高齢者のうつ病の症状とは?家族の対応4つをわかりやすく解説します
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「親の表情がくらい」「親がふさぎこんでいる」このような悩みはありませんか?
これは高齢者のうつ病かもしれません。
仕事の退職や大切な人との死別などのライフステージの変化により、うつ病を発症するリスクが高まります。
高齢者のうつ病は自殺につながる可能性も高く、ご本人のつらさにできる限り早く気づいてあげることが大切です。
本記事では、高齢者のうつ病の症状や家族の対応をわかりやすく解説します。
高齢者のうつ病かも?と不安を感じるご家族の方のお役に立てれば幸いです。
高齢者のうつ病とは
65歳以上の高齢者の約15%はうつ状態、そのうち5%はうつ病であるとされており、高齢者のうつ病は決してめずらしい病気ではありません。
名称 | 状態 |
---|---|
うつ状態 | 一時的に気分が落ち込む状態 |
うつ病 | 精神的、もしくは身体的ストレスが原因で、脳がうまく働かない状態 |
高齢者の方々には以下のようなライフステージの変化があり、これらがうつ病のきっかけになることがあります。
- 仕事の退職
- 子どもの独立
- 大切な人やペットとの死別
- 病気の発症
- 体力のおとろえ
- 住み慣れたところからの転居(施設入所や子どもとの同居)
- 交流の機会の減少 など
長年勤めてきた仕事の退職や、子どもの独立などで、高齢者は「やりがい」や「生きがい」を一時的に失うことがあります。
そこから新たに別の趣味や生きがいなどを見つけられないと、段々とふさぎこんでしまい、うつ病になるリスクが高まります。
また、健康に関する不安、配偶者や友人など身近な存在との死別も、うつ病を発症させる原因となります。
高齢者のうつ病の症状
高齢者のうつ病は発見が遅れるリスクが高く、注意が必要です。
その理由は、典型的なうつ症状を示す人が3,4人に1人しかいないといわれているからです。
高齢者のうつ病では、一般的なうつ病の特徴である「気持ちが落ち込む」「悲しくなる」といった精神的な症状だけではなく、からだの不調を訴えることもよくみられます。
では、高齢者のうつ病の具体例をみてみましょう。
- 「あちこち痛い」「体がだるい」など身体的症状の訴えがある
- 「重い病気なのではないか」と過度に心配する(心気症)
- 通常うつ病でみられる「かなしい」「つらい」などの訴えが少ないことがある
- 記憶力や意欲の低下がみられる
- 「ものおぼえが悪くなった」「前みたいに歩けなくなった」などの訴えがある など
また、高齢者のうつ病は認知症と似た症状が出ることもあり、区別することが大切です。
高齢者のうつ病と認知症の違い
高齢者のうつ病は、もの忘れや思考力の低下など認知症と似た症状があり、診断が難しい場合があります。
高齢者のうつ病と認知症の違いを以下の表にまとめましたのでご覧ください。
高齢者のうつ病 | 認知症 | |
---|---|---|
症状の進行状況 | 短期間で症状が出ることが多い | ゆっくり進行することが多い |
気分の落ち込み | 悲観的になる、自分を責めることが多い | 自分を責めることは少ない |
もの忘れ | 突然思い出せなくなるが、もの忘れの自覚はあることが多い | ・軽度の段階からゆっくり進行することが多い ・本人に自覚がないことが多い |
症状の変動 | ・朝方調子が悪い ・夕方になるにつれてよくなることが多い |
日内変動は少ない |
医師の診察だけで十分に判断できない場合には、家族からの日常生活に関する情報が重要です。
気になる症状や行動は、できる限りくわしく医師へ伝えてみてください。
うつ病の高齢者をもつ家族の対応
うつ病の高齢者にとって、家族の協力が支えになります。
ここでは、うつ病の高齢者をもつご家族が知っておくと役立つ4つの対応を解説します。
一緒に病院に行く
できる限りご家族も一緒に病院に行くことをおすすめします
うつ病には診断基準がありますが、それだけでは正確に状態を判断することができないからです。
ご本人からの情報にあわせ、日常生活に関する家族からの情報が診断の助けになります。
具体例をみてみましょう。
- きっかけになった出来事の有無
- もともとの性格やライフスタイル
- 趣味や好きだったこと
- 現在の外出頻度
- できなくなっている家事や困っていること など
また、状態について医師から説明があってもご本人だけでは理解できないことがあるため、一緒に説明を聞いてあげましょう。
ご本人が「精神科」や「心療内科」の受診を拒む場合には、かかりつけの先生に相談してみることもおすすめです。
うつ病の場合、治療で症状が改善する可能性があるため、なるべく早めに医師へ相談してみてください。
ゆっくり見守る
ご本人の行動や言動をゆっくり見守ることをおすすめします。
うつ病の治療は若い人でも時間がかかりますが、高齢者の方だと治療の効果が出るまでさらに時間がかかる可能性があります。
「はやくよくなってね」「がんばってね」という言葉は不安を増長させたり、あせらせたりして症状を悪化させてしまうかもしれません。
ご本人の言動を、あせらずゆっくりとした気持ちで見守ってあげてください。
薬の副作用や症状の変化を医師へ伝える
薬の内容や量が変更になったときには、症状が変わったかどうかをご家族から医師に伝えるのが効果的です。
うつ病の高齢者の方は、薬の副作用や症状の変化を医師へ伝えることが難しい場合があります。
「今までなかった新しい症状が出た」「薬を増やしてから寝ていることが増えた」など気づいたことは、ぜひ医師へ伝えてください。
家族からの情報は、治療法を決める際の重要な判断材料です。
大切な判断が必要な場合は先延ばしにする
うつ病の症状がひどいときには、大切な判断を先延ばしにすることをおすすめします。
うつ病のときには判断力が低下し、いつもならしないような判断をしてしまうことがあるためです。
また「何かを決めなくてはいけない」ということがご本人へのプレッシャーやストレスとなり、うつ病の症状を悪化させるかもしれません。
ご本人のストレスになりそうなことはできるだけ避け、ゆっくり治療に専念できるよう見守ってあげてください。
高齢者のうつ病の治療
高齢者のうつ病の治療は、主に「薬物療法」と「精神療法」です。
それぞれをくわしく説明します。
薬物療法
高齢者のうつ病に対しても、若い方と同じように抗うつ薬を使用します。
しかし高齢者は若い世代と比べ、薬を処理するからだの機能が落ちている可能性があります。
そのため副作用が強く出る恐れがあり、注意が必要です。たとえば、眠気が強くなったり、のどの渇きが出ることなどです。
薬の量や種類は症状にあわせて調整します。症状が変わらなくて不安を感じたり、副作用の症状を疑ったりするときは、医師に相談してみてください。
精神療法
精神療法では、ストレスの要因への向き合い方や考え方を変える練習をしたり、リラックスする方法を習得します。
うつ病の治療の基本は「ゆっくり休むこと」です。若い世代の方は、ゆっくり休むことで症状が軽減されると日常生活に戻れるようになりますが、高齢者の方の場合は注意が必要です。
高齢者の方は、体をゆっくり休めすぎると、体力や体のあらゆる機能も落ちてしまいます。
そのため、精神状態がある程度落ち着いたら、医師に相談したうえで少しずつ体を動かしてみましょう。
高齢者でうつ病の症状が気になる方へ
高齢者のうつ病は認知症と思われたり、からだの不調とされたりして、発見するまでに時間がかかるケースも少なくありません。また高齢者のうつ病は自殺につながるケースも多く、注意が必要です。
高齢者のうつ病は、専門家の治療を受けることで症状の改善が見込めます。ご家族の症状で気になることがある場合には、認知症外来などを備えた精神科へご相談ください。
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