エバミール・ロラメットの効果と副作用

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エバミール・ロラメット(ロルメタゼパム)とは?

エバミールの効果と副作用について、精神科医が詳しく解説します。

エバミール・ロラメット(一般名:ロルメタゼパム)は、ベンゾジアゼピン系に分類される睡眠薬になります。

同時に2社で開発されたお薬になります。このため、エバミール錠とロラメット錠として、別々の会社から発売されています。

一般的にはエバミール錠のほうが処方されているため、ここではエバミール錠について説明していきます。

エバミールは、肝臓への負担が少なく、他のお薬への飲み合わせの影響も少ないお薬になります。

このため、安全性の高さには定評がある睡眠薬になります。

エバミールの効果はややマイルドにはなりますが、作用時間は睡眠時間を全体的にカバーしている睡眠薬といえます。

このためエバミールは、

  • 入眠障害
  • 中途覚醒
  • 早朝覚醒

など、さまざまな睡眠障害に効果が期待できます。

エバミール錠・ロラメット錠は発売からしばらくたっていますが、あまり多く処方されているお薬ではありません。

このため、ジェネリック医薬品は発売されていません

エバミールの睡眠薬での位置づけ

エバミールの睡眠薬の中での位置づけをみていきましょう。

睡眠薬は、その作用メカニズムの違いから2つに分けることができます。

  • 脳の機能を低下させる睡眠薬
  • 自然な眠気を強くする睡眠薬

エバミールは、脳の機能を低下させる睡眠薬になります。

覚醒に働いている神経活動を抑えることで、眠気を促していきます。「疲れきって眠ってしまうとき」に近い状態を作り出し、強引さのある効き方になります。

一方で、自然な眠気を強くする睡眠薬も発売されています。

私たちの睡眠・覚醒の周期に関係する生理的な物質の働きを調整し、睡眠状態に仕向けていくお薬です。本来の眠気を強める形ですので、効果が人によっても異なります。

エバミールなどの脳の機能を低下させるタイプのお薬は、ある程度の効果や副作用が計算できるというメリットがあります。このため、

  • 作用時間
  • 強さ

から睡眠薬を選んでいきます。

エバミールは強さとしてはマイルドですが、作用時間は睡眠時間の全体をカバーしています。

エバミールと同程度の作用時間である睡眠薬としては、以下のようなものがあります。

  • デパス(一般名:エチゾラム)
  • レンドルミン(一般名:ブロチゾラム)
  • リスミー(一般名:塩酸リルマザホン)
  • サイレース/ロヒプノール(一般名:フルニトラゼパム)

エバミールの特徴

<メリット>
  • 即効性が期待できる
  • 入眠障害に有効
  • 中途覚醒や早朝覚醒にも有効
  • 抗不安作用が期待できる
  • 肝臓への負担が少ない
  • 他のお薬との相互作用が少ない
<デメリット>
  • 効果がマイルド
  • 眠気(翌朝への持ち越し)の副作用が生じることがある
  • ふらつきの副作用が生じることがある
  • 筋弛緩作用から睡眠時無呼吸が悪化することがある
  • 軽度だが依存性に気を付ける必要がある
  • 高齢者でせん妄を生じることがある
  • ジェネリックが発売されていない

それではエバミールの特徴を、

  1. 効果
  2. 副作用
  3. 剤形と薬価

に分けてみていきましょう。

エバミールの効果

エバミールは、脳の機能を低下させることで睡眠を促す睡眠薬になります。このような睡眠薬は、

  • ある程度効果が計算できる
  • 依存性に気をつける必要がある

という特徴があります。

その中でもエバミールの特徴は、

  • ベンゾジアゼピン系であること
  • 睡眠時間の全体をカバーする作用時間
  • 肝臓への負担が少ない

ことが挙げられます。

エバミールは睡眠薬としての働きのほかに、筋弛緩作用や抗不安作用が認められます。

特に不安に対しては、抗不安薬としてよく使われているワイパックス(一般名:ロラゼパム)に近い構造を持っており、効果が期待できます。

このため不安や緊張が強い場合には、リラックスした睡眠をもたらしてくれます。

作用時間としてもバランスがよく、睡眠時間の全体をカバーしてくれる睡眠薬です。

このため、入眠障害だけでなく中途覚醒や早朝覚醒にも効果が期待できます。

ただし、効果の強さがややマイルドになってしまいます。

エバミールの副作用

エバミールの最大のメリットは、肝臓への負担の少なさになります。

エバミールは他のお薬と違って、薬の代謝に肝臓が関与しないで済みます。お薬は通常、肝臓のCYPという酵素によって、酸化・還元されていきます。

そしてグルクロン酸などの水に溶けやすい物質に結合させて、尿や胆汁にとかして体の外に排出していきます。

エバミールでは、成分の大半が直接グルクロン酸抱合していきます。このため肝臓への負担が少ないのです。

他のお薬はCYPで代謝されていくので、エバミールとは相互作用を起こしにくいという特徴もあります。

エバミールの副作用としては、「眠気の持ち越し」と「ふらつき」があげられます。

いずれも作用がマイルドなので、副作用もマイルドではあります。

エバミールは作用時間としては睡眠時間の全体をカバーしてくれるのですが、朝方に残ってしまうと効果が持続してしまいます。

このためエバミールの効果が翌日に持ち越してしまい、朝方に眠気が残ってしまうこともあります。

またエバミールには、軽度の筋弛緩作用があります。このため高齢者などでは、夜中にふらつきがでてしまうこともあります。

また、睡眠中にのどの筋肉が弛緩して空気の通り道である気道を狭めてしまい、睡眠時無呼吸が悪化してしまうこともあります。

また高齢者では、せん妄を生じやすくしてしまうことがわかっています。

せん妄とは、一時的に意識が混濁して興奮してしまい、異常行動などをとってしまう状態です。

昼夜リズムが乱れたり、睡眠障害もせん妄の原因となりますが、ベンゾジアゼピン系睡眠薬はせん妄を悪化・誘発することがわかっています。

またエバミールは、長期にわたって服用していると依存してしまうことがあります。

常用量依存といって量が増えていくわけではありませんが、減らそうとすると不眠になってやめられず、漫然と服用が続いてしまうことが少なくありません。

エバミールの副作用頻度は、

  • 眠気(1.17%)
  • ふらつき(0.95%)
  • 倦怠感(0.59%)
  • 頭重感(0.40%)

となっています。(承認時及び使用成績調査での調査症例12,150例)

エバミール・ロラメットの剤形と薬価

エバミール・ロラメットのお薬としての特徴についてみていきましょう。

先発品としては、

  • エバミール1mg錠
  • ロラメット1mg錠

のみの発売になります。どちらも同じ先発品になります。

エバミール錠は、良い薬ではあるのですが処方されることが少なく、後発品であるジェネリック医薬品は発売されていません

それぞれの先発品の薬価は少し違いがあります。

  • エバミール1mg錠:14.1円
  • ロラメット1mg錠:15.8円
    ※2023年4月現在の薬価になります。

薬価の違いもあるためか、エバミール錠のほうがよく処方されています。

これに自己負担割合(1~3割)をかけた金額が、患者さんの自己負担になります。薬局では、これにお薬の管理料などが加えられて請求されています。

エバミールの用法と作用時間

エバミールの用法は、以下のようになっています。

  • 開始用量:1mg
  • 用法:1日1回就寝前
  • 最高用量:2mg

エバミールは1mgから開始していくことが一般的です。1mg~2mgの間で使っていくのが一般的です。

添付文章には、「症状や年齢により適宜増減するが、高齢者では2mgを超えないこと」とされています。

この表現では2mg以上処方が可能にも思えますが、エバミール2mgで効果不十分な場合は、より作用の強い睡眠薬に切り替えることが一般的かと思います。

エバミールは、基本的には空腹時で効果を発揮するように作られているお薬になります。

エバミールは健忘の副作用があるため、就寝直前に服用するようにしてください。

エバミールは即効性が期待でき、「服用まもなく効果が期待でき、気づいたら朝になっていた」というような効き目になります。

作用時間としては睡眠時間全体をカバーしてくれるため、入眠障害だけでなく中途覚醒や早朝覚醒にも効果が期待できます。

【参考】エバミールの半減期

お薬の効き方を見ていくにあたっては、

  • 半減期:血中濃度が半分になるまでの時間
  • 最高血中濃度到達時間:血中濃度がピークになるまでの時間

が重要になってきます。

エバミールは、

  • 半減期(T1/2):10時間
  • 最高血中濃度到達時間(Tmax):1.5時間

となっています。

エバミールの作用時間はバランスが良く、お薬の服用後ほどなく効果のピークがきて、朝方に体から抜けていくようになっています。

【参考】エバミールとアルコール(お酒)

エバミールの添付文章では、

眠気,注意力・集中力・反射運動能力等の低下を増強することがある。

となっており、併用注意とされています。禁忌というわけではありませんが、できれば控えるべきです。

アルコールとエバミールは、どちらも中枢神経を抑制する作用があります。併用することにより、脳の機能を落としすぎてしまいます。

エバミールとアルコールを併用することでの最大の問題は、

  • 双方に依存しやすくなってしまう

という点になります。

睡眠薬のエバミールとアルコールは、近しい作用があります。このため、エバミールもアルコールもすぐに身体に慣れてしまい、効果が悪くなってしまいます。

このことを耐性といい、同じ量では効かなくなってしまいます。

体からお薬やアルコールが抜けると心身の不調が認められて、精神的にも依存してしまいます。

このように、心身に依存が形成されてしまいます。

ですから、エバミールを服用しながらの習慣的な飲酒はできるだけ避けるべきです。

飲み会などの機会飲酒であれば、時間を空ければエバミールを使うことはできます。

エバミールと他剤の作用時間と強さの比較

エバミールは、脳の機能を低下させることで催眠作用をもたらします。このようなタイプのお薬の効果は、作用時間によって考えることができます。

作用時間によって、大きく4つのタイプに分けられています。

  • 超短時間型:効果のピークは1時間未満、作用時間は2~4時間
  • 短時間型:効果のピークは1~3時間、作用時間は6~10時間
  • 中間型:効果のピークは1~3時間、作用時間は20~24時間
  • 長時間型:効果のピークは3~5時間、作用時間は24時間~

もう少し詳しくみていくと、以下の表のようになります。

睡眠薬の作用時間と最高用量についてまとめました。

作用時間の違いごとに睡眠薬としての強さの違いを、最高用量で比較してみましょう。

  • 超短時間型:効果のピークは1時間未満、作用時間は2~4時間
    (ハルシオン>アモバン>マイスリー≧ルネスタ)
  • 短時間型:効果のピークは1~3時間、作用時間は6~10時間
    (レンドルミン≧デパス≒エバミール/ロラメット>リスミー)
  • 中間型:効果のピークは1~3時間、作用時間は20~24時間
    (サイレース/ロヒプノール>ベンザリン/ネルボン>ユーロジン)
  • 長時間型:効果のピークは3~5時間、作用時間は24時間~
    (ドラール>ベノジール/ダルメート≒ソメリン)

ベンゾジアゼピン系の中でのエバミールの位置づけ

ベンゾジアゼピン系のうち、エバミールに近い睡眠薬としては、

  • デパス(一般名:エチゾラム)
  • レンドルミン(一般名:ブロチゾラム)
  • リスミー(一般名:塩酸リルマザホン)
  • サイレース/ロヒプノール(一般名:フルニトラゼパム)

この4種類が挙げられます。

強さで序列をつけると、

  • サイレース/ロヒプノール>レンドルミン≧デパス≒エバミール/ロラメット>リスミー

このような印象です。

エバミール/ロラメットは肝臓への負担が非常に少なく、高齢者や肝機能障害の方に使いやすいお薬

サイレース/ロヒプノールは、現在発売されている睡眠薬の中でも、最も強い睡眠薬といっても過言ではありません。

デパスは安定剤や肩こりの治療薬として使われることも多く、抗不安作用と筋弛緩作用が強いです。

リスミーは、効果のマイルドな睡眠薬になります。

エバミールの副作用の対処法

睡眠薬では、作用時間によって注意すべき副作用が異なります。

  • 作用時間が長い睡眠薬・・・眠気・ふらつき
  • 作用時間が短い睡眠薬・・・健忘・依存性

作用時間が長いということは、薬が身体に少しずつたまっていくことにつながります。

睡眠薬の眠気が翌朝に残ってしまったり、筋弛緩作用が日中に働いてしまうことがあります。

それに対して作用時間が短い睡眠薬は、薬が急激に作用するということになります。

このため中途半端な覚醒状態となってしまって健忘(物忘れ)が認められたり、お薬の急激な変化に体が慣れようとしてしまうことで、依存が成立してしまうことがあります。

エバミールは作用時間はやや短いお薬ですので、健忘や依存性が認められることがあります。

それだけでなく、翌朝に眠気を持ち越してしまったり、ふらつきの副作用も可能性があります。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

エバミールと眠気

睡眠薬は、効果が翌朝に残ってしまうことがあります。作用時間が長いお薬ほど、眠気や倦怠感が残りやすくなってしまいます。

エバミールは、睡眠薬の中では作用時間が短いほうのお薬ではあります。ですが睡眠時間全体にわたって作用しているため、翌朝に眠気が残ってしまうこともあります。

睡眠がしっかりとれていても眠気が残るようであれば、エバミールによる眠気の翌朝への持ち越しの可能性が高いです。

その場合の対処法としては、

  • お薬の量を減らす
  • 他の睡眠薬に変える

があります。

エバミールと健忘

睡眠薬を服用した後に、記憶がなくなってしまうという副作用が生じることがあります。

記憶はなくなっているというと怖いかと思いますが、周囲からみると普通にいつも通りのあなたの行動をとっています。

友達に電話していたり、お菓子を食べ散らかしていたりといったことで、翌朝になってその痕跡をみつけてビックリします。

このような「物忘れ」を、「前向性健忘」といいます。睡眠薬を服用して、それ以降(前向き)の記憶を忘れてしまうのです。

このような状態になるのは、睡眠薬が中途半端な覚醒状態にしてしまうことで、海馬を中心とした記憶に関する脳の機能が低下してしまうためと考えられています。

ですから前向性健忘は、睡眠薬が急激に作用する時に起こりやすい副作用になります。

エバミールは作用時間がやや短いですが、作用はそこまで強くありません。

ですから健忘の副作用はそこまで多くないですが、認められる可能性はあります

健忘の対策としては、

  • 寝る直前に睡眠薬を服用すること
  • 絶対にアルコールと一緒に睡眠薬を飲まない

になります。

それでも認められる場合は、

  • 薬の量を減らす
  • 作用時間の長い睡眠薬に変更する

このようにしていきます。

エバミールと依存性

睡眠薬は、長期間服用していると体に慣れてしまいます。

そして睡眠薬をやめてしまうと不眠が悪化して、やめられなくなってしまうことがあります。

エバミールは作用時間は比較的短く、体に慣れやすい特徴があります。ですが作用自体はそこまで強くないため、依存性が高いとまではいえません

ですが漫然とエバミールを服用していると、依存してしまうことがあります。

エバミールは常用量依存と呼ばれる状態になることが多く、エバミールがないと睡眠が不安定になってしまいますが、効かなくなって量が増えていくことは少ないです。

ですから、漫然とした長期的に使用は避けなければいけません。

依存性の対策としては、

  • 睡眠に良い生活習慣を意識する
  • できるだけ少量・短期間で使う
  • アルコールと一緒に服用しない

ことがあります。

睡眠薬の依存を心配されている方は少なくありませんが、皆さんが何気なく摂取しているアルコールに比べたらマシです。

毎日晩酌を楽しむお父さんがアル中になることはないですし、飲み会のたびに潰れている若者がアル中になるわけではありません。

睡眠薬の用法と用量を守って服用していれば、過度に心配することはありません。

エバミールの反跳性不眠(離脱症状)と減薬方法

エバミールは長期間にわたって使っていると、お薬があることに身体に慣れてしまいます。

その結果、お薬としての効果は薄れているのに、薬を減らすと不眠が強まってしまうことがあります。

このような状態を反跳性不眠といいます。睡眠薬の離脱症状とも言えます。

「睡眠薬がないと眠れない」と勘違いしてしまうことが多いのですが、薬がやめられないのは反跳性不眠が原因であることも少なくありません。

このような状態になると、睡眠薬の量は増えないけれどもやめられなくなってしまいます。

このことを、常用量依存といったりします。

エバミールは短時間作用型の睡眠薬になりますが、作用時間が短い睡眠薬では、反跳性不眠は起こりやすいです。

しかしながら作用自体はそこまで強くないため、特に目立つわけではありません

ですが以下の図のように、以前にもまして不眠が強まってしまうこともあり、エバミールをなかなかやめられなくなってしまうことがあります。

睡眠薬の離脱症状である反跳性不眠について、概念をまとめました。

このためエバミールは、いきなり中止することは困難です。まずは、

  • 少しずつ減量していく

が基本となります。0.5mg~1mgずつ減量していくことが多いです。

自信を失わないことが大切ですので、エバミールを減量して寝付けない場合はベッドで粘ってはいけません。

すぐにあきらめて、元の量になるようにお薬を追加で服用して就寝してください。眠れるタイミングをみて、少しずつ減量していきます。

減量が困難なときは、

  • 作用時間が長い睡眠薬に変更していく

ことを考えていきます。併用しながら少しずつシフトしていきます。

作用時間が長い睡眠薬は身体からゆっくりお薬の成分が抜けていくので、離脱症状が少なくなります。

睡眠によい生活習慣を心がけることが大切

エバミールを使っていくにあたっては、睡眠習慣を見直すことも重要です。

睡眠習慣と合わせて取り組むことで、睡眠薬だけに依存することなく不眠の改善を行っていきましょう。

ここでは特に、睡眠薬の使い方に関係する部分についてお伝えします。不眠で寝付けないとき、多くの方が間違った対処法を行っています。

  • お酒に頼る
  • なるべく早く寝る

この2つは不眠を悪化させてしまいます。お酒は寝つきを一時的に良くしてくれますが、睡眠の質を落としてしまいます。

また、なるべく早く寝てベッドで粘っている方もいらっしゃいます。

ベッドでゴロゴロして眠れない時間をすごすことは、「なかなか眠れない」という失敗した認知を強めてしまいます。

むしろ睡眠時間は、ギリギリまで絞ってしまったほうがよいです。そして眠れないときは、粘らずに睡眠薬を使ってしまったほうが不眠はよくなります。

睡眠時間を5~6時間にしぼってデッドラインを設定し、その時間までは自然な眠気が生じたらベッドに入るようにしていきます。

その際にお薬を使っていただき、それでも眠れなければ頓服をすぐに使ってください。

このようにして、ベッドに入れば眠れるという認知を作っていくことが大切です。

その他にも、睡眠に良い生活習慣があります。

睡眠に関する正しい知識を理解して、生活で取り入れられることは意識していくことが大切です。

詳しく知りたい方は、不眠症(睡眠障害)のページをお読みください。

エバミールの運転への影響

睡眠薬は、原則的にすべてのお薬が運転や危険作業が禁止となっています。

これは眠気やふらつきなどの副作用が生じる可能性があるためです。

そういったリスクがある以上は、製薬会社も「運転禁止」とせざるを得ませんでした。

エバミールの添付文章でも同様に、

本剤の影響により、眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること。

という表現となっています。

しかしながら、不眠のままで運転する方が悪影響があるかもしれませんし、薬を服用したら運転禁止とするべきかは悩ましいところです。

運転できないことが、社会生活の妨げになってしまうこともあります。

自己責任にはなりますが、お薬を服用しながら運転されている方もいるのが実情です。ただし、

  • はじめて使ったとき
  • 他のお薬からの切り替えをしたとき
  • 量を増減させているとき
  • 体調不良を自覚したとき

は無理をせず、運転は控えていただいたほうがよいです。

エバミールによって眠気が翌朝に残るようであれば運転は行わず、主治医と相談して作用時間の短い睡眠薬への変更を検討してください。

エバミールの妊娠・授乳への影響

エバミールの妊娠への影響を見ていきましょう。エバミールのお薬の添付文章には、

妊婦(3 ヵ月以内)又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。

このように記載されています。

妊娠への影響を考えていくにあたっては、

  • 奇形をおこしやすいか(催奇形性)
  • 薬の成分が胎児に届くことによる影響

を考えていく必要があります。

エバミールなどの睡眠薬はこれまで、口唇口蓋裂のリスクが高くなるといわれていました。

しかしながら因果関係がないとする報告もなされており、奇形を引き起こすリスクは低いと考えられています。

エバミールは出産後に気を付ける必要があり、出生直後に赤ちゃんに離脱症状が生じてしまうことがあります。

また、赤ちゃんに鎮静作用が強くでてしまい、生まれた後に元気がないこともあります。産科の先生にお伝えしておけば、過度に心配しなくても大丈夫です。

次に、エバミールの授乳への影響をみていきましょう。エバミールのお薬の添付文章には、

授乳婦への投与は避けることが望ましいが、やむを得ず投与する場合は授乳を避けさせること。

このように記載されています。

しかしながら授乳についても、明らかなネガティブな報告はありません

母乳で育てることは、赤ちゃんにも非常に良い影響があるといわれています。

生後まもなくは頻繁に授乳することになるので、睡眠薬は使わない方が多いです。

落ち着いてきたら、ご自身の判断で服薬を再開される方もいらっしゃいます。

母乳を通して赤ちゃんにエバミールの成分が伝わってしまうことは、動物実験で確認されています。エバミールを服用しながら母乳で育てていく場合は、赤ちゃんがわずかにエバミールを服用しているのと同じになります。

赤ちゃんにお薬の成分が伝わることで眠気が強まり、哺乳が不十分になることがあります。

乳児検診などで赤ちゃんの成長がとまってしまったら、注意していく必要があります。

エバミールの影響を少しでも減らすためには、服用してからの授乳間隔をあけていただく方が良いです。

具体的には、服用の直前に母乳を与えてください。

【参考】エバミールの作用機序

それではエバミールはどのようにして効果を発揮するのでしょうか。その作用メカニズムを詳しくお伝えしたいと思います。

エバミールは、ベンゾジアゼピン系に分類されるお薬です。

睡眠薬として現在よく使われているのは、非ベンゾジアゼピン系とベンゾジアゼピン系がありますが、この両者はどちらも基本的には同じメカニズムによって睡眠効果が期待できます。

どちらもGABA-A受容体(ベンゾジアゼピン結合部位)に作用します。

それによってGABAの働きが強まり、脳の活動を抑えることで催眠作用をもたらします。

ベンゾジアゼピン結合部位には3つのサブタイプがあり、脳などの中枢神経にはω1とω2の2つが中心に分布しています。それらのサブタイプに対して、

  • ベンゾジアゼピン系:ω1+ω2
  • 非ベンゾジアゼピン系:ω1

として作用するという違いがあります。それぞれのサブタイプは、

  • ω1:催眠作用
  • ω2:筋弛緩作用・抗不安作用

が期待できます。

このためベンゾジアゼピン系は広く作用し、筋弛緩作用や抗不安作用があります。

そしてベンゾジアゼピン系のほうが耐性ができやすく(薬が同じ量で効かなくなる)、依存性に注意する必要があります。

【参考】GABAの作用機序と効果

睡眠薬は、GABAの働きを強めることで効果をもたらします。

GABAはリラックスさせる物質として、GABA入りのチョコレートなど食品でもアピールされたりしています。

食品やサプリメントとして摂取しての効果はエビデンスは乏しいですが、脳内ではGABAは重要な役割を果たしています。

GABAは神経伝達物質として、脳内での情報の受け渡しをしています。神経細胞の活動を抑える方向に働く、抑制性の伝達物質になります。

GABA-A受容体には、Cl-の通り道(イオンチャネル)があります。GABAはこのCl-
チャネルを開き、それによって神経細胞の中にCl-が入ってきます。マイナスのイオンが入ってくるので、細胞の中が電気的にマイナスになります。

神経細胞は、細胞の中が電気的にプラスになることによって興奮して活発になります。

このため電気的にマイナスになるということは、神経細胞が興奮しにくくなるということになります。

ですからGABAは、Cl-チャネルを開いて神経細胞の興奮を鎮める作用が期待できます。

なお、睡眠と覚醒に関わる物質を整理すると、以下のようになります。

睡眠に関係する脳内物質の関係をまとめました。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:エバミール・ロラメット  投稿日:2023年3月23日

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