ゾピクロン(アモバン)の効果と副作用

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ゾピクロン(アモバン)とは?

ゾピクロン(アモバン)の効果と副作用について、精神科医が詳しく解説していきます。

ゾピクロン(一般名:アモバン)は、非ベンゾジアゼピン系に分類される睡眠薬になります。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬に比べると、ゾピクロンは睡眠にしぼって作用します。

このため筋弛緩作用が少ないためにふらつきが少なく、耐性がつきにくいために依存性が抑えられています。

ゾピクロンの特徴は、その効果の早さになります。作用時間が短く、翌日に眠気が残りにくい睡眠薬になります。

このためゾピクロンは、

  • 入眠障害

に使われることが多い睡眠薬になります。

その一方でゾピクロンは、苦味の副作用があります。

翌朝にも苦い感覚が口の中に残るため、苦味のためにお薬を続けられなくなってしまう方もいます。

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、

  • アモバン(一般名:ゾピクロン):1989年発売
  • マイスリ―(一般名:ゾルピデム):2000年発売
  • ルネスタ(一般名:エスゾピクロン):2012年発売

このように3種類発売されています。このうちルネスタは、ゾピクロンを改良したお薬になります。

ゾピクロンは、先発品としてアモバン錠が発売されました。

発売から年月もたっており、ジェネリック医薬品として一般名(成分名)のゾピクロン錠が発売となっています。

※以下では「アモバン」として、ゾピクロンの効果や副作用をお伝えしていきます。

アモバンの睡眠薬での位置づけ

アモバンの睡眠薬の中での位置づけをみていきましょう。

睡眠薬は、その作用メカニズムの違いから2つに分けることができます。

  • 脳の機能を低下させる睡眠薬
  • 自然な眠気を強くする睡眠薬

アモバンは、脳の機能を低下させる睡眠薬になります。

覚醒に働いている神経活動を抑えることで、眠気を促していきます。

「疲れきって眠ってしまうとき」に近い状態を作り出し、強引さのある効き方になります。このため、睡眠導入剤と呼ばれることもあります。

一方で、自然な眠気を強くする睡眠薬も発売されています。

私たちの睡眠・覚醒の周期に関係する生理的な物質の働きを調整し、睡眠状態に仕向けていくお薬です。本来の眠気を強める形ですので、効果が人によっても異なります。

アモバンなどの脳の機能を低下させるタイプのお薬は、ある程度の効果や副作用が計算できるというメリットがあります。このため、

  • 作用時間
  • 強さ

から睡眠薬を選んでいきます。

アモバンはその中でも、作用時間が短いお薬になります。入眠障害に使われることが多いお薬になります。

アモバンの特徴

<メリット>
  • 即効性が期待できる
  • 入眠障害に有効
  • 翌朝の眠気やふらつきが少ない
  • 依存性が少ない
  • ジェネリックが発売されている(薬価がリーズナブル)
<デメリット>
  • 作用時間が短い(中途覚醒や早朝覚醒に効果が乏しいことがある)
  • 健忘の副作用に注意が必要
  • 苦味の副作用が多い

それではアモバンの特徴を、

  1. 効果
  2. 副作用
  3. 剤形と薬価

に分けてみていきましょう。

アモバンの効果

アモバンは、脳の機能を低下させることで睡眠を促す睡眠薬になります。このような睡眠薬は、

  • ある程度効果が計算できる
  • 依存性に気をつける必要がある

という特徴があります。

その中でもアモバンの特徴は、

  • 非ベンゾジアゼピン系であること
  • 作用時間が短いこと

になります。

ですから効果の面では、睡眠だけにしぼった効果が期待できます。そして非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の中では効果が強いです。

また、アモバンは作用時間が短く、入眠障害に効果が期待できます。

ですから睡眠薬の作用が翌朝に残りにくいという特徴があります。

アモバンの副作用

アモバンの副作用としては、苦味と健忘に注意が必要です。

アモバンは苦味という独特な副作用があります。苦味がある方は、翌日にも口の中に苦い状態が続いてしまいます。

苦味があるかは人によって異なり、全く感じない方もいます。

健忘の副作用は、作用時間が短いためです。

急激に覚醒レベルを落とすために、中途半端な覚醒状態にしてしまい、記憶だけが抜け落ちてしまうことがあります。

またアモバンは、依存性が従来の睡眠薬よりは抑えられています。

しかしながら漫然と投与を続けていると、アモバンがやめられなくなってしまいます。

アモバンの副作用頻度は、

  • にがみ(4.18%)
  • ふらつき(0.89%)
  • 眠気(0.51%)
  • 口渇(0.48%)
  • 倦怠感(0.41%)

市販後の副作用報告では、

  • 苦味(3.47%)
  • ふらつき(0.35%)
  • 眠気(0.26%)
  • 口渇(0.24%)

となっています。

アモバンの剤形と薬価

アモバンのお薬としての特徴についてみていきましょう。

アモバンは、

  • 7.5mg錠
  • 10mg錠

の2剤形が発売されており、それぞれの剤形でジェネリック医薬品が発売されています。

それぞれの薬価をみていきましょう。

  • 7.5mg錠:13.1円(ジェネリック:6.0~6.5円)
  • 10mg錠:14.5円(ジェネリック:6.7~7.3円)
    ※2023年4月現在の薬価になります。

これに自己負担割合(1~3割)をかけた金額が、患者さんの自己負担になります。薬局では、これにお薬の管理料などが加えられて請求されています。

アモバンはこれまで、向精神薬の指定をうけていない珍しい睡眠薬でした。

このため処方日数に制限がなかったのですが、2016年に向精神薬指定をうけて、処方日数が30日までとなりました。

アモバンの用法と作用時間

アモバンの用法は、以下のようになっています。

  • 開始用量:7.5mg(肝機能障害がある場合は3.75mg)
  • 用法:1日1回就寝前
  • 最高用量:10mg

アモバンは7.5mgから開始していくことが一般的です。

肝機能障害がある患者さんでは効果が強まってしまうことがあるため、半分の3.75mgから開始していくことが推奨されています。

アモバンは食事の影響をうけにくいですが、基本的には空腹時で効果を発揮するように作られているお薬になります。

アモバンは健忘の副作用があるため、就寝直前に服用

そしてアモバンは即効性が期待でき、「服用まもなく効果が期待でき、気づいたら朝になっていた」というような効き目になります。

作用時間は短く、寝つきを改善する目的で使われることが多いです。

【参考】アモバンの半減期

お薬の効き方を見ていくにあたっては、

  • 半減期:血中濃度が半分になるまでの時間
  • 最高血中濃度到達時間:血中濃度がピークになるまでの時間

が重要になってきます。

アモバンは、

  • 半減期(T1/2):4時間
  • 最高血中濃度到達時間(Tmax):1時間

となっています。

アモバンの作用時間は短く、お薬の服用後すぐに効果のピークがきて、体からすぐに抜けていきます。このため、入眠障害によく使われています。

【参考】アモバンとアルコール(お酒)

アモバンの添付文章では、

相互に作用を増強することがある。

となっており、併用注意とされています。禁忌というわけではありませんが、できれば控えるべきとされています。

アルコールとアモバンは、どちらも中枢神経を抑制する作用があります。併用することにより、脳の機能を落としすぎてしまいます。

このためアモバンとアルコールを併用すると、

  • 薬やお酒が効きやすくなる
  • 効果が不安定になる

といったことに気をつける必要があります。

アモバンもアルコールも、どちらも肝臓で分解されます。

このためお薬の効果が翌朝までのこってしまったり、意識が中途半端になることでの健忘やせん妄が起こりやすくなることがあります。

また、アルコールに酔いやすくなることに注意が必要です。

そして飲酒習慣があると、肝臓の機能が変化していきます。このためお薬の血中濃度が不安定になり、効果も不安定になります。

そしてアモバンとアルコールを併用することでの最大の問題は、

  • 双方に依存しやすくなってしまう

という点になります。

睡眠薬のアモバンとアルコールは、近しい作用があります。

このため、アモバンもアルコールもすぐに身体に慣れてしまい、効果が悪くなってしまいます。

このことを耐性といい、同じ量では効かなくなってしまいます。

体からお薬やアルコールが抜けると心身の不調が認められて、精神的にも依存してしまいます。このように心身に依存が形成されてしまいます。

ですから、アモバンを服用しながらの習慣的な飲酒はできるだけ避けるべきです。

飲み会などの機会飲酒であれば、時間を空ければアモバンを使うことができます。

アモバンと他剤の作用時間と強さの比較

アモバンは、脳の機能を低下させることで催眠作用をもたらします。このようなタイプのお薬の効果は、作用時間によって考えることができます。

作用時間によって、大きく4つのタイプに分けられています。

  • 超短時間型:効果のピークは1時間未満、作用時間は2~4時間
  • 短時間型:効果のピークは1~3時間、作用時間は6~10時間
  • 中間型:効果のピークは1~3時間、作用時間は20~24時間
  • 長時間型:効果のピークは3~5時間、作用時間は24時間~

もう少し詳しくみていくと、以下の表のようになります。

睡眠薬の作用時間と最高用量についてまとめました。

作用時間の違いごとに睡眠薬としての強さの違いを、最高用量で比較してみましょう。

  • 超短時間型:効果のピークは1時間未満、作用時間は2~4時間
    (ハルシオン>アモバン>マイスリー≧ルネスタ)
  • 短時間型:効果のピークは1~3時間、作用時間は6~10時間
    (レンドルミン≧デパス≒エバミール/ロラメット>リスミー)
  • 中間型:効果のピークは1~3時間、作用時間は20~24時間
    (ロヒプノール/サイレース>ベンザリン/ネルボン>ユーロジン)
  • 長時間型:効果のピークは3~5時間、作用時間は24時間~
    (ドラール>ベノジール/ダルメート≒ソメリン)

非ベンゾジアゼピン系の中でのアモバンの位置づけ

非ベンゾジアゼピン系としては、

  • マイスリ―(一般名:ゾルピデム)
  • アモバン(一般名:ゾピクロン)
  • ルネスタ(一般名:エスゾピクロン)

の3種類が発売されています。海外ではもう1種類、ソナタ(一般名:ザレプロン)というお薬が発売されています。

この3つの睡眠薬のうち、マイスリー以外の2剤のアモバンとルネスタは、親戚のお薬になります。

アモバンは光学異性体と呼ばれる左右対称な2つの成分でできていて、睡眠作用の強い半分を取り出したのがルネスタになります。

ですから最高用量で比較すると、アモバン>ルネスタとなります。

マイスリーはこの間の位置づけで、マイスリ―はより睡眠だけに作用します。(ω1選択性が高い)

半減期をみると、非ベンゾジアゼピン系はいずれも短いお薬になり、超短時間型に分類されます。

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の比較をしました。

作用時間に関しては、ルネスタ>アモバン>マイスリーの順になります。

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬で特徴的なこととして、アモバンやルネスタでは苦みの副作用があることがあげられます。

特にアモバンでは、服用継続が困難になってしまうことも少なくありません。

アモバンの副作用の対処法

睡眠薬では、作用時間によって注意すべき副作用が異なります。

  • 作用時間が長い睡眠薬・・・眠気・ふらつき
  • 作用時間が短い睡眠薬・・・健忘・依存性

作用時間が長いということは、薬が身体に少しずつたまっていくことにつながります。

睡眠薬の眠気が翌朝に残ってしまったり、筋弛緩作用が日中に働いてしまうことがあります。

それに対して作用時間が短い睡眠薬は、薬が急激に作用するということになります。

このため中途半端な覚醒状態となってしまって健忘(物忘れ)が認められたり、お薬の急激な変化に体が慣れようとしてしまうことで、依存が成立してしまうことがあります。

アモバンは作用時間が短いお薬ですので、健忘や依存性に注意が必要です。

そしてアモバン特有の副作用として、翌朝に残る口の中の苦味があげられます。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

アモバンと眠気

睡眠薬は、効果が翌朝に残ってしまうことがあります。作用時間が長いお薬ほど、眠気や倦怠感が残りやすくなってしまいます。

アモバンは作用時間が短いお薬ですので、翌朝に眠気は残りにくい睡眠薬になります。ですからまずは、睡眠をしっかりとれているかを確認します。

睡眠時間をしっかりと確保していても、アモバンで眠気が残ってしまうこともあります。アモバンで眠気が認められた場合の対処法としては、

  • お薬の量を減らす
  • 他の睡眠薬に変える

などがあります。

アモバンと健忘

睡眠薬を服用した後に、記憶がなくなってしまうという副作用が生じることがあります。

記憶はなくなっているというと怖いかと思いますが、周囲からみると普通にいつも通りのあなたの行動をとっています。

友達に電話していたり、お菓子を食べ散らかしていたりといったことで、翌朝になってその痕跡をみつけてビックリします。

このような「物忘れ」を、「前向性健忘」といいます。睡眠薬を服用して、それ以降(前向き)の記憶を忘れてしまうのです。

このような状態になるのは、睡眠薬が中途半端な覚醒状態にしてしまうことで、海馬を中心とした記憶に関する脳の機能が低下してしまうためと考えられています。

ですから前向性健忘は、睡眠薬が急激に作用する時に起こりやすい副作用になります。

アモバンは作用時間が短く、健忘の副作用は起こりやすいです。

健忘の対策としては、

  • 寝る直前に睡眠薬を服用すること
  • 絶対にアルコールと一緒に睡眠薬を飲まない

になります。

それでも認められる場合は、

  • 薬の量を減らす
  • 作用時間の長い睡眠薬に変更する

このようにしていきます。

アモバンと苦味

アモバンを服用すると、翌朝に口の中に苦味が残ることがあります。お薬自体が苦いというわけではなく、翌日に苦味が続いてしまいます。

苦味が生じる理由はよくわかっておらず、何らかの苦み成分が唾液から分泌されていると考えられています。

有効成分であるゾピクロンや、その肝臓での代謝産物が合わさって、独特の苦みが生じると考えられています。

唾液ではなくて、味を感じている味蕾細胞の周囲の血流から感じているともいわれています。

からだの内部からの苦みとも考えられているため、うがいをしても変化がないことが多いです。

アモバンで苦味が認められた場合の対処法としては、

  • 我慢して様子をみる
  • アモバンを減量する
  • ルネスタに変更する
  • 他の薬に変更する

という方法があります。

アモバンを改良したルネスタでも苦味が認められますが、アモバンに比べると軽減されています。

アモバンと依存性

睡眠薬は、長期間服用していると体に慣れてしまいます。そして睡眠薬をやめてしまうと不眠が悪化して、やめられなくなってしまうことがあります。

アモバンは作用時間が短く、切れ味が良いために効果の実感もよいお薬になります。このため、お薬の特徴としては依存しやすい要素>があります。

ですが非ベンゾジアゼピン系に分類されていて、従来のベンゾジアゼピン系に比べると依存性は少ないといわれています。

ですが長期に服用していると常用量依存が形成されてしまって、アモバンをやめられなくなってしまうことも少なくありません。

ですから、漫然とした長期的に使用は避けなければいけません。

依存性の対策としては、

  • 睡眠に良い生活習慣を意識する
  • できるだけ少量・短期間で使う
  • アルコールと一緒に服用しない

ことがあります。

睡眠薬の依存を心配されている方は少なくありませんが、皆さんが何気なく摂取しているアルコールに比べたらマシです。

毎日晩酌を楽しむお父さんがアル中になることはないですし、飲み会のたびに潰れている若者がアル中になるわけではありません。

睡眠薬の用法と用量を守って服用していれば、過度に心配することはありません。

アモバンの反跳性不眠(離脱症状)と減薬方法

アモバンは長期間にわたって使っていると、お薬があることに身体に慣れてしまいます。

その結果、お薬としての効果は薄れているのに、薬を減らすと不眠が強まってしまうことがあります。

このような状態を反跳性不眠といいます。睡眠薬の離脱症状とも言えます。

「睡眠薬がないと眠れない」と勘違いしてしまうことが多いのですが、薬がやめられないのは反跳性不眠が原因であることも少なくありません。

このような状態になると、睡眠薬の量は増えないけれどもやめられなくなってしまいます。

このことを、常用量依存といったりします。

アモバンは超短時間作用型の睡眠薬ですが、このように作用時間が短い睡眠薬では、反跳性不眠は起こりやすいです。

以下の図のように、以前にもまして不眠が強まってしまうので、アモバンをなかなかやめられなくなってしまいます。

睡眠薬の離脱症状である反跳性不眠について、概念をまとめました。

このためアモバンは、いきなり中止することは困難です。まずは、

  • 少しずつ減量していく

が基本となります。

自信を失わないことが大切ですので、アモバンを減量して寝付けない場合はベッドで粘ってはいけません。

すぐにあきらめて、元の量になるようにお薬を追加で服用して就寝してください。眠れるタイミングをみて、少しずつ減量していきます。

減量が困難なときは、

  • 作用時間が長い睡眠薬に変更していく

ことを考えていきます。併用しながら少しずつシフトしていきます。

作用時間が長い睡眠薬は身体からゆっくりお薬の成分が抜けていくので、離脱症状が少なくなります。

睡眠によい生活習慣を心がけることが大切

アモバンを使っていくにあたっては、睡眠習慣を見直すことも重要です。

睡眠習慣と合わせて取り組むことで、睡眠薬だけに依存することなく不眠の改善を行っていきましょう。

ここでは特に、睡眠薬の使い方に関係する部分についてお伝えします。不眠で寝付けないとき、多くの方が間違った対処法を行っています。

  • お酒に頼る
  • なるべく早く寝る

この2つは不眠を悪化させてしまいます。お酒は寝つきを一時的に良くしてくれますが、睡眠の質を落としてしまいます。

また、なるべく早く寝てベッドで粘っている方もいらっしゃいます。

ベッドでゴロゴロして眠れない時間をすごすことは、「なかなか眠れない」という失敗した認知を強めてしまいます。

むしろ睡眠時間は、ギリギリまで絞ってしまったほうがよいです。

そして眠れないときは、粘らずに睡眠薬を使ってしまったほうが不眠はよくなります。

睡眠時間を5~6時間にしぼってデッドラインを設定し、その時間までは自然な眠気が生じたらベッドに入るようにしていきます。

その際にお薬を使っていただき、それでも眠れなければ頓服をすぐに使ってください。

このようにして、ベッドに入れば眠れるという認知を作っていくことが大切です。

その他にも、睡眠に良い生活習慣があります。睡眠に関する正しい知識を理解して、生活で取り入れられることは意識していくことが大切です。

詳しく知りたい方は、不眠症(睡眠障害)のページをお読みください。

アモバンの運転への影響

睡眠薬は、原則的にすべてのお薬が運転や危険作業が禁止となっています。

これは眠気やふらつきなどの副作用が生じる可能性があるためです。

そういったリスクがある以上は、製薬会社も「運転禁止」とせざるを得ませんでした。

アモバンの添付文章でも同様に、

本剤の影響が翌朝以後に及び、眠気、注意力・集中力・反射運動能力などの低下が起こることがあるので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること。

という表現となっています。

しかしながら、不眠のままで運転する方が悪影響があるかもしれませんし、薬を

服用したら運転禁止とするべきかは悩ましいところです。運転できないことが、社会生活の妨げになってしまうこともあります。

アモバンは作用時間が短いため、翌朝に残りにくいという意味では影響の少ないお薬ではあります。

自己責任にはなりますが、お薬を服用しながら運転されている方もいるのが実情です。

ただし、

  • はじめて使ったとき
  • 他のお薬からの切り替えをしたとき
  • 量を増減させているとき
  • 体調不良を自覚したとき

は無理をせず、運転は控えていただいたほうがよいです。

アモバンの妊娠・授乳への影響

アモバンの妊娠への影響から見ていきましょう。アモバンのお薬の添付文章には、

妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断された場合にのみ投与すること。

このように記載されています。

妊娠への影響を考えていくにあたっては、

  • 奇形をおこしやすいか(催奇形性)
  • 薬の成分が胎児に届くことによる影響

を考えていく必要があります。

アモバンなどの睡眠薬はこれまで、口唇口蓋裂のリスクが高くなるといわれていました。

しかしながら因果関係がないとする報告もされており、奇形を引き起こすリスクは低いと考えられています。

アモバンは、出産後に気を付ける必要があります。出生直後に離脱症状が生じてしまうことがあります。

また、赤ちゃんに鎮静作用が強くでてしまい、生まれた後に元気がないこともあります。産科の先生にお伝えしておけば、過度に心配しなくても大丈夫です。

次に、アモバンの授乳への影響をみていきましょう。アモバンのお薬の添付文章には、

授乳婦への投与は避けることが望ましいが、やむを得ず投与する場合は授乳を避けさせること。

このように記載されています。

しかしながら授乳についても、明らかなネガティブな報告はありません。

母乳で育てることは、赤ちゃんにも非常に良い影響があるといわれています。

生後まもなくは頻繁に授乳することになるので、睡眠薬は使わない方が多いです。

落ち着いてきたら、ご自身の判断で服薬を再開される方もいらっしゃいます。

母乳を通して赤ちゃんにアモバンの成分が伝わってしまうことは、実際に確認されています。

しかしながらアモバンは作用時間が短いので、母乳の濃度も下がりやすく、睡眠薬の中では授乳中に使いやすいお薬になります。

アモバンを服用しながら母乳で育てていく場合は、赤ちゃんがわずかにアモバンを服用しているのと同じになります。

乳児検診で体重が増えていかないといったことがあれば、医師と相談したほうが良いでしょう。

赤ちゃんに伝わることで眠気が強まり、哺乳が不十分になることがあります。

乳児検診などで赤ちゃんの成長がとまってしまったら、注意していく必要があります。

その場合には、以下のような対処法があげられます。

  • 人工乳哺育にする
  • 服用してからの授乳間隔をあける(服用の直前に哺乳する)
  • アモバンの量を減らす

海外の妊娠と授乳に関する基準

海外の妊娠と授乳に関する基準をご紹介します。

妊娠への影響:FDA(アメリカ食品医薬品局)薬剤胎児危険度基準
  • A:ヒト対象試験で、危険性がみいだされない
  • B:ヒトでの危険性の証拠はない
  • C:危険性を否定することができない
  • D:危険性を示す確かな証拠がある
  • ×:妊娠中は禁忌
授乳への影響:Hale授乳危険度分類
  • L1:最も安全
  • L2:比較的安全
  • L3:おそらく安全・新薬・情報不足
  • L4:おそらく危険
  • L5:危険

睡眠薬の妊娠・授乳への影響をまとめました。

アモバンは、FDA基準で「C」、Hale分類で「L2」となっています。

アモバン錠のジェネリック医薬品(ゾルピデム錠)

アモバンは、1989年に発売されたお薬になります。

お薬の開発には莫大なお金が必要となるため、発売から10年ほどは成分特許が製薬会社に認められて、独占的に販売できるようになります。(先発品)

アモバンのジェネリックは、この特許が切れた後に発売となりました。(後発品)

ジェネリック医薬品の名前は、かつては以下のように独自の名前がつけられていました。

  • アモバンテス
  • スローハイム
  • ゾピクール
  • ドパリール
  • メトローム

ジェネリック医薬品の名称は、近年は薬の一般名がつけられます。

ですからアモバン錠のジェネリックとしては、ゾピクロン錠として統一されています。

ジェネリック医薬品になると、様々な製薬会社が製造を行います。これらのお薬は有効成分は同じですが、それぞれが微妙に異なります。

というのも、お薬の製造方法や製剤工夫が会社によって異なるためです。

ですがジェネリック医薬品は、先発品と同じように効果を示すための試験をクリアしていて、血中濃度の変化がほぼ同等になるように作られています。

アモバンは即効性を期待するお薬なので、理論的には大きな差がないとしても、効果に違いを感じる方はいらっしゃいます。その場合はもちろん、先発品を使っていくことも可能です。

【参考】アモバンの作用機序

それではアモバンはどのようにして効果を発揮するのでしょうか。その作用メカニズムを詳しくお伝えしたいと思います。

アモバンは、非ベンゾジアゼピン系に分類されるお薬です。

このタイプのお薬の一般名(アモバンであれば、ゾピクロンZopiclone)はすべて「Z」から始まるため、Z薬などと呼ばれたりしています。

睡眠薬として現在よく使われているのは、非ベンゾジアゼピン系とベンゾジアゼピン系がありますが、この両者はどちらも基本的には同じメカニズムによって睡眠効果が期待できます。

アモバンなどの非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、ベンゾジアゼピン系骨格という構造をもっていませんが、GABA-A受容体(ベンゾジアゼピン結合部位)に作用します。

それによってGABAの働きが強まり、脳の活動を抑えることで催眠作用をもたらします。

ベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系

ベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系の違いについてみていきましょう。

どちらもベンゾジアゼピン結合部位に作用しますが、この結合部位には3つのサブタイプがあります。

そのうち脳などの中枢神経には、ω1とω2の2つが中心となります。

それらのサブタイプに対して、

  • ベンゾジアゼピン系:ω1+ω2
  • 非ベンゾジアゼピン系:ω1

として作用します。それぞれのサブタイプは、

  • ω1:催眠作用
  • ω2:筋弛緩作用・抗不安作用

が期待できます。このため非ベンゾジアゼピン系は、筋弛緩作用や抗不安作用が少ないと考えられています。

もう少し細かくみていく理論では、GABA-A受容体の2つあるαサブユニットの組み合わせが重要と考えられています。

GABA-A受容体のサブタイプについて、まとめました。

このような組み合わせの違いによって、受容体の作用が異なると考えられています。従来のω1とω2の理論では、

  • ω1受容体:α1受容体
  • ω2受容体:α2・α3・α5受容体

このようになります。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬より幅広く作用します。

非ベンゾジアゼピン系の方が耐性はできにくく(薬が同じ量で効かなくなりにくい)、依存性は抑えられることになります。

【参考】GABAの作用機序と効果

睡眠薬は、GABAの働きを強めることで効果をもたらします。

GABAはリラックスさせる物質として、GABA入りのチョコレートなど食品でもアピールされたりしています。

食品やサプリメントとして摂取しての効果はエビデンスは乏しいですが、脳内ではGABAは重要な役割を果たしています。

GABAは神経伝達物質として、脳内での情報の受け渡しをしています。神経細胞の活動を抑える方向に働く、抑制性の伝達物質になります。

GABA-A受容体には、Cl-の通り道(イオンチャネル)があります。GABAはこのCl-
チャネルを開き、それによって神経細胞の中にCl-が入ってきます。マイナスのイオンが入ってくるので、細胞の中が電気的にマイナスになります。

神経細胞は、細胞の中が電気的にプラスになることによって興奮して活発になります。

このため電気的にマイナスになるということは、神経細胞が興奮しにくくなるということになります。

ですからGABAは、Cl-チャネルを開いて神経細胞の興奮を鎮める作用が期待できます。

なお、睡眠と覚醒に関わる物質を整理すると、以下のようになります。

睡眠に関係する脳内物質の関係をまとめました。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:アモバン(ゾピクロン)  投稿日:2023年3月23日

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過度な不安が辛いときに有効な『抗不安薬』 不安は非常に辛い症状です。心身へのストレスも強く、身体の自律神経のバランスも崩れてしまいます。 抗不安薬(精神安定剤)は、耐えがたい不安で苦しんでいる方には非常に有用なお薬です。… 続きを読む 抗不安薬(精神安定剤)の効果と作用時間の比較

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睡眠薬(睡眠導入剤)の効果と副作用

睡眠薬(精神導入剤)とは? こころの病気では、睡眠が不安定になってしまうことは非常に多いです。 睡眠が十分にとれないと心身の疲労が回復せず、集中力低下や自律神経症状などにつながってしまいます。ですから睡眠を整えることは、… 続きを読む 睡眠薬(睡眠導入剤)の効果と副作用

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