精神科訪問看護に必要な書類シリーズ第2弾~精神科訪問看護記録書Ⅱの書き方~
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「看護記録」は、看護師として働いている人であれば、誰でも作成したことがあるものではないでしょうか。
ただし、働いている医療機関によって、看護記録の書き方のルールは様々です。
今回は、精神科訪問看護における看護記録の書き方について解説していきます。
精神科訪問看護師が作成する看護記録の名称
訪問看護師が、ひとりの利用者に対して提供した訪問看護サービスについて記録する様式を「訪問看護記録書Ⅱ」と言います。
精神科訪問看護の場合は「精神科訪問看護記録書Ⅱ」といい、一般的な訪問看護記録とは、記載する項目が異なります。
厚生労働省から「訪問看護計画書等の記載要綱等について」という通達があり、精神科訪問看護実施時に記載する事項が示されています。
訪問看護記録を書くタイミングは?
訪問看護記録は、利用者全ての訪問が終わり、ステーションに戻ってから記載するルールになっている訪問看護ステーションの他、最近では、勤務中にタブレットやパソコンを貸与している訪問看護ステーションもございます。
タイムリーに訪問看護記録を作成することができれば、鮮明に記録を作成できますし、効率的ですよね。
ただし、個人情報となりますので、第3者に見られることがないよう、作成する場所には十分に注意しましょう。
精神科訪問看護記録書Ⅱに記載する内容
「訪問看護計画書等の記載要綱等について」に示されている「訪問看護記録書Ⅱ」の記載する内容として示されているのは、以下の項目です。
- 訪問年月日
- 訪問職種
- 病状・バイタルサイン
- 実施した看護・リハビリテーションの内容等
さらに、「精神科訪問看護記録書Ⅱ」については、次の項目を記載することが示されています。
- 食生活、清潔、排泄、睡眠、生活リズム、部屋の整頓等
- 精神状態
- 服薬等の状況
- 作業・対人関係について
- 実施した看護内容
精神科訪問看護では、利用者のセルフケアを充足できるように関ることが大切なため、食生活や睡眠、服薬の管理などセルフケアに関連した項目が記載できるような様式になっています。
初回の訪問時に必要なGAF尺度って?
令和2年度の診療報酬改定において、精神科訪問看護療養費の見直しがありました。
精神科訪問看護基本療養費を算定する場合「訪問看護記録書」「訪問看護報告書」「訪問看護療養費明細書」に月の最初の訪問看護時におけるGAF尺度により判定した値を記載することが必要となり、令和2年4月から適用となっています。
GAF尺度とはglobal assessment of functioning scoreの略で日本語では「機能の全体的評定尺度」と言います。
精神疾患患者の心理的、社会的、職業的機能を評価するために用いられるスケールで0~100点の数値で評価します。
読み方は「ガフ尺度」または「ギャフ尺度」と読みます。
このGAF尺度の評価が、その月の一番初めに訪問する際に必要となるわけです。
GAF尺度の評価方法は、別の記事で紹介するので、気になる方は、そちらの記事をご参照ください。
精神科訪問看護記録書Ⅱの書き方
ここからは、精神科訪問看護記録書Ⅱの具体的な記載方法について解説していきます。
記載例も載せているので、参考にしてください。
①必要事項について
利用者の氏名、訪問した者の氏名とその職種を記載します。
②訪問年月日
訪問年月日とその時間を記載します。訪問時間によって、請求する診療報酬が変わってくるので、正確な時間を記載しましょう。
③訪問先
訪問先に丸を付けます。訪問看護は、自宅だけではなく、施設に訪問するケースもあります。
④食生活、清潔、排泄、睡眠、生活リズム、部屋の整頓等
利用者の食生活、清潔、排泄、睡眠、生活リズム、部屋の整頓状況について記載します。
全て記載する必要はなく、利用者にとって介入が必要な項目や、その日の訪問時に自分が注目した項目を記載しましょう。
⑤精神状態
利用者の精神症状に関する内容を記載します。
⑥服薬などの状況
薬の管理状況や服薬に関するコンプライアンス状況等を記載します。
⑦作業・対人関係について
作業療法の介入をしている場合には、その時の利用者の様子を記載します。また、家族や看護師との関わりの様子等を記載します。
⑧実施した看護内容
利用者に提供した看護ケアの内容を記載します。医師から医療処置の指示があれば、その内容もこの項目に記載しましょう。
⑨備考
医師に報告した内容やその他記載する必要がある内容を記載します。
⑩GAF
GAF尺度は月初めの訪問時に記載します。月の2回目以降の訪問時には省略して構いません。ただし、利用者の状態が大きく変わった場合には、GAFの評価を行い、記載しておくと良いでしょう。
⑪次回の訪問予定日
次回の訪問予定日を記載します。
さいごに
大前提として、訪問看護を提供するにあたり、作成している訪問看護計画書にある利用者の目標や問題点に沿ったサービスを提供します。
自分が初めて利用者に訪問する際には、訪問看護計画書の内容をしっかりと確認しておきましょう。
精神科訪問看護記録は、看護師が利用者に対して実施した観察やサービスの証となります。継続した看護の提供の為、万が一事故があった時に自身の身を守る為、診療報酬を請求する上でも重要な書類です。
特に、訪問看護では、利用者と1対1のサービス提供になることが少なくありません。
訪問看護記録の記載方法をしっかりと理解し、適切な記録を記載することが大切と言えるでしょう。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:訪問診療/訪問看護 投稿日:2023年11月3日
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