時無呼吸症候群が悪化してしまうこともあるため、お薬を使い始めてからイビキがひどくなった方は注意が必要です。
また高齢者では、せん妄を生じやすくしてしまうことがわかっています。せん妄とは、一時的に意識が混濁して興奮してしまい、異常行動などをとってしまう状態です。
昼夜リズムが乱れたり、睡眠障害もせん妄の原因となりますが、ベンゾジアゼピン系睡眠薬はせん妄を悪化・誘発することがわかっています。
ベンザリンは、離脱症状が少ないお薬になります。とはいえ長期に服用していると常用量依存といって、量が増えていくことは少ないですが、減らそうとすると不眠になってやめられず、漫然と服用が続いてしまうこともあります。
ベンザリンの副作用頻度は、
- ふらふら感(5.10%)
- 倦怠感(3.64%)
- 眠気(4.19%)
- 頭痛(1.58%)
- 口渇(1.06%)
- 悪心嘔吐(0.79%)
となっています。(製造販売後調査の安全性評価対象症例3,294例)
ベンザリンの剤形と薬価
ベンザリンのお薬としての特徴についてみていきましょう。
先発品としては、ベンザリン錠とネルボン錠が発売されています。薬価とあわせて剤形をご紹介します。
- 2mg錠:ベンザリン錠:5.9円
- 5mg錠:ベンザリン錠:8.8円 ネルボン錠:8.3円
- 10mg錠:ベンザリン錠:13.8円 ネルボン錠:13.8円
- 1%細粒:ベンザリン錠:14.7円/g ネルボン錠:12.7円/g
※2023年4月現在の薬価になります。
2mg錠ではネルボン錠は発売されておらず、ベンザリン錠のみとなります。
ベンザリンでは、後発品であるジェネリック医薬品であるニトラゼパム錠も発売されています。
それぞれの薬価をみていきましょう。2mg錠は、ジェネリック医薬品でも発売されていません。比較のためにベンザリン錠の薬価も記載します。
- 2mg錠:5.8円
- 5mg錠:9.9円(ジェネリック:5.4円)
- 10mg錠:15.4円(ジェネリック:5.6円)
- 1%細粒:16.7円/g(ジェネリック:6.2円/g)※2018年4月現在の薬価になります。ジェネリックは薬価が会社によって幅がありますが、平均的な薬価になります。
これに自己負担割合(1~3割)をかけた金額が、患者さんの自己負担になります。薬局では、これにお薬の管理料などが加えられて請求されています。
ベンザリンの用法と作用時間
ベンザリンの用法は、以下のようになっています。
- 開始用量:2mg~5mg
- 用法:1日1回就寝前
- 最高用量:10mg(~15mg)
ベンザリンは2mg~5mgから開始していくことが一般的です。
10mgまでは問題なく増量でき、「年齢・症状により適宜増減する」と記載されていますが、てんかんでは最高用量は15mgとなっています。ですから15mgまでの中で使っていくことが多いです。
ベンザリンは、基本的には空腹時で効果を発揮するように作られているお薬になります。ですから、就寝前に服用してください。
ベンザリンの作用時間は個人差がありますが、効果がでてくるのは比較的早く、催眠作用は6~8時間程度になります。
その後は抗不安効果や筋弛緩作用が一日を通して持続していきます。
【参考】ベンザリンの半減期
お薬の効き方を見ていくにあたっては、
- 半減期:血中濃度が半分になるまでの時間
- 最高血中濃度到達時間:血中濃度がピークになるまでの時間
が重要になってきます。
ベンザリンは、
- 半減期(T1/2):27時間
- 最高血中濃度到達時間(Tmax):1.6時間
となっています。
ベンザリンの血中濃度の変化は2段階に分けられます。お薬の説明書(インタビューフォーム)には、以下のデータが示されています。
血中濃度の立ち上がりは早く、服用直後に一気に血中濃度が上昇します。そしてピークに達したのちに、はじめの8時間ほどで血中濃度は半分になります。
その後はゆっくりと体からお薬が抜けていき、トータルで見たら半減期は27時間ほどとなります。
ですから催眠効果は比較的早く、その作用時間は6~8時間ほどになります。
次の日に服用する際には半分ほどのお薬が体内に残っているため、服用を続けると少しずつ体内にお薬が蓄積します。
4~5日ほど連続で服用すると安定(定常状態)していき、寝付きやすい土台となります。
【参考】ベンザリンとアルコール(お酒)
ベンザリンの添付文章では、
中枢神経抑制作用が増強されることがあるので併用しないことが望ましい。やむを得ず併用する場合には慎重に投与すること。
となっています。禁忌というわけではありませんが、併用注意とされています。
アルコールとベンザリンは、どちらも中枢神経を抑制する作用があります。併用することにより、脳の機能を落としすぎてしまいます。
このためベンザリンとアルコールを併用すると、
- 薬やお酒が効きやすくなる
- 効果が不安定になる
といったことに気をつける必要があります。
ベンザリンもアルコールも、どちらも肝臓で分解されます。
このためお薬の効果が翌朝までのこってしまったり、意識が中途半端になることでの健忘やせん妄が起こりやすくなることがあります。
また、アルコールに酔いやすくなることにも注意が必要です。
そして飲酒習慣があると、肝臓の機能が変化していきます。このためお薬の血中濃度が不安定になり、効果も不安定になります。
そしてベンザリンとアルコールを併用することでの最大の問題は、
- 双方に依存しやすくなってしまう
という点になります。
睡眠薬のベンザリンとアルコールは、近しい作用があります。このため、どちらも身体に慣れてしまい、効果が悪くなってしまいます。
このことを耐性といい、同じ量では効かなくなってしまいます。
体からお薬やアルコールが抜けると心身の不調が認められて、精神的にも依存してしまいます。このように、心身に依存が形成されてしまいます。
ですから、ベンザリンを服用しながらの習慣的な飲酒はできるだけ避けるべきです。
飲み会などの機会飲酒であれば、時間を空ければベンザリンを使うことはできます。
ベンザリンと他剤の作用時間と強さの比較
ベンザリンは、脳の機能を低下させることで催眠作用をもたらします。
このようなタイプのお薬の効果は、作用時間によって考えることができます。
作用時間によって、大きく4つのタイプに分けられています。
- 超短時間型:効果のピークは1時間未満、作用時間は2~4時間
- 短時間型:効果のピークは1~3時間、作用時間は6~10時間
- 中間型:効果のピークは1~3時間、作用時間は20~24時間
- 長時間型:効果のピークは3~5時間、作用時間は24時間~
ベンザリンは、中間型に分類されます。睡眠時間の全体をカバーするように催眠作用が期待でき、また一日を通して抗不安作用が持続して、寝付きやすい土台を作ってくれるような睡眠薬になります。
もう少し詳しくみていくと、以下の表のようになります。
作用時間の違いごとに睡眠薬としての強さの違いを、最高用量で比較してみましょう。
- 超短時間型:効果のピークは1時間未満、作用時間は2~4時間
(ハルシオン>アモバン>マイスリー≧ルネスタ) - 短時間型:効果のピークは1~3時間、作用時間は6~10時間
(レンドルミン≧デパス≒エバミール/ロラメット>リスミー) - 中間型:効果のピークは1~3時間、作用時間は20~24時間
(サイレース/ロヒプノール>ベンザリン/ネルボン>ユーロジン) - 長時間型:効果のピークは3~5時間、作用時間は24時間~
(ドラール>ベノジール/ダルメート≒ソメリン)
ベンザリンの副作用と対処法
睡眠薬では、作用時間によって注意すべき副作用が異なります。
- 作用時間が長い睡眠薬・・・眠気・ふらつき
- 作用時間が短い睡眠薬・・・健忘・依存性
作用時間が長いということは、薬が身体に少しずつたまっていくことにつながります。
睡眠薬の眠気が翌朝に残ってしまったり、筋弛緩作用が日中に働いてしまうことがあります。
それに対して作用時間が短い睡眠薬は、薬が急激に作用するということになります。
このため中途半端な覚醒状態となってしまって健忘(物忘れ)が認められたり、お薬の急激な変化に体が慣れようとしてしまうことで、依存が成立してしまうことがあります。
ベンザリンは作用時間が比較的に長いお薬なので、眠気やふらつきに注意が必要です。
作用時間の長さゆえに離脱症状は少なく、依存性は高くはありません。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
ベンザリンと眠気
睡眠薬は、効果が翌朝に残ってしまうことがあります。作用時間が長いお薬ほど、眠気や倦怠感が残りやすくなってしまいます。
ベンザリンは中間型に分類される睡眠薬で、作用時間は比較的に長いです。
このため、翌朝に眠気が残ってしまうこともあります。睡眠がしっかりとれていても眠気が残るようであれば、ベンザリンによる眠気の翌朝への持ち越しの可能性が高いです。
その場合の対処法としては、
- お薬の量を減らす
- 他の睡眠薬に変える
があります。
ベンザリンと健忘
睡眠薬を服用した後に、記憶がなくなってしまうという副作用が生じることがあります。
このような「物忘れ」を、「前向性健忘」といいます。睡眠薬を服用して、それ以降(前向き)の記憶を忘れてしまうのです。
このような状態になるのは、睡眠薬が中途半端な覚醒状態にしてしまうことで、海馬を中心とした記憶に関する脳の機能が低下してしまうためと考えられています。
ですから前向性健忘は、睡眠薬が急激に作用する時に起こりやすい副作用になります。
ベンザリンは作用はそこまで強くはなく、作用時間も比較的に長い睡眠薬になります。ですから、健忘を起こしやすいお薬とはいえません。
健忘の対策としては、
- 寝る直前に睡眠薬を服用すること
- 絶対にアルコールと一緒に睡眠薬を飲まない
になります。
それでも認められる場合は、
- 薬の量を減らす
- 他の睡眠薬に変更する
このようにしていきます。
ベンザリンと依存性
睡眠薬は、長期間服用していると体に慣れてしまいます。そして睡眠薬をやめてしまうと不眠が悪化して、やめられなくなってしまうことがあります。
ベンザリンは作用時間が比較的に長く、離脱症状は起こしにくいお薬になります。
このため依存性は高くはありませんが、漫然と服用しているとやめられなくなってしまう常用量依存となってしまうこともあります。
ですから、漫然とした長期的に使用は避けなければいけません。
依存性の対策としては、
- 睡眠に良い生活習慣を意識する
- できるだけ少量・短期間で使う
- アルコールと一緒に服用しない
ことがあります。
ベンザリンの反跳性不眠(離脱症状)と減薬方法
睡眠薬は長期間にわたって使っていると、お薬があることに身体に慣れてしまうことがあります。
その結果、お薬としての効果は薄れているのに、薬を減らすと不眠が強まってしまうことがあります。
このような状態を反跳性不眠といいます。睡眠薬の離脱症状とも言えます。
「睡眠薬がないと眠れない」と勘違いしてしまうことが多いのですが、薬がやめられないのは反跳性不眠が原因であることも少なくありません。
このような状態になると、睡眠薬の量は増えないけれどもやめられなくなってしまいます。このことを、常用量依存といったりします。
ベンザリンは中間型の睡眠薬になりますので、こういった離脱症状は起こりにくいです。
ですから反跳性不眠によってお薬が中止できなくなるというよりは、精神的な依存によってお薬をやめられなくなってしまうことが多いです。
反跳性不眠の様子をグラフにしてみると、以下のようになります。
このためベンザリンを中止していく際は、急激には行いません。
- 少しずつ減量していく
が基本となります。2~5mgずつ減量していくことが多いです。
ベンザリンの減薬では、眠れるという自信を失わないことが大切ですので、ベンザリンを減量して寝付けない場合はベッドで粘ってはいけません。
すぐにあきらめて、元の量になるようにお薬を追加で服用して就寝してください。眠れるタイミングをみて、少しずつ減量していきます。
睡眠によい生活習慣を心がけることが大切
ベンザリンを使っていくにあたっては、睡眠習慣を見直すことも重要です。睡眠習慣と合わせて取り組むことで、睡眠薬だけに依存することなく不眠の改善を行っていきましょう。
ここでは特に、睡眠薬の使い方に関係する部分についてお伝えします。不眠で寝付けないとき、多くの方が間違った対処法を行っています。
- お酒に頼る
- なるべく早く寝る
この2つは不眠を悪化させてしまいます。お酒は寝つきを一時的に良くしてくれますが、睡眠の質を落としてしまいます。
また、なるべく早く寝てベッドで粘っている方もいらっしゃいます。
ベッドでゴロゴロして眠れない時間をすごすことは、「なかなか眠れない」という失敗した認知を強めてしまいます。
むしろ睡眠時間は、ギリギリまで絞ってしまったほうがよいです。そして眠れないときは、粘らずに睡眠薬を使ってしまったほうが不眠はよくなります。
睡眠時間を5~6時間にしぼってデッドラインを設定し、その時間までは自然な眠気が生じたらベッドに入るようにしていきます。
その際にお薬を使っていただき、それでも眠れなければ頓服をすぐに使ってください。
このようにして、ベッドに入れば眠れるという認知を作っていくことが大切です。
その他にも、睡眠に良い生活習慣があります。睡眠に関する正しい知識を理解して、生活で取り入れられることは意識していくことが大切です。詳しく知りたい方は、不眠症(睡眠障害)のページをお読みください。
ベンザリンの運転への影響
睡眠薬は、原則的にすべてのお薬が運転や危険作業が禁止となっています。
これは眠気やふらつきなどの副作用が生じる可能性があるためです。
そういったリスクがある以上は、製薬会社も「運転禁止」とせざるを得ませんでした。
ベンザリンの添付文章でも同様に、
本剤の影響が翌朝以後に及び、眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、自動車の運転等の危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。
という表現となっています。
しかしながら、不眠のままで運転する方が悪影響があるかもしれませんし、薬を服用したら運転禁止とするべきかは悩ましいところです。
運転できないことが、社会生活の妨げになってしまうこともあります。
自己責任にはなりますが、お薬を服用しながら運転されている方もいるのが実情です。ただし、
- はじめて使ったとき
- 他のお薬からの切り替えをしたとき
- 量を増減させているとき
- 体調不良を自覚したとき
は無理をせず、運転は控えていただいたほうがよいです。
ベンザリンによって眠気が翌朝に残るようであれば運転は行わず、主治医と相談して作用時間の短い睡眠薬への変更を検討してください。
ベンザリンの妊娠・授乳への影響
ベンザリンの妊娠への影響を見ていきましょう。ベンザリンのお薬の添付文章には、
妊婦(3ヵ月以内)又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
このように記載されています。
妊娠への影響を考えていくにあたっては、
- 奇形をおこしやすいか(催奇形性)
- 薬の成分が胎児に届くことによる影響
を考えていく必要があります。
ベンザリンなどの睡眠薬はこれまで、口唇口蓋裂のリスクが高くなるといわれていました。
しかしながら因果関係がないとする報告もなされており、奇形を引き起こすリスクは低いと考えられています。
ベンザリンは出産後に気を付ける必要があり、出生直後に赤ちゃんに離脱症状が生じてしまうことがあります。
また、赤ちゃんに鎮静作用が強くでてしまい、生まれた後に元気がないこともあります。産科の先生にお伝えしておけば、過度に心配しなくても大丈夫です。
次に、ベンザリンの授乳への影響をみていきましょう。ベンザリンのお薬の添付文章には、
授乳婦に投与する場合には授乳を避けさせること。
このように記載されています。
母乳を通して赤ちゃんにベンザリンの成分(ニトラゼパム)が伝わってしまうことが確認されていて、血液中の濃度の1/2~1/3ほどの濃度で母乳にも移行してしまいます。
ですから、赤ちゃんがベンザリンをわずかに服用しているのと同じになります。これによって眠気が強まり、哺乳が不十分になることがあります。
しかしながら母乳で育てることは、赤ちゃんにも非常に良い影響があるといわれています。
生後まもなくは頻繁に授乳することになるので、睡眠薬は使わない方が多いです。落ち着いてきたら、ご自身の判断で服薬を再開される方もいらっしゃいます。
ベンザリンは作用時間が長い睡眠薬ですので、少しでも赤ちゃんへの影響を減らしたいのであれば、作用時間の短い睡眠薬にされたほうが良いかもしれません。
海外の妊娠と授乳に関する基準
海外の妊娠と授乳に関する基準をご紹介します。
妊娠への影響:FDA(アメリカ食品医薬品局)薬剤胎児危険度基準
- A:ヒト対象試験で、危険性がみいだされない
- B:ヒトでの危険性の証拠はない
- C:危険性を否定することができない
- D:危険性を示す確かな証拠がある
- ×:妊娠中は禁忌
授乳への影響:Hale授乳危険度分類
- L1:最も安全
- L2:比較的安全
- L3:おそらく安全・新薬・情報不足
- L4:おそらく危険
- L5:危険
ベンザリンは、FDA基準で「D」、Hale分類で「L2」となっています。
ベンザリン錠のジェネリック医薬品(ニトラゼパム錠)
ベンザリンは、1967年に発売されたお薬になります。お薬の名称の由来も、ベンゾジアゼピンを短くしたことからつけられ、古くから使われているお薬になります。
2社から、ベンザリン錠とネルボン錠として別々の名称で発売となりました。
お薬の開発には莫大なお金が必要となるため、発売から10年ほどは成分特許が製薬会社に認められて、独占的に販売することができます。これが先発品になります。
そしてベンザリンのジェネリックは、この特許が切れた後に発売となりました。このため、後発品と呼ばれます。
ジェネリック医薬品の名称は、以前は製薬会社ごとに様々でしたが、近年は薬の一般名がつけられます。ですからベンザリン錠のジェネリックとしては、ニトラゼパム錠として統一されています。
ジェネリック医薬品になると、様々な製薬会社が製造を行います。これらのお薬は有効成分は同じですが、それぞれが微妙に異なります。
というのも、お薬の製造方法や製剤工夫が会社によって異なるためです。
ですがジェネリック医薬品は、先発品と同じように効果を示すための試験をクリアしていて、血中濃度の変化がほぼ同等になるように作られています。
ベンザリンは即効性を期待するお薬なので、理論的には大きな差がないとしても、効果に違いを感じる方もいらっしゃいます。その場合はもちろん、先発品を使っていくことも可能です。
【参考】ベンザリンの作用機序
それではベンザリンはどのようにして効果を発揮するのでしょうか。その作用メカニズムを詳しくお伝えしたいと思います。
ベンザリンは、ベンゾジアゼピン系に分類されるお薬です。
睡眠薬として現在よく使われているのは、非ベンゾジアゼピン系とベンゾジアゼピン系がありますが、この両者はどちらも基本的には同じメカニズムによって睡眠効果が期待できます。
どちらもGABA-A受容体(ベンゾジアゼピン結合部位)に作用します。それによってGABAの働きが強まり、脳の活動を抑えることで催眠作用をもたらします。
ベンゾジアゼピン結合部位には3つのサブタイプがあり、脳などの中枢神経にはω1とω2の2つが中心に分布しています。それらのサブタイプに対して、
- ベンゾジアゼピン系:ω1+ω2
- 非ベンゾジアゼピン系:ω1
として作用するという違いがあります。それぞれのサブタイプは、
- ω1:催眠作用
- ω2:筋弛緩作用・抗不安作用
が期待できます。
このためベンザリンなどのベンゾジアゼピン系は広く作用し、筋弛緩作用や抗不安作用があります。
【参考】GABAの作用機序と効果
睡眠薬は、GABAの働きを強めることで効果をもたらします。
GABAはリラックスさせる物質として、GABA入りのチョコレートなど食品でもアピールされたりしています。
食品やサプリメントとして摂取しての効果はエビデンスは乏しいですが、脳内ではGABAは重要な役割を果たしています。
GABAは神経伝達物質として、脳内での情報の受け渡しをしています。神経細胞の活動を抑える方向に働く、抑制性の伝達物質になります。
GABA-A受容体には、Cl-の通り道(イオンチャネル)があります。GABAはこのCl-チャネルを開き、それによって神経細胞の中にCl-が入ってきます。
マイナスのイオンが入ってくるので、細胞の中が電気的にマイナスになります。
神経細胞は、細胞の中が電気的にプラスになることによって興奮して活発になります。
このため電気的にマイナスになるということは、神経細胞が興奮しにくくなるということになります。
ですからGABAは、Cl-チャネルを開いて神経細胞の興奮を鎮める作用が期待できます。
なお、睡眠と覚醒に関わる物質を整理すると、以下のようになります。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:ベンザリン(ニトラゼパム) 投稿日:2023年3月23日
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