【専門家が解説】SDS(自己評価式抑うつ性尺度)

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SDSとは?

SDS(Self-rating Depression Scale)は、日本語では自己評価式抑うつ性尺度と呼ばれています。

SDSは患者さん本人が20の質問に答えていく心理検査で、うつの程度を客観的に数値化することができます。

主観的な心理検査なので、SDSの結果でうつ病が診断できるわけではないのですが、症状の程度を推測することができますし、治療効果の判定にも生かすことができます。

SDSの原案を作ったのは、デューク大学に在職中の臨床医であったW.W.W.K.Zung教授です。日本においては1965年に福田一彦、小林重雄氏らで、日本語版の作成に至りました。

1965年から大幅な改定もあまりされていませんが、古くなるということもなく妥当性を得られている検査なので、いまだに多くの医療機関の心理検査として実施されています。

SDSの目的

SDSの目的は、抑うつ傾向の度合いを数値化することによって客観的に判断することです。

SDSはうつ症状による心身両面の特徴的な症状を質問していますので、点数の高さである程度の状態判断をすることができます。

正常群・神経症群・うつ病群の3群に分けた場合の、平均点と標準偏差は下記になります。

SDSの検査結果の違い

このようにうつ病の患者さんでは、SDSの結果が明らかに高くなります。

またSDSは検査が簡便で、比較的時間が短くて済む検査です。そのため、うつ状態で自分の状況をうまく言葉で説明できないような状況でも、検査をすることができます。

SDSの料金

SDSは、健康保険が使える心理検査の一つです。

認知機能心理検査に分類され、SDSは簡易検査に分類されます。心理検査は、その検査の複雑さによって料金が異なるため、簡易検査であるSDSは80点(800円)となっています。

これに自己負担割合がかけられますので、3割負担の場合は240円になります。

自由診療で行っている医療機関やカウンセラーが私設で行っているような場合は検査料金がセットで組み込まれているケースが多いですが、各機関によってシステムや考え方はまちまちです。

気になる場合は、直接確認されたほうが良いかと思います。

SDSの検査・採点方法

SDSは20問の心理検査になります。それぞれの設問に対して3段階に分かれており、当てはまるものに〇をつけます。

うつ症状の診断基準に基づいた質問で、10項目ずつの陽性項目と陰性項目(得点が逆転する項目)が不規則な順番で配置してあります。

応答欄の3段階は、

  • ないorたまに=1点
  • ときどき=2点
  • かなりのあいだ=3点
  • ほとんど=4点

になっています。

SDSの最低点は20点、最高点数は80点になります。Zungはうつ病のカットオフポイントを40点として、

  • 40~47点:軽度
  • 48~55点:中等度
  • 56点~:重度

中等度以上では治療が必要と提唱しました。後述しますが、うつ病の患者さんの平均点は60点となっています。

主に成人の男女を対象としていますが、中学生以上でも検査は可能です。時間制限はありませんが、10~15分で記入できることが多いです。

自己評価式となっていますが、ここでいう自己評価式とは自己回答、自己記入を意味しており、採点等は検査を担当している人が行います。記入が終わりましたら、受付にお渡しください。

SDSでわかること

SDSでわかることは、うつ症状の程度です。

日本語版SDSを作成するにあたり、正常群、神経症群、うつ病群の総得点の差を調べた結果をご紹介します。

SDSの病気ごとの平均点の違いをまとめました。

SDSの平均得点では、正常対象群は35、神経症群49、うつ病群60となっています。男女ともに、正常対象群<神経症群<うつ病群の順に1得点が高くなりました。

男女差は神経症群でのみ認められ、女子のほうが男子より有意に得点が高い傾向がみられました。

このようSDS は、うつ病の程度を知るための心理検査です。多くのサンプルから妥当性を検証した心理検査のため、うつ症状を客観的に判断する材料の一つとして使用することができます。

SDS検査は治療経過の評価にも効果的

うつ症状を呈して医療機関に出向いた場合、心理検査を行うケースが多いです。

SDSの結果でうつ症状の度合いが高ければ、診断の参考として治療をすすめていきます。

薬物治療や精神療法など、患者さん本人に合う治療を行っていきます。また環境調整や人間関係のアドバイスなどをしていきます。その治療経過を評価することにも使うことができます。

先ほどのうつ病患者の中から20名、神経症患者からの25名、症状が良くなった人たちに再検査を行いました。うつ病患者では58.4%から35.4%になり、神経症患者では52.4%から34.4%へ平均得点が下がりました。

当たり前かもしれませんが、SDSの結果は治療経過で改善が認められます。本人の自覚が乏しいときに再検査を行うと、意外と改善している部分に気づけることもあります。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:心理検査  投稿日:2019年5月13日

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