抗うつ剤は太る?体重増加と5つの対策
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体重増加の副作用が気になる!
患者さんから「この薬は太りますか?」という質問をよく受けます。
精神科のお薬は性質上どうしても太りやすいものが多く、抗うつ剤は種類によりますが、やはり太りやすい傾向のものが多いです。
抗うつ剤による体重増加には、どのように対処すればいいのでしょうか?具体的な対策をみていきましょう。
※抗うつ剤について概要を知りたい方は、『抗うつ剤(抗うつ薬)とは?』をお読みください。
※抗うつ剤の副作用全体について知りたい方は、『抗うつ剤によくある副作用と対策とは?』をお読みください。
まずは主治医に相談を
体重増加の副作用が気になったら、まずは主治医に相談をしてください。
体重についての考え方は個人差も大きいですから、患者さんと医師のとらえ方にギャップが大きいこともあるのです。
「体重増加が気になる」ということを、ちゃんと伝えておきましょう。
そうすれば、お薬の調整も含めて一緒に対策を考えていくことができますし、抗うつ剤の治療中に太るのは、お薬の副作用とばかりは限りません。
「この抗うつ剤は太るから」と、自己判断でお薬を減らしたり中止したりすれば病状が悪化し、かえってお薬が必要な期間が延びてしまうこともあります。
主治医と相談し、体重を管理していく方法を考えていきましょう。
抗うつ剤による体重増加の対処法
抗うつ剤による体重増加が気になるときは、以下のようなことで対処をしていきます。
- 体重測定をする
- 食事を見直す
- 運動習慣をつくる
- 抗うつ剤を減薬する
- 他の抗うつ剤に変える
抗うつ剤は、お薬が代謝に影響することは少なく、食欲増加やリラックス作用などで太りやすくなります。
食べた量以上に太ってしまうことは少ないですので、自己管理の意識をもっていくことが重要になります。
いずれにしても、病状に合わせて行っていくことが大切ですので、主治医と相談しながらやっていきましょう。
とくにお薬の調整は、必ず主治医と相談をしてください。
対策①体重測定をする
精神科のお薬を服用している時は、できるだけ体重測定をするようにしましょう。
普段、体重を定期的に測っていますか?体重測定といえば、年に1度の健康診断の時だけという方も多いのではないでしょうか。
お薬を飲んでいく中で、「なんだか最近太ってきたなぁ‥‥」と思って体重を測ってみたら、その数字にビックリしてしまうこともあります。
その衝撃が大きすぎて、お薬を急にやめてしまうことにもなりかねません。
体重を定期的に測っていれば早期に変化がわかり、すぐに対策をとって体重を戻すのも楽ですよね。
体重が大きく増えてしまった後では、元に戻そうという気持ちもくじけてしまいます。
対策②食事を見直す
抗うつ剤は代謝への影響は比較的少なく、食べたカロリー以上に太ってしまうわけではありません。
ですから、カロリーコントロールを意識すれば、体重増加は改善されていきます。
抗うつ剤の服用中は、以下のような意識で食生活を見直していきましょう。
- カロリーを意識して食事を選ぶ
- 朝食は抜かずに3食食べ、間食を控える
- よく噛んで食べる
- タンパク質をしっかりと摂る
- 適度に糖質を控える
カロリーを意識して食事を選ぶ
「カロリーを意識する」は体重管理の基本ですが、無理な食事制限は続きませんし、かえって痩せにくい身体をつくってしまうことがあります。
必要以上にカロリーを摂らないような意識で食事を選びつつ、バランスの良い食生活をこころがけましょう。
朝食は抜かずに3食とり、間食を控える
食事をとると身体があったかくなりますよね?それは『食事誘発性熱産生』と呼ばれる現象です。
栄養素が分解されて熱が産生され、消化活動によって胃腸が動くので、代謝がよくなるのです。
ですので、食事は3食きっちりととった方がやせやすくなります。
かといって、食事の回数を3食以上に増やせば、よほどしっかりした人でないと自分の摂取カロリーがわからなくなってしまいます。
1日3食を基本に間食は控え、必要なカロリーを分けて食べるようにしましょう。
よく噛んで食べる
食後の代謝増加を大きくするためには、2つの方法があります。
1つは「よく噛んで食べること」。
よく噛んで食べると、食事による熱産生が増えることもわかっています。
それに消化も促進され、噛むことが満腹中枢を刺激したり、精神的なリラックス効果をもたらしたりして、少量でも満足感を得やすくなります。
ゆっくりと時間をかけて食事をとることにもつながりますので、血糖値が上昇して満腹感がでてきて、食べすぎずに済みます。
タンパク質をしっかり摂る
食後の代謝増加を大きくするもう1つの方法は、「タンパク質を多くすること」です。
タンパク質は摂取カロリーの30%あまりが熱産生に使われると報告されています。
ダイエットがいき過ぎてタンパク質や脂質が不足し、筋肉量が減ると基礎代謝も落ち、痩せにくい身体になってしまいます。
適度に糖質を控える
タンパク質とは反対に、控えめにした方がいいのは糖質です。
ごはん、麺類、パンなどの主食類や甘いものですね。
といっても、「糖質抜きダイエット」など極端な糖質制限は病気のリスクも高まると報告されており、おすすめできません。
少なくとも、朝食の糖質はなくすべきではありません。
素早くエネルギー変換ができる栄養素は糖質です。脳の活動が低下している朝には、糖質でスイッチを入れてあげる必要があります。
それに、糖質が不足してくると脳がストレスを感じやすくなりますし、無茶なことをすれば必ず反動がやってきます。
ですから、「糖質を控えめにするマイルール」をつくる程度がちょうどよいです。
例えば、ご飯は半盛りにする、夜のラーメンは封印するなどです。
「お薬を飲んでいる期間だけのダイエット」ではなく、その後も無理せず続けていけるようなものにしましょう。
対策③運動習慣をつくる
運動で筋肉量が増えれば基礎代謝が上がり、痩せやすい身体になります。
できるならば、
- 筋トレ
- 有酸素運動
を組み合わせた方が効率よく痩せられます。
筋トレをすると少しずつ筋肉量が増えていくだけでなく、筋トレ直後から代謝があがります。この状態で有酸素運動を行うと、脂肪が効率よく燃焼されるのです。
さらに言えば、
- 胸
- お尻
など、大きい筋肉から鍛えていく方が効率はよいです。
また、運動は精神的にもよい影響があります。運動するとスッキリしますよね。
軽症のうつ病の方では、治療として運動が勧められることもあるのです。
運動習慣により病状がよくなれば、抗うつ剤も減らしやすくなります。
対策④抗うつ剤を減薬する
抗うつ剤の効果がしっかりと出ているならば、少し減らしてみるのもひとつの方法です。
抗うつ剤を減らしてみて、効果はそのままで食欲が軽減できれば、それに越したことはありません。
ですが、これは必ず主治医に相談してください。減薬しても大丈夫かどうかは、これまでの経過から慎重に判断することが大切です。
焦って減薬し、病状が悪化すればかえって服薬期間や休息期間が長引き、太りやすくなってしまうことも考えられるのです。
対策⑤他の抗うつ剤に変える
抗うつ剤のなかでも、太りやすさには違いがあります。
太りやすい抗うつ剤を使っている時は、太りにくいSNRIやSSRIに変更していくことも検討します。
そうはいっても、お薬の切り替えにはリスクも伴います。同じ作用をする抗うつ剤だからといって、同じように効果がでるとは限りません。
ですから、効果も含めて総合的に切り替えるかを考えます。
お薬を切り替える場合は、まずは併用して副作用がないことを確認し、少しずつ減薬して新しい抗うつ剤を増やしていきます。
※抗うつ剤の種類による太りやすさの違いについては、『太りやすい抗うつ剤は?体重増加の比較』をお読みください。
まとめ
体重増加が気になるときは、まずは主治医に相談をし、対策を行っていきましょう。
- 体重測定をする
- 食事を見直す
- 運動習慣をつくる
- 抗うつ剤を減薬する
- 他の抗うつ剤に変える
抗うつ剤は代謝への直接的な影響は少ないため、自己管理の意識をもっていけば「お薬で激太り!」のようなことにはなりません。
また、お薬の作用だけでなく、症状改善で食欲が増したり、反対に意欲の減退が体重増加につながっていることもあります。
その原因は患者さんによってもさまざまですので、何が太った原因かを総合的にみて、治療効果と合わせて対策していくことが大切です。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:抗うつ剤(抗うつ薬) 投稿日:2023年3月24日
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