リワークで行う集団認知行動療法とは?うつや不安に効果的なプログラムを解説

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集団認知行動療法

リワーク利用を検討している方の中には、「集団認知行動療法」という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
集団認知行動療法は、リワークで広く行われているプログラムであり、復職後の再発予防に効果があるとされています。

しかし、具体的にどのようなことを行うのか、なぜ効果があるのかよく分からないことも多いでしょう。
今回は、集団認知行動療法について、特徴や有効性、メリットについて解説します。
リワーク利用を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

認知行動療法とは?

集団認知行動療法とは?

集団認知行動療法について説明する前に、認知行動療法とは何かを解説します。
認知行動療法とは、極端な考えや行動を見直すことによって困りごとを解決していくアプローチを指します。

落ち込んでいるときにはネガティブな側面ばかりに注意が向きがちです。
そして、ネガティブに考えていると気持ちも落ち込んできて、動くことが億劫になってくるかもしれません。
このように、考えや気持ち、行動は互いに関連し合います。

認知行動療法は、自分の考え方がどんな特徴を持っているかを知り、距離をとれるように取り組むことが特徴です。
例えば、職場の人間関係にうまく馴染めない場合を考えてみましょう。
職場の同僚が楽しそうに話しているのを見て悲しくなる」という困りごとがあれば、どう考えて悲しくなるのか、その結果どんな行動を取るのかを考えます。

自分は内気だから、楽しそうに話せない」「自分は仕事で結果を残せていないから会話に入る資格がない」などさまざまな考えがあるでしょう。
こういった判断をネガティブな情報だけでしてしまっていないかを検討していきます。

認知行動療法で考え方の癖を見直し、行動を改良していくことで、ストレス耐性が高まる効果が見込まれます。
そのため、復職後の再発予防効果が期待できるのです。

集団認知行動療法のメリットとは?

集団認知行動療法のメリット

復職後の再発予防に役立つ認知行動療法ですが、集団で行うことにどのようなメリットがあるのでしょうか。

同じ症状の人がいて安心できる

同じ症状のメンバーと交流し、お互いに励まし合いながら取り組める点がメリットの1つです。
集団認知行動療法では、一人ひとりの考え方を発表してもらい、共有する機会がもうけられていることがあります。

メンバー同士で悩みを共有することで、「このように考えてしまうのは自分だけではない」と安心でき、前向きに治療に取り組んでいけるでしょう。

他の人の考えを参考にできる

考え方を共有することで、「こんな考え方もあるのか」と新しい視点に気づけることもメリットだといえます。
一人で考え方を見直そうとしても、他の視点に気づくことは簡単ではないでしょう。

他のメンバーの考え方をモデルにして取り入れていくことで、柔軟な考え方ができるようになる効果があります。

金銭的な負担を抑えられる

集団認知行動療法は、個別で受けるものよりも費用が抑えられるという点もメリットです。個人で受ける認知行動療法は、医療保険がきかず、自費で料金を取っているところが多い傾向があります。一部、3割負担で受けられる場所もありますが、数少ないのが現状です。

自費診療の場合、30~50分で3000~7000円ほどかかることが多く、毎週受けるとなると大きな負担となります。集団認知行動療法は、リワークで行われることが多いため、制度を利用して利用料を抑えれば、個人で受けるよりも安く受けられます

認知行動療法を受けてみたいけど、料金が高くて迷っている」という方にもおすすめできるプログラムです。

集団認知行動療法ではどんなことを行う?

集団認知行動療法で行うこと

リワークで行われる集団認知行動療法では、どのような内容を行い、再発予防に取り組むのでしょうか。通常は、セッションの回数が決められており、1回ごとに設定されたテーマに沿って進められます。よく行われているプログラムの内容について解説します。

心理教育

心理教育とは、病気に対して適切な対処を取れるように、疾患理解を深めることをいいます。うつ病や不安障害などの精神疾患の症状について学んだり、精神疾患に特有の認知や行動の特徴を学びます。

例えば、うつ病であれば、「自分」「周り」「未来」の3つを否定的に考えてしまうといった認知の特徴があります。「自分は何もできない(自分)」「○○しても良くならない(将来)」などと考えた結果、家に引きこもりがちになるといった行動が続くのです。

こういった精神疾患の症状を認知や行動上の悪循環として捉えていき、対処するための方法を考えていきます。

認知再構成法

認知再構成法は、考え方の特徴である認知にスポットを当てて、バランスの取れた考え方ができるように取り組むものです。

よく用いられるのが「コラム法」という方法です。ストレスを感じた出来事や浮かんだ考え(自動思考)、感情などを表に書き込みます。さらに、その考えを裏付ける「根拠」、それを反論する「反証」を考えて、バランスの取れた考え方を導きます。

例えば、「上司に怒られた」という場面であれば、以下のように整理するのが主な進め方です。

  • 出来事・状況:指示を忘れていて、取引先の納期に間に合わなくなりそうだった。上司からは、指示をチェックするよう叱られた。
  • 感情:恥ずかしい(60%)、怒り(70%)、悲しい(70%)
  • 考え(自動思考):「これからも同じミスをするだろう」「私は役に立たない人間だ」
  • 根拠:これまでも1回したミスはもう1回していた、上司は激しく怒って迷惑そうな表情をしていた
  • 反証:ミスを起こさないようにメモはしていた、上司は『君には期待しているんだから』と言ってくれた
  • 適応的思考:「上司はミスに対してきつく叱ったが、期待してくれている部分もある。ミス防止のためにやれることをやっているけども、もう少しやれることはないか考えて、期待に応えられるように頑張って行こう」
  • 気分の変化:恥ずかしい(30%)、怒り(50%)、悲しい(40%)

行動活性化

行動活性化とは、行動にスポットを当てて問題を改善するアプローチです。
うつ状態などでエネルギーが低下していると、「体が疲れているから休むべき」と考えて何もせず過ごすということがあります。
また、アルコールを飲んで一時的に気分を紛らわせることもあるでしょう。

ただ、そのように過ごしても、沈んだ気分が続くことが少なくありません。
そういった状態を抜け出すために、「自分を健康にする行動」を増やすことが大切です。
そのために、まずは活動記録を付けて、どんな活動を行えば気分が改善し、または悪化するのかの傾向を知ります。
その中で、気分が改善したり、達成感を感じられたりする行動は何かを話し合い、意識的に取り入れていきます。

また、大きな目標を立てると達成できない可能性があるので、いくつかのステップに分けて小さな目標にすることが大切です。
例えば、「友達と外出する」という目標であれば、「友達を誘うための言葉を考える」などと、細分化すると取り組みやすいでしょう。

このように、健康な行動を増やすためにはどうしたらいいか、グループ単位で考えていくことが主な流れです。

同じ仲間と考え方を見直して再発を予防しましょう

集団認知行動療法では、考え方を見直したり、好ましい行動が取れるように、グループのメンバーが協力して取り組みます。

認知行動療法はセルフケアの方法としても活用できるように作られていますが、1人で取り組むよりも同じ仲間がいる方がモチベーションにつながることもあります。

リワークで行う集団認知行動療法で、自分の考え方を見つめ直し、安心して復職できるように取り組んでいきましょう。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:リワーク  投稿日:2024年3月18日

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