体重増加の副作用が気になる…

多くの患者さんが気にされる抗うつ剤の副作用の中で、「体重増加」があります。

たしかに抗うつ剤は、食欲を増したり、リラックス効果で代謝を抑えたりと、太りやすくなる傾向のお薬が多いのですが、種類によって差があります。

SNRIなどは体重へほとんど影響しません。

抗うつ剤ごとの太りやすさを比較してみましょう。

※抗うつ剤について概要を知りたい方は、『抗うつ剤(抗うつ薬)とは?』をお読みください。

※抗うつ剤の副作用全体について知りたい方は、『抗うつ剤によくある副作用と対策とは?』をお読みください。

抗うつ剤の「太る」副作用の比較

抗うつ剤の太りやすさを順番で並べてみると、

  • NaSSA≧三環系抗うつ薬>パキシル≧四環系抗うつ薬・SSRI>SNRI

となります。

主な抗うつ剤の太りやすさを一覧表でまとめてみました。

抗うつ剤の太りやすさを比較してみました。

抗うつ剤の太りやすさは、お薬の作用によって違いがありますが、もっとも太りやすいのは、

  • リフレックス/レメロン(NaSSA)
  • トリプタノール(三環系)

どちらかというと太りにくいのは、

  • イフェクサー、サインバルタ、トレドミン(SNRI)

となっています。

一番太りやすいNaSSA

体重増加しやすい抗うつ剤の代表といえば、NaSSAと呼ばれるリフレックス/レメロンです。

効果がしっかりしていて良いお薬ですが、食欲を増加させる

  • 抗ヒスタミン作用
  • 抗5HT2c作用

が強いのが特徴です。

ヒスタミンは満腹中枢を刺激する物質で、5HT2c(セロトニン受容体の1つ)は食欲を抑える働きがあります。

リフレックス/レメロンは、この2つをブロックする働きから食欲を増進させてしまいます。

三環系のなかでも太りやすいトリプタノール

古くからある三環系抗うつ剤も太りやすいお薬です。

そのなかでも、

  • トリプタノール

は特に太りやすく、リフレックス/レメロンと同じくらい食欲増進が目立ちます。

その他の

  • トフラニール
  • アナフラニール
  • アモキサン
  • ノリトレン

は、リフレックス/レメロンやトリプタノールほどではありませんが、やはり太りやすい傾向があります。

やや太りやすいSSRI・四環系

SSRIの

  • ジェイゾロフト
  • ルボックス/デプロメール
  • レクサプロ

は、明らかに太りやすい抗うつ剤というわけではありませんが、セロトニン作用の強さで穏やかな状態になり、その結果太りやすくなることがあります。

副作用による食欲増進や代謝への影響などはとくにありません。

むしろ、体重や体型へのとらわれが強いような過食症の方では、治療に用いることもあります。

ただし

  • パキシル

だけはなぜか、発作的な過食を誘発することがあります。

四環系の

  • ルジオミール
  • テトラミド

は三環系の副作用を軽減したものですが、ルジオミールの方が太りやすい傾向があります。

太りにくいSNRI・エビリファイ

SNRIの

  • サインバルタ
  • トレドミン
  • イフェクサー

は、交感神経系のノルアドレナリンを増やし、意欲を高めて活動的にする抗うつ剤です。

そのため代謝は促進され、お薬の作用として体重増加がみられることは少ないです。

また、向精神病薬にも分類される

  • エビリファイ

は、人によっては体重増加してしまうこともありますが、そこまで太りやすいお薬というわけではありません。

ドパミンを増やすことで活動的にさせるので、むしろ体重が減ることもあります。

胃の働きを高めるドグマチール

ドグマチールは、抗うつ剤や向精神病薬としても使われますが、元は胃薬です。

胃の働きを促進させるため食欲があがり、太りやすくなることがあります。

体重増加が気になるときの対策は?

「太りやすいお薬は飲みたくない!」と考える方も多いと思いますが、体重増加の副作用は、かならず生じるわけではありません

抗うつ剤の場合は、お薬そのものが太らせるというよりは、食欲を増したり、リラックス作用で代謝を抑えたりすることで、間接的に体重を増加させるのです。

※詳しくは、『なぜ抗うつ剤は太りやすいの?体重増加の原因とは?』をお読みください。)

ですから、食事や運動などを意識していけば、体重を管理していくことができます。

けれど、お薬の選択も含め、病状に合わせて行っていくことが重要ですから、「体重増加が気になる」というときは、主治医と相談しましょう。

治療中に太る原因は、人によってさまざまです。お薬のせいとばかり決めつけず、

  • 生活習慣
  • 精神状態
  • 症状の変化

なども振り返り、何が原因かを総合的にみながら、病状とともに対策していくことが大切です。

※対策について詳しくは、『抗うつ剤は太る?体重増加と5つの対策』をお読みください。

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執筆者紹介

大澤 亮太

開成高校卒業後、一橋大学をへて山梨大学医学部入学。 卒業後は、国際医療福祉大学附属熱海病院にて、初期臨床研修を修了。 その後は神奈川県内の精神科病院やメンタルクリニックで臨床経験を積み、精神保健指定医を取得。 併せて30社あまりの企業嘱託産業医として、精神科産業医業務に従事していた。 2017年に元住吉こころみクリニック(内科・心療内科)を開設。2020年12月、東京横浜TMSクリニック開設。 「私たち自身が友達や家族を紹介できる医療」を信条に、医療法人社団こころみの理事長として、社会課題の解決を意識した医療事業を展開している。

カテゴリー:抗うつ剤(抗うつ薬)  投稿日:2023年3月24日

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