ベンゾジアゼピン系睡眠薬の副作用と対策
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睡眠薬は副作用が心配…という方へ
現在使われている睡眠薬の中で、メインを占めているのが『ベンゾジアゼピン系』という系列のお薬です。
昔使われていた睡眠薬に比べれば、安全性も格段に上がり、種類も豊富で様々なタイプの不眠に対応することができます。
そうはいっても、やはりお薬には副作用がつきものです。副作用と対策を知って上手に使っていきましょう。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬の副作用
ベンゾジアゼピン系のお薬は、脳の興奮をしずめるGABAという神経伝達物質の作用を強め、
- 睡眠を助ける(催眠)
- 筋肉の緊張をゆるめる(筋弛緩)
- 不安をやわらげる(抗不安)
- けいれんを防ぐ
の4つの働きをあわせもっています。
その中で催眠効果が高いものが睡眠薬として使われているのです。
ただ眠りやすくするだけではなく、不安をやわらげたり緊張をといたりする効果も期待できます。
作用時間も超短時間~長時間と多くの種類があるため、患者さんそれぞれに対応したお薬を選ぶことができます。
しかしその反面、注意が必要な副作用もあるので、その対策をみていきましょう。
- 眠気の持ち越し
- 記憶障害(前向性健忘)
- 睡眠薬依存
- ふらつき
- 認知機能の低下
①眠気の持ち越し
睡眠薬は夜にだけ効いてくれれば良いのですが、場合によっては翌朝まで眠気が続いてしまうことがあります。
「持ち越し効果(hung over)」とも呼ばれる副作用で、
- 朝~日中の眠気
- 倦怠感
- ふらつき
- 集中力の低下
などがみられます。
「眠気が残り過ぎて朝が起きられない」、「仕事や学校でボーっとしてしまう」となってしまうと生活に支障がきてしまいますよね。
事故などにつながることもあるので注意が必要です。
眠気の持ち越しの対策
眠気の持ち越しで生活に支障をきたすときは、
- 睡眠薬の減量
- 作用時間の短い睡眠薬への変更
のいずれかで対応します。
目標の睡眠はしっかりととれているけれど効きすぎるという場合は、睡眠薬の減量をしていきます。
お薬の種類はそのままでも、量を減らせば効果の持続時間が短くなります。
もしも睡眠の効果がいまいちだったり、減量ではうまく調整がつかない場合は、睡眠薬の種類を変更します。
半減期が短くて、作用時間の短い睡眠薬を選び、様子をみていただきます。
そのようにして、効果と副作用と生活のバランスをみながら、患者さんそれぞれに合う睡眠薬の種類と量をさぐっていきます。
※種類や効果の強さ・作用時間について詳しくは、『ベンゾジアゼピン系睡眠薬の効果・作用時間の比較』をお読みください。
②記憶障害(健忘)
健忘とは、睡眠薬服用後~睡眠中の記憶ができなくなることです。
- 効果の短いタイプの睡眠薬(超短時間型のハルシオンが有名)
- 飲む量が多い
- アルコールと併用した時
におこりやすい副作用です。
自分では飲んですぐ寝たつもりなのに、朝になると何か行動した後が残っていたりします。
食べた記憶のないもののゴミがあったり、覚えのない発信履歴があったり…。
記憶ができないだけですので、行動自体は普通にできているのです。
この副作用は、アメリカの議員が入眠剤を服用後、記憶がないまま車で事故をおこしてしまったことで注目されるようになりました。
そんなことがおこってしまうのは、睡眠薬で中途半端な覚醒状態にし、脳の記憶にかかわる海馬を中心とした部分だけが一時的に機能しなくなるからです。
普段の記憶機能に障害がおきるわけではないのでご心配はありませんが、記憶のない行動をしてしまうのは困りますよね。
記憶障害(健忘)の対策
前向性健忘の副作用のある無しにかかわらず、
- 睡眠薬を飲んだ後はすぐに布団に入るようにする
- アルコールとは絶対併用しない
この2つは副作用対策で大切なことです。
それでも健忘の副作用がでてしまったときは、
- 効果の長いお薬に変更する
- 量を減らす
のいずれかで対策していきますので、主治医と相談してください。
③睡眠薬依存
睡眠薬といえば、「依存が怖い」と思っている方も多いのではないでしょうか。
たしかに、ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、漫然と長期使えば、
- 身体依存(お薬が急に抜けると反動で不眠がひどくなる)
- 精神依存(これが無いと眠れないのではと不安で手放せなくなる)
- 耐性(飲み続けると効きが悪くなってしまう)
の3つの要素から依存がついてしまうことがあるため注意が必要です。
とはいえ、その依存性はアルコールよりはずっとマシですし、医師の指示通りに、一定量でコントロールできているなら大きな心配はありません。しかし、
- 効きが悪くなったからと量が増えていく
- 乱用してしまう
ようなことがあるなら注意が必要です。
睡眠薬依存の対策
できるだけ依存を形成しないためには、
- アルコールとは併用しないこと
- 医師の指示を守ること
- 依存しやすい傾向の方は、依存性の低いタイプの睡眠薬から使うこと
- 不眠が長期間続くときは、他のお薬や治療も検討していくこと
- お薬だけに頼らず、睡眠環境の見直しなども行うこと
などが大切です。
④ふらつき
ベンゾジアゼピン系睡眠薬には筋肉の緊張をゆるめるものが多いです。
筋弛緩作用といって、肩こりや頭痛があって眠れない方などには有効ですが、効きすぎるとふらつくことがあります。
とくに、高齢の方や足腰の弱い方が夜間トイレに行く際などは、転倒の危険もあるので注意してください。
ふらつきの対策
ふらつきの副作用がでるときは、筋弛緩作用の弱い睡眠薬から使っていきます。
ただ、飲み始めて身体が慣れるまでは強く出やすいですので、注意して行動するようにしましょう。
⑤認知機能の低下
睡眠薬を使っていると、認知機能にも影響することがあると考えられています。
簡単にいうと物忘れがひどくなりやすいということですが、高齢の方以外ではほとんど心配はありません。
高齢の方にベンゾジアゼピン系睡眠薬を使っていると、時にせん妄という意識障害がおこることがあります。
認知機能の低下の対策
ふらつきやせん妄の副作用のことを考えると、高齢者にはなるべくベンゾジアゼピン系睡眠薬は使わない方がよいです。
非ベンゾジアゼピン系睡眠薬、ロゼレム、ベルソムラやデエビゴ、鎮静系抗うつ薬などから睡眠薬を選択していきます。
まとめ
ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、昔の睡眠薬に比べれば副作用も軽減され、安全性はずっと高まっています。
とはいえ、やはり副作用はつきもので、正しく使わなければそのリスクは高まってしまいます。
睡眠薬には、それぞれメリット・デメリットがあります。
不眠のタイプ、生活状態、効果・副作用のバランスをみながら選んでいくことが大切です。
気になる副作用があったときは主治医とよく相談しましょう。
※ベンゾジアゼピン系睡眠薬のメリット・デメリットについては、『ベンゾジアゼピン系睡眠薬のメリット・デメリット』をお読みください。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:睡眠薬(睡眠導入剤) 投稿日:2023年3月28日
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