クアゼパム(ドラール)の効果と副作用
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クアゼパム(ドラール)とは?
クアゼパム(商品名:ドラール)は、ベンゾジアゼピン系に分類される睡眠薬になります。
クアゼパムは作用時間が長いお薬になりますが、体内で分解されていくことで抗不安作用が強い物質に変化します。
このため、8~12時間ほどの睡眠薬+長時間型の抗不安薬といったイメージのお薬になります。
眠気が残るといった副作用に注意が必要ですが、離脱症状である反跳性不眠は少ないというメリットがあります。
アメリカよりも高用量使える珍しいお薬でもあり、しっかりとした効果が期待できる睡眠薬の一つです。
このためクアゼパムは、
- 入眠障害
- 中途覚醒
- 早朝覚醒
など、さまざまな睡眠障害で効果が期待できます。
クアゼパムは、先発品としてドラール錠として発売されました。
発売から年月もたっており、ジェネリック医薬品として一般名(成分名)のクアゼパム錠が発売となっています。
※以下では「ドラール」として、クアゼパムの効果や副作用をお伝えしていきます。
ドラールの睡眠薬での位置づけ
ドラールの睡眠薬の中での位置づけをみていきましょう。
睡眠薬は、その作用メカニズムの違いから2つに分けることができます。
- 脳の機能を低下させる睡眠薬
- 自然な眠気を強くする睡眠薬
ドラールは、脳の機能を低下させる睡眠薬になります。
覚醒に働いている神経活動を抑えることで、眠気を促していきます。
「疲れきって眠ってしまうとき」に近い状態を作り出し、強引さのある効き方になります。
一方で、自然な眠気を強くする睡眠薬も発売されています。
私たちの睡眠・覚醒の周期に関係する生理的な物質の働きを調整し、睡眠状態に仕向けていくお薬です。本来の眠気を強める形ですので、効果が人によっても異なります。
ドラールなどの脳の機能を低下させるタイプのお薬は、ある程度の効果や副作用が計算できるというメリットがあります。このため、
- 作用時間
- 強さ
から睡眠薬を選んでいきます。
ドラールの作用時間は長時間型ですが、体の中で分解されて催眠作用は薄れていきます。
そうしてできた代謝産物は抗不安効果があり、じっくりと時間をかけて体から抜けていきます。
そしてドラールは催眠作用の強い睡眠薬になります。このため、不眠と不安が強い方に対して使いやすいお薬になります。
ドラールの特徴
<メリット>
- 即効性と強い効果が期待できる
- 入眠障害に有効
- 中途覚醒や早朝覚醒に有効
- 抗不安効果が期待できる
- 離脱症状が少ない
- ジェネリックが発売されている
<デメリット>
- 眠気(翌朝への持ち越し)の副作用に注意が必要
- ふらつきの副作用に注意が必要
- 筋弛緩作用から睡眠時無呼吸が悪化することがある
- 睡眠時無呼吸症候群で使えない
- 高齢者でせん妄を生じることがある
- 食後に服用すると急激に吸収されてしまう
- ジェネリックの割に薬価が高い
それではドラールの特徴を、
- 効果
- 副作用
- 剤形と薬価
に分けてみていきましょう。
ドラールの効果
ドラールは、脳の機能を低下させることで睡眠を促す睡眠薬になります。
ドラールのお薬としての特徴は、
- ベンゾジアゼピン系であること
- 抗不安効果が強い物質に代謝されること
- 作用時間が長いこと
- 効果が強いこと
があげられます。
ドラールは、ベンゾジアゼピン系睡眠薬に分類されます。ドラール自体はω1選択性が高く、催眠作用に特化しています。
ですがドラールは体内で代謝されて、抗不安作用が強い物質に代わっていきます。
ちょうど、長時間型抗不安薬のメイラックスと同じような成分となります。
ですから催眠作用だけでなく、抗不安作用や筋弛緩作用も認められるお薬になります。
トータルでみて作用時間は長いですが、催眠作用自体は8~12時間ほどになります。抗不安効果は日中を通して持続します。
ドラールの作用も強いため、しっかりとした効果を期待できる睡眠薬になります。
ドラールの副作用
ドラールの副作用としては、「眠気の持ち越し」と「ふらつき」に注意する必要があります。
ドラールは催眠作用自体は8~12時間ですが、その後は抗不安効果がしばらく持続します。
このため、睡眠作用が翌朝に続いてしまって眠気が残ってしまったり、日中に眠気が出てしまうことがあります。
またドラールの代謝産物には、筋弛緩作用があります。このため、ふらつきや転倒にも注意が必要です。
また睡眠時無呼吸症候群が悪化してしまうことがあるため、ドラールは禁忌となっています。
ですから、お薬を使い始めてからイビキがひどくなった方は注意が必要です。
また高齢者では、せん妄を生じやすくしてしまうことがわかっています。せん妄とは、一時的に意識が混濁して興奮してしまい、異常行動などをとってしまう状態です。
昼夜リズムが乱れたり、睡眠障害もせん妄の原因となりますが、ベンゾジアゼピン系睡眠薬はせん妄を悪化・誘発することがわかっています。
ドラールは、離脱症状が少ないお薬になります。
とはいえ長期に服用していると常用量依存といって、量が増えていくことは少ないですが、減らそうとすると不眠になってやめられず、漫然と服用が続いてしまうこともあります。
ドラールの副作用頻度は、
- 傾眠(1.3%)
- 不動性めまい(1.2%)
- 悪心(0.2%)
- 倦怠感(0.2%)
となっています。(製造販売後調査の安全性評価対象症例3,925例)
ドラールの剤形と薬価
ドラールのお薬としての特徴についてみていきましょう。
ドラールの先発品としては、
- 15mg錠
- 20mg錠
が発売されています。
ドラールは後発品であるジェネリック医薬品であるクアゼパム錠も発売されています。それぞれの薬価をみていきましょう。
- 15mg錠:57.5円(ジェネリック:24.8~32.8円)
- 20mg錠:69.6円(ジェネリック:30.9~38.8円)
※2023年4月現在の薬価になります。
これに自己負担割合(1~3割)をかけた金額が、患者さんの自己負担になります。薬局では、これにお薬の管理料などが加えられて請求されています。
ドラールの用法と作用時間
ドラールの用法は、以下のようになっています。
- 開始用量:15mg~20mg
- 用法:1日1回就寝前
- 最高用量:30mg
ドラールは15mg~20mgから開始していくことが一般的です。最高用量は30mgまでとなっています。
アメリカでは7.5mgと15mgの剤形しかなく、最大用量も15mgしか認められていません。
珍しく、日本のほうが高用量使えるお薬になっています。
日本では頑固な不眠が続いている入院患者さんに対象に治験がなされたため、高用量まで使えるお薬になりました。
これは離脱症状の少なさもあって、安全性としても問題ないと判断されたのだと考えています。
ドラールは、基本的には空腹時で効果を発揮するように作られているお薬になります。
ドラールは吸収効率が悪いお薬ですが、脂に溶けやすいお薬のために、食後に服用すると食事中の脂肪とともに吸収されます。
3倍ほども吸収されてしまうため、お薬が効きすぎて
ですから必ず就寝前に服用することが大切です。そして、牛乳などで服用することは避けてください。 ドラールの作用時間は個人差がありますが、催眠作用は8~12時間程度で、その後は抗不安効果が一日を通して持続していきます。 お薬の効き方を見ていくにあたっては、 が重要になってきます。 ドラールは、 となっています。
半減期の非常に長いお薬になりますが、体の中で代謝されていき、デスアルキルフルラぜパムという物質に代わっていきます。 この代謝産物をプロドラックにしたものがメイラックスですから、抗不安作用が長時間にわたって発揮します。
ドラールの添付文章では、 相互に中枢神経抑制作用を増強することがある。 となっています。禁忌というわけではありませんが、併用注意とされています。 アルコールとドラールは、どちらも中枢神経を抑制する作用があります。併用することにより、脳の機能を落としすぎてしまいます。 このためドラールとアルコールを併用すると、 といったことに気をつける必要があります。
ドラールもアルコールも、どちらも肝臓で分解されます。このためお薬の効果が翌朝までのこってしまったり、意識が中途半端になることでの健忘やせん妄が起こりやすくなることがあります。 また、アルコールに酔いやすくなることにも注意が必要です。
そして飲酒習慣があると、肝臓の機能が変化していきます。このためお薬の血中濃度が不安定になり、効果も不安定になります。 そしてドラールとアルコールを併用することでの最大の問題は、 という点になります。 睡眠薬のドラールとアルコールは、近しい作用があります。このため、どちらも身体に慣れてしまい、効果が悪くなってしまいます。 このことを耐性といい、同じ量では効かなくなってしまいます。
体からお薬やアルコールが抜けると心身の不調が認められて、精神的にも依存してしまいます。 このように、心身に依存が形成されてしまいます。 ですから、ドラールを服用しながらの習慣的な飲酒はできるだけ避けるべきです。 飲み会などの機会飲酒であれば、時間を空ければドラールを使うことはできます。【参考】ドラールの半減期
【参考】ドラールとアルコール(お酒)
ドラールと他剤の作用時間と強さの比較
ドラールは、脳の機能を低下させることで催眠作用をもたらします。このようなタイプのお薬の効果は、作用時間によって考えることができます。
作用時間によって、大きく4つのタイプに分けられています。
- 超短時間型:効果のピークは1時間未満、作用時間は2~4時間
- 短時間型:効果のピークは1~3時間、作用時間は6~10時間
- 中間型:効果のピークは1~3時間、作用時間は20~24時間
- 長時間型:効果のピークは3~5時間、作用時間は24時間~
ドラールは、長時間型に分類されます。睡眠時間の全体をカバーするように催眠作用が期待でき、また一日を通して抗不安作用が持続して、寝付きやすい土台を作ってくれるような睡眠薬になります。
もう少し詳しくみていくと、以下の表のようになります。
作用時間の違いごとに睡眠薬としての強さの違いを、最高用量で比較してみましょう。
- 超短時間型:効果のピークは1時間未満、作用時間は2~4時間
(ハルシオン>アモバン>マイスリー≧ルネスタ) - 短時間型:効果のピークは1~3時間、作用時間は6~10時間
(レンドルミン≧デパス≒エバミール/ロラメット>リスミー) - 中間型:効果のピークは1~3時間、作用時間は20~24時間
(サイレース/ロヒプノール>ベンザリン/ネルボン>ユーロジン) - 長時間型:効果のピークは3~5時間、作用時間は24時間~
(ドラール>ベノジール/ダルメート≒ソメリン)
ドラールの副作用と対処法
睡眠薬では、作用時間によって注意すべき副作用が異なります。
- 作用時間が長い睡眠薬・・・眠気・ふらつき
- 作用時間が短い睡眠薬・・・健忘・依存性
作用時間が長いということは、薬が身体に少しずつたまっていくことにつながります。
睡眠薬の眠気が翌朝に残ってしまったり、筋弛緩作用が日中に働いてしまうことがあります。
それに対して作用時間が短い睡眠薬は、薬が急激に作用するということになります。
このため中途半端な覚醒状態となってしまって健忘(物忘れ)が認められたり、お薬の急激な変化に体が慣れようとしてしまうことで、依存が成立してしまうことがあります。
ドラールは作用時間が長いお薬なので、眠気やふらつきに注意が必要です。
また脂肪分と一緒に服用すると急激に吸収されてしまうため、その際には健忘や過鎮静に注意が必要です。
作用時間の長さゆえに離脱症状は少なく、依存性は高くはありません
睡眠薬は、効果が翌朝に残ってしまうことがあります。作用時間が長いお薬ほど、眠気や倦怠感が残りやすくなってしまいます。
ドラールは長時間型に分類される睡眠薬で、作用時間は非常に長いです。このため、翌朝に眠気が残ってしまうこともあります。 睡眠がしっかりとれていても眠気が残るようであれば、ドラールによる眠気の翌朝への持ち越しの可能性が高いです。
その場合の対処法としては、 があります。 睡眠薬を服用した後に、記憶がなくなってしまうという副作用が生じることがあります。
記憶はなくなっているというと怖いかと思いますが、周囲からみると普通にいつも通りのあなたの行動をとっています。 友達に電話していたり、お菓子を食べ散らかしていたりといったことで、翌朝になってその痕跡をみつけてビックリします。
このような「物忘れ」を、「前向性健忘」といいます。睡眠薬を服用して、それ以降(前向き)の記憶を忘れてしまうのです。 このような状態になるのは、睡眠薬が中途半端な覚醒状態にしてしまうことで、海馬を中心とした記憶に関する脳の機能が低下してしまうためと考えられています。
ですから前向性健忘は、睡眠薬が急激に作用する時に起こりやすい副作用になります。ドラールは作用は強いのですが、作用時間の長い睡眠薬になります。 ですから健忘を起こしやすいお薬とはいえません。 しかしながら脂肪分と一緒に服用すると吸収効率が急激に上がるため、その際には注意が必要です。
健忘の対策としては、 になります。 それでも認められる場合は、 このようにしていきます。 睡眠薬は、長期間服用していると体に慣れてしまいます。そして睡眠薬をやめてしまうと不眠が悪化して、やめられなくなってしまうことがあります。
ドラールは作用時間が非常に長く、離脱症状は起こしにくいお薬になります。 このため依存性は高くはありませんが、漫然と服用しているとやめられなくなってしまう常用量依存となってしまうこともあります。 ですから、漫然とした長期的に使用は避けなければいけません。 依存性の対策としては、 ことがあります。ドラールと眠気
ドラールと健忘
ドラールと依存性
ドラールの反跳性不眠(離脱症状)と減薬方法
睡眠薬は長期間にわたって使っていると、お薬があることに身体に慣れてしまうことがあります。
その結果、お薬としての効果は薄れているのに、薬を減らすと不眠が強まってしまうことがあります。
このような状態を反跳性不眠といいます。睡眠薬の離脱症状とも言えます。
「睡眠薬がないと眠れない」と勘違いしてしまうことが多いのですが、薬がやめられないのは反跳性不眠が原因であることも少なくありません。
このような状態になると、睡眠薬の量は増えないけれどもやめられなくなってしまいます。このことを、常用量依存といったりします。
ドラールは長時間型の睡眠薬になりますので、こういった離脱症状は起こりにくいです。
ですから反跳性不眠によってお薬が中止できなくなるというよりは、精神的な依存によってお薬をやめられなくなってしまうことが多いです。
反跳性不眠の様子をグラフにしてみると、以下のようになります。
このためドラールを中止していく際は、急激には行いません。
- 少しずつ減量していく
が基本となります。7.5~15mgずつ減量していくことが多いです。
ドラールの減薬では、眠れるという自信を失わないことが大切ですので、ドラールを減量して寝付けない場合はベッドで粘ってはいけません。
すぐにあきらめて、元の量になるようにお薬を追加で服用して就寝してください。眠れるタイミングをみて、少しずつ減量していきます。
睡眠によい生活習慣を心がけることが大切
ドラールを使っていくにあたっては、睡眠習慣を見直すことも重要です。睡眠習慣と合わせて取り組むことで、睡眠薬だけに依存することなく不眠の改善を行っていきましょう。
ここでは特に、睡眠薬の使い方に関係する部分についてお伝えします。不眠で寝付けないとき、多くの方が間違った対処法を行っています。
- お酒に頼る
- なるべく早く寝る
この2つは不眠を悪化させてしまいます。お酒は寝つきを一時的に良くしてくれますが、睡眠の質を落としてしまいます。
また、なるべく早く寝てベッドで粘っている方もいらっしゃいます。ベッドでゴロゴロして眠れない時間をすごすことは、「なかなか眠れない」という失敗した認知を強めてしまいます。
むしろ睡眠時間は、ギリギリまで絞ってしまったほうがよいです。そして眠れないときは、粘らずに睡眠薬を使ってしまったほうが不眠はよくなります。
睡眠時間を5~6時間にしぼってデッドラインを設定し、その時間までは自然な眠気が生じたらベッドに入るようにしていきます。
その際にお薬を使っていただき、それでも眠れなければ頓服をすぐに使ってください。
このようにして、ベッドに入れば眠れるという認知を作っていくことが大切です。
その他にも、睡眠に良い生活習慣があります。睡眠に関する正しい知識を理解して、生活で取り入れられることは意識していくことが大切です。詳しく知りたい方は、不眠症(睡眠障害)のページをお読みください。
ドラールの運転への影響
睡眠薬は、原則的にすべてのお薬が運転や危険作業が禁止となっています。
これは眠気やふらつきなどの副作用が生じる可能性があるためです。
そういったリスクがある以上は、製薬会社も「運転禁止」とせざるを得ませんでした。
ドラールの添付文章でも同様に、
本剤の影響が翌朝以後に及び、眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、自動車の運転等の危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。
という表現となっています。
しかしながら、不眠のままで運転する方が悪影響があるかもしれませんし、薬を服用したら運転禁止とするべきかは悩ましいところです。運転できないことが、社会生活の妨げになってしまうこともあります。
自己責任にはなりますが、お薬を服用しながら運転されている方もいるのが実情です。ただし、
- はじめて使ったとき
- 他のお薬からの切り替えをしたとき
- 量を増減させているとき
- 体調不良を自覚したとき
は無理をせず、運転は控えていただいたほうがよいです。
ドラールによって眠気が翌朝に残るようであれば運転は行わず、主治医と相談して作用時間の短い睡眠薬への変更を検討してください。
ドラールの妊娠・授乳への影響
ドラールの妊娠への影響を見ていきましょう。ドラールのお薬の添付文章には、
妊婦(3ヵ月以内)又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
このように記載されています。
妊娠への影響を考えていくにあたっては、
- 奇形をおこしやすいか(催奇形性)
- 薬の成分が胎児に届くことによる影響
を考えていく必要があります。
ドラールなどの睡眠薬はこれまで、口唇口蓋裂のリスクが高くなるといわれていました。
しかしながら因果関係がないとする報告もなされており、奇形を引き起こすリスクは低いと考えられています。
ドラールは出産後に気を付ける必要があり、出生直後に赤ちゃんに離脱症状が生じてしまうことがあります。
また、赤ちゃんに鎮静作用が強くでてしまい、生まれた後に元気がないこともあります。産科の先生にお伝えしておけば、過度に心配しなくても大丈夫です。
次に、ドラールの授乳への影響をみていきましょう。ドラールのお薬の添付文章には、
授乳婦に投与する場合には授乳を避けさせること。
このように記載されています。
母乳を通して赤ちゃんにドラールの成分(クアゼパム)が伝わってしまうことが確認されていて、赤ちゃんがドラールをわずかに服用しているのと同じになります。
これによって眠気が強まり、哺乳が不十分になることがあります。
しかしながら母乳で育てることは、赤ちゃんにも非常に良い影響があるといわれています。
生後まもなくは頻繁に授乳することになるので、睡眠薬は使わない方が多いです。落ち着いてきたら、ご自身の判断で服薬を再開される方もいらっしゃいます。
ドラールは作用時間が長い睡眠薬ですので、少しでも赤ちゃんへの影響を減らしたいのであれば、作用時間の短い睡眠薬にされたほうが良いかもしれません。
海外の妊娠と授乳に関する基準
海外の妊娠と授乳に関する基準をご紹介します。
妊娠への影響:FDA(アメリカ食品医薬品局)薬剤胎児危険度基準
- A:ヒト対象試験で、危険性がみいだされない
- B:ヒトでの危険性の証拠はない
- C:危険性を否定することができない
- D:危険性を示す確かな証拠がある
- ×:妊娠中は禁忌
授乳への影響:Hale授乳危険度分類
- L1:最も安全
- L2:比較的安全
- L3:おそらく安全・新薬・情報不足
- L4:おそらく危険
- L5:危険
ドラールは、FDA基準で「×」、Hale分類で「L2」となっています。ドラールは、アメリカでは妊娠中は禁忌となっています。
ドラールが発売されたのはベンゾジアゼピン系でも新しい方であり、海外で安全性に懸念が広がっていた時期であったことも大きいかと思います。
ドラール錠のジェネリック医薬品(クアゼパム錠)
ドラールは、1999年に発売されたお薬になります。
お薬の開発には莫大なお金が必要となるため、発売から10年ほどは成分特許が製薬会社に認められて、独占的に販売することができます。これが先発品になります。
そしてドラールのジェネリックは、この特許が切れた後に発売となりました。このため、後発品と呼ばれます。
ジェネリック医薬品の名称は、以前は製薬会社ごとに様々でしたが、近年は薬の一般名がつけられます。
ですからドラール錠のジェネリックとしては、クアゼパム錠として統一されています。
ジェネリック医薬品になると、様々な製薬会社が製造を行います。これらのお薬は有効成分は同じですが、それぞれが微妙に異なります。というのも、お薬の製造方法や製剤工夫が会社によって異なるためです。
ですがジェネリック医薬品は、先発品と同じように効果を示すための試験をクリアしていて、血中濃度の変化がほぼ同等になるように作られています。
ドラールは即効性を期待するお薬なので、理論的には大きな差がないとしても、効果に違いを感じる方もいらっしゃいます。その場合はもちろん、先発品を使っていくことも可能です。
【参考】ドラールの作用機序
それではドラールはどのようにして効果を発揮するのでしょうか。その作用メカニズムを詳しくお伝えしたいと思います。
ドラールは、ベンゾジアゼピン系に分類されるお薬です。睡眠薬として現在よく使われているのは、非ベンゾジアゼピン系とベンゾジアゼピン系がありますが、この両者はどちらも基本的には同じメカニズムによって睡眠効果が期待できます。
どちらもGABA-A受容体(ベンゾジアゼピン結合部位)に作用します。
それによってGABAの働きが強まり、脳の活動を抑えることで催眠作用をもたらします。
ベンゾジアゼピン結合部位には3つのサブタイプがあり、脳などの中枢神経にはω1とω2の2つが中心に分布しています。それらのサブタイプに対して、
- ベンゾジアゼピン系:ω1+ω2
- 非ベンゾジアゼピン系:ω1
として作用するという違いがあります。それぞれのサブタイプは、
- ω1:催眠作用
- ω2:筋弛緩作用・抗不安作用
が期待できます。
実はドラールの有効成分であるクアゼパムは、ω1選択性が高いといわれています。
しかしながら代謝産物の選択性が低いため、結果的には筋弛緩作用や抗不安作用もあります。
【参考】GABAの作用機序と効果
睡眠薬は、GABAの働きを強めることで効果をもたらします。
GABAはリラックスさせる物質として、GABA入りのチョコレートなど食品でもアピールされたりしています。
食品やサプリメントとして摂取しての効果はエビデンスは乏しいですが、脳内ではGABAは重要な役割を果たしています。
GABAは神経伝達物質として、脳内での情報の受け渡しをしています。神経細胞の活動を抑える方向に働く、抑制性の伝達物質になります。
GABA-A受容体には、Cl-の通り道(イオンチャネル)があります。
GABAはこのCl-チャネルを開き、それによって神経細胞の中にCl-が入ってきます。マイナスのイオンが入ってくるので、細胞の中が電気的にマイナスになります。
神経細胞は、細胞の中が電気的にプラスになることによって興奮して活発になります。
このため電気的にマイナスになるということは、神経細胞が興奮しにくくなるということになります。
ですからGABAは、Cl-チャネルを開いて神経細胞の興奮を鎮める作用が期待できます。
なお、睡眠と覚醒に関わる物質を整理すると、以下のようになります。
【お願い】
「こころみ医学の内容」や「病状のご相談」等に関しましては、クリニックへのお電話によるお問合せは承っておりません。
診察をご希望の方は、受診される前のお願いをお読みください。
【お読みいただいた方へ】
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:ドラール(クアゼパム) 投稿日:2023年3月23日
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