気分循環性障害とは?気分循環性障害の症状と原因

【お願い】
「こころみ医学の内容」や「病状のご相談」等に関しましては、クリニックへのお電話によるお問合せは承っておりません。

診察をご希望の方は、受診される前のお願いをお読みください。

気分循環性障害とは?

気分循環性障害の症状、診断、治療について、精神科医が詳しく解説していきます。

気分循環性障害は、本人がなかなか自覚しにくい病気です。

気分が不安定になってしまうことで生きづらさを抱えている病気なのですが、それは自分の性格のせいだと思いこんでしまいます。まずはこの病気を認識して、つきあっていくことが大切です。

しばらくの間、何事もなく調子よく普通に過ごしていても、特にきっかけもなく気分が落ち込んできてしまいます。

いろいろなことがネガティブに感じてしまい、それが人付き合いや行動などに影響をしてしまいます。

反対に、ひとりでに気分が高揚してきて、活動的で社交的になったりします。

ですがそれも長くは続かず、気分は不安定になってしまうのです。

このように気分循環性障害とは、軽い躁状態と軽いうつ状態の間を揺れ動く心の病気なのです。

気分循環症とも呼ばれます。軽度の双極性障害(躁うつ病)と考えると分かりやすいかと思います。

気分循環性障害の方は、程度は軽いとはいえ、気分の動揺をちょこちょこ繰り返します。

その中でいろいろな生きづらさを抱えているために、パーソナリティ障害と区別しづらいケースも多いです。

また、双極性障害と関連していることが分かっていて、気分循環性障害の約3分の1が双極性障害に発展するともいわれています。

気分障害の悪化を防ぐために、治療をしていく必要があります。

気分循環症の症状

双極性障害(躁うつ病)に症状が似ていて、軽い躁状態とうつ状態を繰り返しますが、双極性障害ほど深刻ではなく、症状も重症ではありません。ですが、特にきっかけもなく、ちょこちょこ気分が動揺してしまいます。

これが起因して、仕事や学校、近所等における人間関係を構築しづらくなってしまいます。そして、人間関係が壊れたり失職したりすることもあり、転職や離婚を繰り返して、アルコールや薬物依存に陥ってしまう方もいます。また、性格の問題と思い詰めてしまうことも多く、自殺を考えるまでに苦しみを抱える方もいらっしゃいます。

このような気分の不安定性による生活への支障が大きく、様々な不安障害や摂食障害などを合併しやすいです。

軽い躁状態とうつ状態

軽い躁状態>

  • 話し出すと止まらない
  • イライラ感が強い
  • 自信過剰で羽目を外しやすい
  • 楽観的になる
うつ状態
  • 気分が落ち込む
  • 口数が少なくなる
  • 集中力の低下
  • 自分を責める
  • 疲れやすい

変動のパターンと行動の例

気分の変動パターン例
  • 悲観的⇔楽観的
  • 自信低下⇔自信過剰・傲慢
  • 引きこもり⇔社交的
  • 無口⇔多弁
具体的な行動例
  • 活動を最後までやり遂げることが難しい。
  • 仕事にムラがあり、成果が出せない。
  • 学校成績が一定しない。
  • 転職や引っ越しを繰り返す。
  • エネルギッシュに見える時もあるが、すぐ落ち込むこともある。
  • 人との関係が安定せずに、喧嘩別れや離婚回数が多い。
  • 自傷行為がある。

気分循環性障害の原因

気分循環性障害の原因としては、遺伝的な要素も大きいと考えられています。気分変調性障害の患者さんの家族などを聞いてみると、気分の波が多い方が多いです。血の繋がりのある親族の中に、双極性障害の方がいる場合もあります。

ですから、遺伝的な要素も大きいと考えられています。ですが、気分の波がある両親から生まれた子が同じようになるのかというと、そんなことはありません。遺伝の要素だけではないのです。

気分循環性障害は、一般的には10代後半から20代にかけてはじまることが多いです。そしてそれからの人生にわたって持続していく病気なのです。ですから、生活環境というものも大きく関係していると思われます。

家族が役割を果たせていないご家庭で育った方や、幼少期のトラウマが関与して感情のコントロールができずに育った方に多いと言われています。

本来は子供の機嫌が悪い時には大人である親が間にはいって、うまく気分を変えていく方法を教えます。冗談を言ったり、抱きしめたり、美味しい物や好きな物を与えたりして、子供に安心感を与えリラックスさせます。そうすることで子供は生きるスキルとして学んでいき、気分をコントロールするための方法を自分なりに習得し増やしていきます。

人格形成において、これらが無く成長すると、うまく自分の気分をコントロールすることができなくなってしまいます。これが気分の不安定さにつながることも多いのでしょう。このような方は、何らかの偏りやひずみが出てきてしまうこともあります。それらが性格として固まってしまうと、パーソナリティ障害となっていきます。

まとめ

気分が不安定で、軽度うつと軽躁を揺れ動く病気です。

気分の浮沈みによって、人間関係や社会生活が安定しなくなってしまいます。

遺伝的要因に加えて、環境要因もあわさっていると考えられています。

【お願い】
「こころみ医学の内容」や「病状のご相談」等に関しましては、クリニックへのお電話によるお問合せは承っておりません。

診察をご希望の方は、受診される前のお願いをお読みください。

【お読みいただいた方へ】
医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、磁気刺激によるrTMS療法を先進的に取り組むなど、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。
精神科医をはじめとした医療職はもちろんのこと、法人運営スタッフ(医療経験を問わない総合職)も随時募集しています。

TMS治療とは? (医)こころみ採用HP

またメンタルヘルス対策にお悩みの企業様に対して、労務管理にも通じた精神科医による顧問サービスを提供しています。
(株)こころみらいHP

取材や記事転載のご依頼は、最下部にあります問い合わせフォームよりお願いします。

カテゴリー:双極性障害(躁うつ病)  投稿日:2023年3月23日

\ この記事をシェアする /

TWITTER FACEBOOK はてな POCKET LINE

関連記事

認知症の原因は何ですか?発症リスクを減らす方法も紹介

認知症の原因にはさまざまな説があります。 認知症は原因不明、大半はアルツハイマー病、ストレスが原因などといわれるようです。 いったいどれが正解でしょうか? この記事では、現時点で分かっている認知症の原因をまとめてみました… 続きを読む 認知症の原因は何ですか?発症リスクを減らす方法も紹介

投稿日:

認知症の薬は飲まないほうがよい?薬物療法は早期発見が鍵!

アルツハイマー型認知症は発症すると徐々に進行していく病気です。 アルツハイマー型認知症を根本的になおす薬はなく、治療において薬物療法は必須ではありません。 治療薬の目的はあくまで症状の進行を遅らせることです。 またレヴィ… 続きを読む 認知症の薬は飲まないほうがよい?薬物療法は早期発見が鍵!

投稿日:

認知症は何歳から増えてくる?予防と対策も解説

認知症は加齢とともに増えていくと言われますが、何歳から増えてくるのでしょうか? 実をいうと若年者の方でも認知症はみられます。 それゆえに早期からの認知症の予防が大切です。 本記事では、認知症の発症年齢、予防と対策について… 続きを読む 認知症は何歳から増えてくる?予防と対策も解説

投稿日:

人気記事

デエビゴ(レンボレキサント)の効果と副作用

デエビゴ(レンボレキサント)とは? デエビゴ(一般名:レンボレキサント)は、オレキシン受容体拮抗薬に分類される新しい睡眠薬になります。 覚醒の維持に重要な物質であるオレキシンの働きをブロックすることで、睡眠状態を促すお薬… 続きを読む デエビゴ(レンボレキサント)の効果と副作用

投稿日:

睡眠薬(睡眠導入剤)の効果と副作用

睡眠薬(精神導入剤)とは? こころの病気では、睡眠が不安定になってしまうことは非常に多いです。 睡眠が十分にとれないと心身の疲労が回復せず、集中力低下や自律神経症状などにつながってしまいます。ですから睡眠を整えることは、… 続きを読む 睡眠薬(睡眠導入剤)の効果と副作用

投稿日:

抗不安薬(精神安定剤)の効果と作用時間の比較

過度な不安が辛いときに有効な『抗不安薬』 不安は非常に辛い症状です。心身へのストレスも強く、身体の自律神経のバランスも崩れてしまいます。 抗不安薬(精神安定剤)は、耐えがたい不安で苦しんでいる方には非常に有用なお薬です。… 続きを読む 抗不安薬(精神安定剤)の効果と作用時間の比較

投稿日: