精神科・心療内科の受診のイメージと流れ

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メンタルクリニックへの受診は敷居が高い?

精神科や心療内科というと、どこか怖いイメージや周囲にばれたくないという思いが働く方も多いかと思います。

それでも最近は心の病に対するイメージがだいぶ和らいできて、精神科や心療内科にも受診しやすくなったと思います。中には、受診に対してまったく抵抗感がない方もいらっしゃるかと思います。

ここでは、受診を考えている方に、すでに受診予約を待っている方に、精神科や心療内科の受診についてお伝えしていきます。精神科や心療内科の予約から受診に至るまでの流れを見ていきながら、ひとりでも多くの患者さんが「早く相談してよかった」と思える一助になれればと思います。

 

精神科・心療内科の受診は怖くない!

精神科や心療内科に受診するというと、内科や外科とは違って怖いと感じる方も多いと思います。

「私はどんな診断をされてしまうのかな?」
「まわりには精神病の人がいるのかな?」
「先生はどんな診察をするんだろう?」

そんな思いで心配されている方も多いのではないでしょうか?さらには、

「周りの人からメンタル病んでるって思われるのかな?」
「知っている人に見られたらどうしよう?」

このように、周囲の目を気にされる方も多いかと思います。心の病気の領域には、いまだに多くの偏見があります。スティグマ(烙印)といわれますが、この人は精神科の患者さんというレッテルを張られてしまい、周りの人の評価や態度が変わってしまうことも未だに少なくありません。

それでも昔よりはだいぶそのスティグマは薄れてきています。昔は精神科の患者さんというと、「精神異常者」という偏見の目にさらされました。良くも悪くもですが、「うつは心の風邪」というキャッチコピーとともに、心の病は多くの方に認識されつつあります。

しかしながら、心の病に対する偏見はまだまだ存在します。その点を配慮して、精神科のクリニックの多くは「心療内科」をかかげています。心療内科の本来の意味は全く異なりますが、実質的には精神科も心療内科も同じです。

海外では、心のメンテナンスは当たり前のことという認識になっています。そして精神科や心療内科に一度でも受診していただければわかるかと思いますが、患者さんの多くはごくごく普通のサラリーマンや主婦、学生などです。

精神科や心療内科の受診は全く怖くはありません。これから、受診の流れを追っていきながら、診察までの雰囲気をお伝えできればと思います。

受診時での周囲の方への対策

精神科や心療内科を受診するときに、周囲の方にどのように伝えればよいのか悩まれる方が多いです。「気持ちが落ちこむことが多いから受診します」みたいに、ストレートにはなかなか言えない方が多いと思います。

まわりには隠れて受診している方も多いです。「万が一バレてしまったら、なんて言えばいいですか?」というように聞かれることもあります。

このように意識せざるをえないのは、スティグマが根深い証拠なのですが、現実的にはそうはいっていられません。対策を考えていきましょう。

精神科や心療内科の受診を伝えざるを得ない時は、「最近眠れなくて・・・」がスムーズかと思います。睡眠に関しては精神科や心療内科が専門ですので、受診する理由としては何らおかしくありません。

不眠に悩んでいる方はとても多いですし、精神の病気という認識はあまりありません。さらに言えば、日本人は不眠を美徳とするようなところがあります。眠れない=頑張っていると感じるのでしょう。ですから周囲には、睡眠の問題で受診しているといってしまえば大丈夫です。

精神科・心療内科の受診時の決まり事

精神科や心療内科では受診時に、多くの病院で共通している決まり事が2つあります。

  • 予約制が基本であること
  • 転院するときは紹介状を持参すること

順番にみていきましょう。

 

予約制が基本

精神や深慮内科では、予約制をとっているところが非常に多いです。どうして予約制をとっているのかというと、精神科や心療内科の診察には時間がかかることが多いからです。

とくに初診は予約であることが多いです。初診の患者さんでは、多くの場合30分以上診察に時間がかかります。まずはじめにおおまかな診断をつけて、方向性をみつけて治療を始めていく必要があります。

心の病は「いま現在」だけではなく、「時間の中での経過」も重要です。症状だけでなく生い立ち、現実的な悩みなども把握する必要があります。

本人が問題意識をもっていなかったとしても、問題が隠れていることもあるのです。

例えば不眠症では、患者さんは眠れないことだけが問題と思っている方もいらっしゃいます。「睡眠薬がもらえればそれでいい」そう思って受診される方もいます。しかしながらその背景には、他の心の病気が隠れていることもあります。

このように診察に時間がかかってしまうので、精神科や心療内科では予約制が基本になっているのです。

なかなか受診予約がとれなくて困っている患者さんもいらっしゃるかもしれませんが、診察の質を保つには予約制は重要なのです。

初診について詳しく知りたい方は、『精神科・心療内科の初診を充実させるためには?』をお読みください。

転院の際には紹介状が必要

もうひとつの受診時の決まり事は、転院の際には紹介状が必要であることです。その理由としては、以下の4つがあげられます。

  • 転院したいという心の動きも含めて治療であることがあるため
  • これまでの病気の経過は患者さんにとって財産であるため
  • 入院施設での治療が望ましいケースがあるため
  • 薬に依存しているケースがあるため

転院と紹介状について詳しく知りたい方は、『精神科・心療内科の転院では、なぜ紹介状が必要?』をお読みください。

診察(初診と再診)の実際

精神科・心療内科の診察というと、「話をきいてくれる」と思っている患者さんが多いかと思います。ごくまれにイメージ通りの先生もいらっしゃいますが、多くの病院やクリニックではイメージと違うかと思います。イメージのギャップのせいで治療を中断してしまうことのないように、精神科・心療内科の初診と再診の実際をお伝えしたいと思います。

初診は30分~40分ということが多いかと思います。どんなにシンプルな病歴の方でも、少なくとも15分はかかると思います。初診では多くのことを聞かれます。初診で全部話しきれない場合は、必要に応じて話を分けてお聞きしていきます。

初診のイメージは、患者さんのイメージ通りであることが多いです。イメージのギャップが生じるのは再診のときです。再診は5分~10分になります。「話をきいて欲しい!」と思っている患者さんには、期待外れに感じてしまうでしょう。

基本的に病院やクリニックでは、「話を聞いてくれるところ」ではありません。お薬を中心に治療をしていき、日々の悩みごとに対して少しずつアドバイスが重ねていくというイメージです。

短い時間でもしっかりと聴いてくれて、患者さんの状態を見抜いて的確なアドバイスをしてくれる先生もいます。最終的には患者さんが自立していくことを目指すのならば、長く聞くことが必ずしも治療的でないこともあります。聞くことが大事なのではなく、聴くことが大事になります。

精神科・心療内科での検査

身体の病気で病院に受診するときは、何かしらの検査があっても不思議には思わないでしょう。精神科や心療内科を受診するときには、検査をすることになると思って受診されている患者さんは少ないと思います。

「本当に検査が必要なの?」「どうして検査が必要なの?」

と疑問に思われるかと思います。どんな検査を行うのか、またその意義をお伝えしたいと思います。精神科・心療内科受診時の検査としては、以下のようなものがあります。

  • 血液検査
  • 心電図
  • 心理検査(CES-D・STAIなど)
  • 性格検査(YG・TEG・バウムテストなど)
  • 発達検査(AQなど)

それぞれの意義についてみていきましょう。

身体の検査

血液検査では、身体の病気がないかを確認していきます。とくに精神科の患者さんでは、2つの病気に注意します。

  • 糖尿病(HbA1c・FBS)
  • 甲状腺機能異常症(TSH・T3・T4)

精神科のお薬は、糖代謝に影響を与えてしまうものが多いです。なかには「糖尿病患者さんには使用が禁止!」となっているお薬もあります。また、甲状腺機能は気分に大きな影響を与えます。

そして精神科の薬は、長期にわたって使っていくことが多いです。薬を使うに当たって、肝臓や腎臓などの機能が正常かどうか、確かめる必要があります。これらの臓器は薬を分解して体外に排泄するので、機能が落ちていると薬が身体にたまりやすくなります。

心電図も、場合によって必要です。抗うつ剤や抗精神病薬など精神科のお薬では、心臓に影響を与える薬があります。

心電図のなかでも、QT時間という部分をみていきます。薬の副作用でQT時間が延びてしまうことがあるためです。QTが延長すると、ときに重度の不整脈が出現することがあります。

血液検査や心電図などの検査は、健康診断を受けている方はまた受けなければいけないのかと思うかもしれません。念のため行うかどうかは病院の方針によりますが、自己責任の上で省略することもあるでしょう。ただし甲状腺機能は通常の健康診断では測定しないので、必要に応じて測定します。

心の検査

精神的な症状に対しても、検査があります。心理検査としては様々なものがあるのですが、ここではよく行う心理検査をご紹介します。

大きく分けると、心理検査と性格検査を行います。

心理検査としては、

を行います。どちらも患者さんが自分で記入していくことで評価する検査です。CES-Dは落ち込みの程度を見る検査で、STAIは不安の程度を見ていく検査です。

参考程度ではありますが、比較していくことで症状の変化を見ることができます。患者さんがよくなった実感がない時に心理検査を実施してみると、「意外とよくなっているんだ」と実感できることもあります。

性格検査としては、

を行います。こちらも患者さんが自分で記入していく検査です。YGやTEGは質問紙に記入して、性格傾向を見る検査です。バウムテストは投影法といって、実のなる木を書いていただくことで内面を投影し、専門家が解釈する検査です。

それ以外にも発達検査として、

などを行うこともあります。

これらの心理検査が代表的ですが、なかには1~2時間かかる検査もあるので、そのような検査は行える医療機関が限られます。

まとめ

ここまで、精神科・心療内科の受診のイメージと流れをご紹介してきました。

精神科や心療内科は、決して怖い所ではありません。メンタル不調や深い悩み事を抱え過ぎず、早めに相談してほしいという思いからこの記事を作成しました。

精神科や心療内科に受診するときのイメージをしっかりもって、納得して治療をうける一助になればと思います。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:精神科について  投稿日:2020年8月9日

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