レジリエンスとは?リワークで重視されるストレス対処法について解説

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レジリエンス

「ストレスに負けない心」と聞くと、どのような心をイメージするでしょうか。
「絶対に折れない鋼の心」「動じない鉄の心臓」など、硬くて強いものを思い浮かべる人が多いかもしれません。
しかし、本当にストレスに強いのは、「柔軟でしなやかな心」なのです。

柔軟でしなやかな心を表す言葉として注目されているのが「レジリエンス」という概念です。
レジリエンスは、リワークのプログラムにおいても重視されており、仕事のストレスを上手に受け止めるために役立ちます。

本記事では、レジリエンスについて解説します。レジリエンスを高めて、ストレスに柔軟に対処する方法を解説していますので、ぜひ参考にしてください。

レジリエンスとは?

レジリエンスとは

レジリエンスとは、「ショックや困難な状況からうまく回復する力」を指す言葉です。
もともとは物理学の分野で「弾力性」を表す用語でしたが、ストレスに対する柔軟な対処能力として近年注目されています。

ショックな経験をすると、一時的に落ち込んだり、胸が苦しくなったりするなどの反応が生じます。
そういった出来事に対し、「苦しかったけど、何とかなると思って頑張った」と回復していく力がレジリエンスです。

研究では、ネガティブな出来事を経験した後も心の健康を維持できている人は、レジリエンスが高いことが示されています[1]

復職を目指す場合においても、休職前のような状態を避けるために、しなやかにストレスを受け流せる力が必要です。
リワークでは、ストレスマネジメントなどのプログラムで、レジリエンスの考え方が取り入れられています。

[1]『青年期のレジリエンス尺度の妥当性の構築』:Oshio A, Kaneko H, Nagamine S, Nakaya M. Construct validity of the Adolescent Resilience Scale. Psychol Rep. 2003 Dec;93(3 Pt 2):1217-22.

レジリエンスを構成する2つの要素とは?

レジリエンスを構成する2つの要素

レジリエンスに関する研究は数多くありますが、以下のように「環境要因」「個人要因」に分類されます。
環境要因とは、つらい状況からの立ち直りを支える周囲の環境や過去の経験が含まれます。
一方、個人要因は性格傾向やソーシャルスキルなど、一人ひとりがもつ特性に関する要因です。

環境要因の例

  • 家庭環境が安定している
  • 周りに相談できる
  • 目標とする人物がいる

個人要因の例

  • 楽観的である
  • 成功や失敗の原因は自分にあると考える
  • 感情をうまくコントロールできる

2つの要因は、独立したものではなく、互いに影響し合っています。例えば、周りに助けてくれる人がいるからこそ、「何とかなる」と楽観的に考えやすくなります。
失敗しても気持ちをコントロールし、楽観的に考えられるという特徴がレジリエンスだといえるでしょう。

楽観的でない人はレジリエンスを高められない?

レジリエンスを高められない?

レジリエンスの特徴をみてみると、「ポジティブでないとレジリエンスを高められないのでは?」と疑問に思う人もいるかもしれません。
楽観的であったり、自信があったりするなどの性格は、生まれ持っての部分も大きいものです。
レジリエンスの要因と考えられている特徴を、高めることはできないのでしょうか。

レジリエンス研究の中には、個人要因を「資質的要因」と「獲得的要因」に分類する考え方があります[2]
資質的要因とは、生まれ持っての性質が影響する要因であり、獲得的要因は成長段階で学習して身につけていく要因です。
レジリエンスを生まれつきの資質と、成長の中で獲得していく能力に分類する考え方です。

資質的要因と獲得的要因の種類としては、以下の7つが挙げられています。

資質的要因

  • 楽観性:将来を不安に感じず、ポジティブな期待を持ち行動する力
  • 統御力:不安が少なく、ネガティブな感情や体調に振り回されずにコントロールする力
  • 行動力:忍耐力で目標や意欲に向かって努力し、行動できる力

獲得的要因

  • 問題解決志向:状況を改善するために問題解決方法を考えたり、学んだりしようとする力
  • 自己理解:自分について適切に理解し、自分に合った目標設定をする力
  • 他者心理の理解:他人の心理を理解したり、受け止めたりする力

資質的要因は、生まれ持っての性質であるため、高めようとすると無理が生じることがあるかもしれません。
無理に資質的要因を高めるのではなく、獲得的要因を強化していく方がよいでしょう。

例えば、石橋を叩いて渡るような慎重なタイプの人が、楽観的に考えてもうまくいかないことが多いかもしれません。
その人にとっては、問題が起きたときに色んな可能性を考えて乗り切ってきた可能性があるからです。
そのため、楽観性を高めるよりも、問題解決志向を高めて、よりうまく問題に対処できるようにしていく方がよいでしょう。

レジリエンスは、資質的要因と獲得的要因ともに、年齢に応じて上昇していくことが研究で示されています[3]
そのため、経験によりレジリエンスを高めていくことが可能です。
リワークにおいても、復職を意識してレジリエンスを高めていくことが、スムーズな復帰に役立つでしょう。

[2]平野真理(2010)「レジリエンスの資質的要因・獲得的要因の分類の試み―二次元レジリエンス要因尺度(BRS)の作成」パーソナリティ研究第19巻第2号pp94-106
[3]上野雄己, 平野真理, 小塩真司(2018)「日本人成人におけるレジリエンスと年齢の関連」心理学研究

リワークプログラムで高められる3つのレジリエンス要因とは?

レジリエンス要因

リワークにおいても、レジリエンスを高めるためのプログラムが設定されています。
リワークでは、レジリエンスのどういった側面を高められるのでしょうか。

周りを頼る力

リワークではグループワークを通して、休職理由の振り返りを行うことがあります。
人前で話すことをためらうこともあるかも知れませんが、率直に話し、受け入れられる体験はレジリエンス向上のためには重要です。
「苦しいときには誰かを頼って大丈夫」という安心感を得られ、復職後に同じように悩んでもうまく対応できるでしょう。

感情をコントロールする力

リワークでは、認知行動療法やマインドフルネスの知識を取り入れたプログラムが行われています。

認知行動療法では、考え方のクセに気づいて、柔軟に考えられるように取り組むものです。
マインドフルネスは、意識的に注意を向けるトレーニングを行い、嫌な感情に影響されすぎないことを目標にします。
感情をコントロールしながら、落ち着いて問題解決できるスキルをリワークを通して学べるといえるでしょう。

自己理解力

再休職を防ぐには、限界やストレスを感じやすいポイントを知っておくというように、自分の弱みを理解することが大切です。
弱い部分を認められずに、「もっと自分はできるはずだ」と無理な目標設定をしてしまうと、自分を苦しめてしまいます。
これまでのキャリアを振り返り、強みと弱みを把握したうえで、どのように働くのが最適かを見直すことが必要なのです。

リワークでは、キャリアデザインに関するプログラムが行われています。
キャリアデザインを通して自己理解を深めることで、自分に合わせた目標設定ができ、レジリエンスの向上につながるでしょう。

レジリエンスの高め方は人それぞれ

リワークで重視されているレジリエンスは、1つの要素だけでなく、さまざまな要素が関係しています。
自分の性格から考えてどれを高められそうかを考え、レジリエンスの向上を意識していくとよいでしょう。

1人ではどのように高めていけばよいか分からない場合は、リワークに参加したり、専門家に相談したりするなど、誰かを巻き込むことがおすすめです。
誰かを頼る力もレジリエンスの1つだといえますので、リワークに参加して取り組んでみてはいかがでしょうか。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:セルフケア  投稿日:2023年11月17日

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