認知症で入院するときはどこにどうやって入院したらよい?

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認知症で著しい精神症状・行動異常がみられ、自宅や施設での介護が困難なとき、入院を希望するケースは少なくないはずです。
その際に、どこにどうやって入院したらよいのか、分からない人は多いのではないでしょうか?
本記事では、認知症で精神科病院の認知症治療病棟に入院する理由、入院させる方法、入院期間が長くなる理由、一般病棟に入院すると認知症が悪化する原因について解説します。
こちらでは、認知症で入院することの意味を理解していただくことを目的としています。
認知症で入院を検討する際に役に立ててみてください。

認知症で精神科に入院するのはなぜですか?

認知症により著しい精神症状・行動異常がみられる場合、一般病棟では対応が困難です。
それに対して精神科病院には認知症治療病棟があります。
精神症状・行動異常がみられ、自宅や施設での介護が困難な方、専門的な治療と手厚い看護を必要とする方が入院対象です。
たとえば認知症に伴って幻覚・妄想・せん妄・徘徊・異食などの症状がみられる場合です
生活機能回復訓練・作業療法などにより治療し、機能の改善を目指します。
ただし長期の療養を前提とするものではありません。

認知症の人を入院させる方法は?

家族が入院を勧めても、本人が嫌がるために入院できないことがあります。
認知症の方は、自分の症状を自覚していない場合が少なくありません。
ですから「私は認知症でないのに入院させようとする」などの理由で入院を拒否するわけです。
まず本人が入院を拒否する理由を聞き、十分に理解してあげてください。
そのうえで入院は、本人にとって価値のあるサポートを受けられること、本人のためであることを伝えましょう。
たとえば「知り合いの人で物忘れがひどくなり、病院で検査したら、脳に異常がみつかり、ちゃんと治療したら治ったそうよ」という類です。
重要な点は「大切だから受診してほしい」と伝えることです。

認知症の精神科の入院期間が長いのはなぜですか?

認知症で精神科に入院する場合、短期間の入院が前提です。
ただし状況によっては入院期間が長くなることがあります。
たとえば抗精神病薬などで落ち着かずに入院した場合、安定した後に薬物調整をすることもありますので日数を要します。
激しいBPSDの長期化、身体的な合併症のため、摂食機能が低下しており、入院が長期化するケースもあるでしょう。
退院後、地域に受け皿がなく、在宅療養ができない場合も少なくありません。
介護施設でも重度の認知症の方の対応は難しいのが現状です。
また遠方から入院してきた方も結構おり、退院調整時に家族となかなか会えず、難航することがあります。

入院すると認知症が悪化するのはなぜですか?

認知症の方が他の病気で一般病棟に入院すると、認知症の症状が悪化することがあります。
原因は以下のとおりです。

筋力が低下して動きにくくなる

入院中は大抵一日中ベッド上で暮らします。
そのため活動量が低下し、筋力が低下します。
体を動かしにくくなり、認知症が悪化することがあります。

環境の変化に適応できない

入院生活は場所・周囲の人などが日頃の生活と大きく異なります。
認知症の方は、環境の変化に適応できず、ストレスをかかえてしまいます。
入院中に>せん妄を起こす 認知症の症状が悪化することもあるでしょう。

認知症の入院費用は?

認知症で精神科へ入院する場合、1カ月の入院費用の目安は13~30万円です。
健康保険の自己負担率や入院環境によって大きく異なります。
費用の内訳は以下のとおりです。

  • 治療費
  • 差額ベッド代
  • 食費・病衣・リネンなどのレンタル料
  • コインランドリーなどの利用料
  • おむつ・肌着・シャンプー・歯ブラシなどの費用

認知症で入院できる施設は?

認知症で入院できる施設は以下の2種類です。

認知症疾患医療センター

もの忘れ外来、認知症の診断・治療、介護保険申請などをまとめて行っている医療機関です。
このうち基幹型とよばれる総合病院なら入院できます 大抵は病院内に精神科が設置されています。

認知症治療病棟のある病院

認知症による精神症状・行動異常が著しい方を対象に、専門的な入院治療と手厚いケアを行う病棟をもつ病院です。
大抵は精神科の病院ですが、認知症疾患医療センターで相談すれば紹介してくれるでしょう。
薬物療法の他、機能回復訓練などを行います。

まとめ

認知症で著しい精神症状・行動異常がみられ、自宅や施設での介護が困難な場合、一般病棟では対応が困難であり、入院するとかえって認知症が悪化することもあります。
専門的な治療と手厚い看護を行うために、精神科病院などの認知症治療病棟に入院するのが最適です。
本人が入院を嫌がる場合、本人にとって価値のあるサポートを受けられること、本人のためであることを伝えましょう。
入院期間は長期の療養を前提とはしていませんが、いろいろな理由から入院期間が長くなることがあります。
認知症を対象とする専門の医療機関で十分に相談し、入院を検討してください。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:認知症  投稿日:2024年3月19日

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