副作用としての性機能障害の抗うつ剤での比較

抗うつ剤に多い副作用は「性機能障害」

お薬にはいろいろな副作用がありますが、「性」に関するものは、診察でもなかなか言いづらいのではないでしょうか?

しかし、大きな悩みとなっている方は少なくないと思います。

抗うつ剤、なかでもSSRIは、性機能障害(性欲低下・勃起障害・生理不順など)の副作用の悩みが必発といってもよいお薬です。

なぜ抗うつ剤には性機能障害の副作用が出やすいのでしょうか?お薬ごとで発生率に違いはあるのでしょうか?

抗うつ剤と性機能低下の副作用について、くわしくみていきましょう。

※性機能障害についての具体的な対応策を知りたい方は、『抗うつ剤の性欲低下・性機能障害と5つの対策』をお読みください。

※抗うつ剤について概要を知りたい方は、『抗うつ剤(抗うつ薬)とは?』をお読みください。

抗うつ剤による性機能障害とは?

抗うつ剤では、

  • 性欲低下
  • 勃起(性的興奮)障害
  • オーガズム障害

がみられることが多いです。

「性機能障害」といってもいろいろな障害がありますが、性に関係する反応を細かくみると、5つの段階に分けられます。

  1. 性欲・欲望
  2. 性的興奮
  3. 持続
  4. 絶頂
  5. 解消

抗うつ剤の副作用では、①性欲・欲望、②性的興奮、④絶頂(オーガズム)に関する障害がよくおこります。

男性は、①と④が、女性は②の障害がみられる方が多いようです。

性欲・欲望の障害

抗うつ剤の影響により、性欲そのものがなくなってしまうことがあります。

性欲自体が無くなってしまえば、1人ならそう困ることはありません。

けれど、パートナーとの関係性などで苦慮される方が多いようです。

性的興奮の障害

性欲自体はあったとしても、性欲をもとにした感情の高まりと、身体の反応がおこらなくなってしまうことがあります。男性でいえば「勃たない」状態になります。

絶頂の障害

性欲と性的興奮はおこり、行為には臨めたとしても、絶頂まで達せられないという問題がおこることもあります。

いってしまえば、「イケない」状態です。

これもパートナーとの関係性に影響しますので、悩まれている方が多い障害です。

抗うつ剤で性機能障害がみられる原因

抗うつ剤が性機能障害をもたらすメカニズムは、現在のところ詳しくはわかっていませんが、

  • セロトニン2A作用
  • アドレナリンα1作用

が関わっていると考えられています。

セロトニン2A作用

性機能障害の副作用が多い抗うつ剤では、「セロトニン再取り込み阻害作用が強い」という共通点があります。

ですから、セロトニンが関係していることは間違いがないだろうと言われており、なかでも、セロトニン2A受容体作用が関係していると考えられています。

アドレナリンα1作用

セロトニン以外にも、性機能障害に影響する物質としては、アドレナリンやドパミンがあります。

勃起する時には、陰茎に血液が集中する必要があります。

そのときには、血管の調整をになうアドレナリンα1受容体の働きが大きく関わります。

抗うつ剤では多少の抗α1作用があるものも多いので、これが勃起障害や、射精障害へつながると考えらます。

抗ドパミン作用(プロラクチン増加)

ドパミン2受容体がブロックされるお薬では、プロラクチンというホルモンを増加させ、女性の生理不順や男性の性欲低下の副作用がおきることがあります。

新しいタイプの抗うつ剤ではドパミンへの作用は少なく、これによる性機能障害への影響は少ないです。

とくに抗精神病薬でもある抗うつ効果のあるドグマチールでは、高プロラクチン血症となって性機能障害や生理不順になることがあります。

性機能障害の出やすい抗うつ剤は?

  • SSRIのジェゾロフトとパキシルでとくにおこりやすいです

日本で発売されている抗うつ剤の中で性機能障害の副作用を比較すると、どのような頻度の違いがあるのでしょうか?

2009年に発表された、様々な論文を検討した報告(メタアナリシス)をご紹介します。

抗うつ剤の性機能障害を比較してみましょう。

これを見ていただくと、SSRIでは性機能障害の割合が高いことがわかると思います。そのなかでも、ジェイゾロフトが最も高く、その割合は80%にも達しています。次いで、パキシルが70%と高い割合になっています。

<レクサプロは40%程度、ルボックス/デプロメールは30%程度となっており、先の2剤に比べれば性機能障害の副作用が出にくい抗うつ剤です。

サインバルタなどのSNRIや、古くからあるトフラニールなどの三環系抗うつ薬は、この2つのグループの間に位置して、40%程度となっています。

新しい抗うつ剤のうち、リフレック/レメロンは、性機能障害が少ないといわれていますが、20%程度で認められます。

このお薬での性機能障害が出にくい理由としては、セロトニン2・3受容体を同時にブロックする作用があるためです。

同じような働きをもつ鎮静系抗うつ薬のテトラミド・デジレル/レスリンでも、性機能障害のリスクは比較的少ないです。

デジレル/レスリンでは、ごくまれに「持続性勃起障害」という副作用が生じることもあります。

また新しく発売されたトリンテリックスは、抗うつ剤のなかでもさらに性機能障害の副作用が少ないお薬になります。

代表的な抗うつ薬の副作用のうち、性機能障害を比較して表にしまとめました。

SSRIでの性機能障害の内容の違い

これまでお伝えした通り、抗うつ剤のなかでもSSRIには性機能障害がおこりやすいのですが、お薬によってどの性機能障害がおこりやすいかは異なるといえます。。

SSRIによる性機能障害の副作用は主に

  1. 性欲低下
  2. 勃起(興奮)障害
  3. オーガズム障害

の3つです。この発生割合を各SSRIごとにみてみると、

  • ジェイゾロフト→①=6割、②=5割、③=5割
  • パキシル→①=6割、②=6割、③=6割
  • レクサプロ→①=0.5割、②=0.5割、③=3割
  • ルボックス/デプロメール→①=2割、②=1割、③=1割

と報告されています。

ジェイゾロフトとパキシルは、3つの副作用がすべて高割合で出てきます。

レクサプロではオーガズム障害が中心で性欲には影響しにくく、ルボックス/デプロメールは全体的な発生率が一番少ないものの、性欲低下は出やすい特徴があります。

性欲低下で困っているという方には、レクサプロの方が向いていると言えるでしょう。

抗うつ剤での性機能障害に悩んでいるときは、主治医へ相談を

性機能障害の副作用については、相談しづらくて自分で抱え込んでしまっている方も多いと思います。

けれど、基本的に抗うつ剤は長い付き合いになるお薬です。副作用の悩みが大きいと飲み続けていくのは大変です。

「性」の問題は伝えづらいかもしれませんが、お薬の変更や追加などで対応できることもありますし、できる対策を考えていきますので、悩んでいる方は主治医に相談してください。

※性機能障害の具体的な対応策については、『抗うつ剤の性欲低下・性機能障害と5つの対策』を、

※抗うつ剤のその他の副作用について知りたい方は、『抗うつ剤におこりやすい副作用と対策とは?』をお読みください。

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カテゴリー:抗うつ剤(抗うつ薬)  投稿日:2023年3月27日