非定型うつ病をセルフチェックする4つのステップ

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非定型うつ病は、うつ病の診断基準を満たしてはいるものの、その症状の特徴が従来のうつ病(定型うつ病)とは異なるうつ病のことを指します。

気分反応性という特徴があり、自分にとって興味のあることがあれば症状が軽くなるので、周囲からみれば怠けもの、自分勝手、未熟者などとみられがちです。病気の本人でさえ、自分の性格のせいだと考えがちになります。

しかしながら非定型うつ病は、その落ち込みはうつ病と診断されるほどに深いのです。そして自分の気持ちではどうしようもなく、身体の症状があらわれてしまいます。

ここでは、非定型うつ病を一緒にチェックしていければと思います。ときに性格と思い込まれている非定型うつ病を疑うきっかけになればと幸いです。

1.非定型うつ病をセルフチェックしていく上での注意点

非定型うつ病という「病気」に気づき、前向きに自分を見つめ直すためにセルフチェックをしてみてください。

まず最初に、非定型うつ病をセルフチェックしていく注意点をお伝えしていきたいと思います。

どの病気でも大なり小なりいえることなのですが、診断にはメリットデメリットもあります。「〇〇病」ということがわかることで、患者さんは自分が病人であることが決まります。今まで「性格かも?」「気のせいかも?」と思っていたことが、「症状」として治療されていくことになります。

そのことは、一時的な患者さんの逃げ道になり、心の安らぎが得られるかもしれません。しかしながら同時に、社会からのレッテルになることもあります。自分の中での言い訳になることもあります。

ですから心の病を診断していく時には、慎重に進めていく必要があります。診断することが患者さんにマイナスになるようでは、診断する意味がありません。

とくに非定型うつ病では、以下の3つの理由で診断は慎重にしていかなければいけません。

  • 非定型うつ病のイメージが悪い
  • 非定型うつ病は双極性障害と紛らわしい
  • 非定型うつ病の患者さんは拒絶過敏性がある

非定型うつ病の病気のイメージは、世間ではよくありません。メディアでは新型うつ病という言葉作られていて、非定型うつ病=新型うつ病として認識されています。非定型うつ病と診断することで、社会からのレッテルを張られる可能性があります。

また、非定型うつ病の診断は単純ではないのです。躁状態とうつ状態を繰り返す双極性障害という病気がありますが、そのうつ状態は非定型うつ病と症状が似通っていることがあります。

さらに非定型うつ病の患者さんは、拒絶過敏性という特徴があります。他人からの目を過度に意識し、否定されることに対しておびえています。非定型うつ病という診断すること自体に対して、否定的な捉え方をしてしまうことがあるのです。

これから非定型うつ病のセルフチェックという視点で記事をかいていきますが、どうか前向きな意味で「病気」に気づき、自分を見つめ直すきっかけにしていただければと思います。

2.非定型うつ病のチェック①-心の病気かどうか

自分がつらいか?周りがつらいか?どちらかが明確なとき、はじめて心の病気といえます。

まずはじめに、根本的なことから考えていきましょう。心の病気とは一体何なのかという根源的な問いです。

心の病気は難しいもので、何が正常で何が異常なのか、その線引きはとてもあいまいです。検査のように数字でわかるものでもありません。これをはっきりさせようと様々な心理検査などが作られていますが、完璧なものなどありません。

心の病気かどうか、それを決定するのは2つの要素です。

  • 自分がつらいか
  • 周りがつらいか

自分がつらくなくて周りも困っていないなら、それはあえて病気と捉える必要性すらないのです。例えば発達障害の中には、ある分野は非常に優秀なことがあります。その環境下で仕事をしていれば、何の苦悩も衝突も生まれないのです。

このことは診断基準にも明記されていて、

  • 本人に著しい苦痛があること
  • 社会的な職業的な障害があること

の2点が記載されています。

ですから、自分もそこまで困っていなくて、周囲ともある程度うまくやれているならば、過度に悩む必要はありません。現実的な解決策などをみつけていきましょう。

3.非定型うつ病のチェック②-うつ病かどうか

抑うつ気分か興味・喜びの喪失を必ず含み、うつ病に特徴的な症状を5つ以上認める場合、うつ病と診断されます。

アメリカの診断基準であるDSM‐Ⅴでは、非定型うつ病は2段階のステップで診断されます。

  1. うつ病の診断基準を満たすこと
  2. 非定型の特徴を認めること

ですから非定型うつ病は、うつ病のひとつのタイプという位置づけになります。まずはうつ病の診断基準から見ていきましょう。

  1. 以下の症状のうち5つ以上が2週間の間にほとんど毎日存在し、抑うつ気分か興味・喜びの喪失のどちらかがあること
    ①抑うつ気分
    ②興味・喜びの喪失
    ③体重減少・食欲減退または体重増加・食欲増加
    ④不眠または過眠
    ⑤精神運動焦燥または制止
    ⑥疲労感または気力減退
    ⑦無価値観または罪責感
    ⑧思考力低下・集中力低下・決断力低下
    ⑨希死念慮・自殺企図
  2. 非常に強い苦痛や社会的・職業的なデメリットがある
  3. 薬やアルコールやその他の病気のせいではないこと

抑うつ気分か興味・喜びの喪失のどちらかを必ず含めて、うつ病に特徴的な症状を5つ以上認められる必要があります。Bの項目をみていただくとわかりますが、本人か周囲が困っていることが大前提です。

4.非定型うつ病のチェック③-非定型の特徴があるか

気分反応性が認められ、体重増加・食欲増加、過眠、鉛様の麻痺、拒絶過敏性のうち2つ以上が認められると、非定型うつ病と診断されます。

うつ病の診断基準を満たしたうえで、非定型の特徴を満たすものを非定型うつ病といいます。それでは、非定型の特徴をみていきましょう。

  1. 気分の反応性がある
  2. 以下のうち2つ以上を認める
    ①体重増加・食欲増加
    ②過眠
    ③鉛様の麻痺
    ④拒絶過敏性が社会的・職業的なデメリットになっている
  3. メランコリーの特徴や緊張病の特徴を認めない

気分の反応性とは、基本的には気持ちが落ちこんでいる「抑うつ気分」が続いているのですが、何か良い出来事があると気持ちが持ち上がることをいいます。もちろん嫌なことがあれば、それに敏感に反応して気持ちは沈み込んでしまいます。

DSM‐Ⅴでは、気分反応性を必須の症状としています。気分の落差が大きいことが非定型うつ病の本質的な症状で、そのせいで物事の考え方や周囲との人間関係にも影響が及んでしまうという考え方に基づいています。

定型うつ病では食欲不振や不眠となることが多いのに対して、非定型うつ病では過食や過眠になることが多いです。

鉛様の麻痺とは、身体が鉛になったように重たくなり、起き上がれないほどの全身のだるさを感じます。

拒絶過敏性とは、他人からの批判や指摘に過度に敏感となっていて、ささいな一言に悪意を感じてしまったり、ちょっと叱られただけで自分の全てを否定されたかのように感じてしまいます。

5.非定型うつ病のチェック④-非定型の要因があるか

非定型うつ病の要素は、①女性②若い③不安気質④外傷体験⑤自己愛と自信のなさ⑥遺伝があげられます。

診断基準での診断は、文字面だけをおっていくと過剰診断になってしまうこともあります。非定型うつ病を発症しやすい要因がいくつか知られています。診断基準には含まれていませんが、この要因も含めてチェックした方が、より非定型うつ病かどうかを性格に見ていくことができます。

非定型うつ病の要因としては、主に以下の6つがあげられます。

  • 女性に多い
  • 若い人に多い
  • 不安になりやすい人に多い
  • 外傷体験を持つ人に多い
  • 性格傾向
  • 遺伝傾向

性格傾向と遺伝傾向を補足します。非定型うつ病の病前性格(病気になる前の性格)としては、以下があげられています。

  • 自信がない
  • 自己主張が苦手
  • 完璧主義で責任感が強い
  • 他人からの評価を気にする
  • プライドが高い
  • 優しい

自分に自信がなく他人に合わせて生きつつも、プライドの高さや完璧主義があります。このため、他人からの批判に対して弱いのです。

また、非定型うつ病の家族には、非定型うつ病の方が多いという報告があります。もちろん家族は養育環境や生活環境なども似ているので、非定型うつ病になりやすいという面もあるでしょう。しかしながら定型うつ病と比較しても、遺伝の影響は大きいという報告もあります。

詳しく知りたい方は、「非定型うつ病の原因と6つの要因」をお読みください。

まとめ

非定型うつ病という「病気」に気づき、前向きに自分を見つめ直すためにセルフチェックをしてみてください。

セルフチェックで自分が非定型うつ病かもしれないと感じ、自分がつらいと感じたり、周囲に迷惑が及んでいるならば、精神科や心療内科を受診して相談してください。

非定型うつ病の正確な診断は、精神科医の診察が必要です。診断基準や患者さんの背景を踏まえながら診断していきます。

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カテゴリー:非定型うつ病(新型うつ病)  投稿日:2023年12月31日

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