認知症の末期に関連した老衰死の前兆はどのようなもの?

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認知症の人を介護している方から、「認知症の人の最期はどうなるのですか?」と聞かれることがあります。
認知機能は低下しても体は元気なため、最期はどうなるのか想像できないのでしょう。
しかし、認知症の方もいつか必ず最期を迎えます。
そして合併症がなければ、老衰死に近い状況となるでしょう。
この記事では、老衰死について詳しく解説します。
これを読めば、認知症の方の最期を納得して穏やかに迎えられます。

老衰死とは?

厚生労働省の発行している「死亡診断書記入マニュアル」によると、老衰(死)とは「高齢者で他に記載すべき死亡の原因がない、いわゆる自然死」のことです。
加齢で身体機能が衰えて死亡した時に「老衰死」と診断されます。
病気や外傷などが原因で死亡した場合は老衰死とは呼べません。
2,000年頃から老衰死の数が増加する傾向にあります。
これは高齢者が介護施設で最後を迎える機会が増えていることが原因でしょう。
厚生労働省の統計によると、高齢者の死亡した場所の割合が大きく変化しました。
2,000年には約1割だった介護施設での死亡率が、2,020年には約5割に増えています。
最期を迎えるにあたり、入院はせず、介護施設で看取りを行うようになったからです。
入院すれば、何らかの病気が発見されて治療を行うため、亡くなられた場合は死因に病名がつきます。
それに対して介護施設で亡くなる場合は、死亡診断書に老衰と記載されることが多いようです。

老衰死の前兆はどのようなもの?

一般的には以下のような前兆がみられます。

  • 睡眠時間の増加
  • 身体機能の低下
  • 体重の減少

睡眠時間の増加

眠っている時間ならびにウトウトしている時間が増え、最終的にはほとんど1日中眠っているようになります。
脳の機能が低下して、幻覚症状意識障害を起こします。
また口から栄養をとる機会が減り、身体機能も衰えるのが特徴です。

身体機能の低下

筋肉や臓器が萎縮して身体機能が低下します。
転びやすくなり、歩くのも難しくなって、日常生活に支障を来します。
進行すると寝たきりとなる場合もあるでしょう。
臓器も正常に働かなくなり、身体の不調が現れます。

体重の減少

消化管が萎縮して正常に働かなくなり、食事から栄養を吸収しにくくなるのが特徴です。
また自力での食事が難しくなり、食事量も減ります。
その結果、体重が減り、やせ細ります

認知症の末期はどうなる?

一般的には以下のような症状がみられます。

  • 意思の疎通が難しくなる
  • 身体機能が低下する
  • 食欲が低下する

意思の疎通が難しくなる

認知症の末期にはコミュニケーション能力が低下し、話しかけても反応が少なくなります。
意欲や自発性が低下し、周囲への関心が薄れるのが特徴です。
そしてボーっとしている時間や、眠っている時間が増えます

身体機能が低下する

身体機能が低下して、筋力や臓器の働きが衰えます
寝たきりになることも少なくありません。
寝たきりになると自力で食事を取れなくなります。

食欲が低下する

食に対する関心が薄れ、食べ物を認識できなくなり、食欲も低下します。
嚥下機能が低下し、食べ物をのみ込むことが難しくなるのも特徴的です。
最期には全く飲み食いできなくなります。

認知症の末期は老衰死の前兆と同じ?

認知症の末期に見られる症状と老衰死の前兆はよく似ていますね。
ほぼ同じ状態といっても過言ではないでしょう。
筋肉、臓器、脳の機能が低下し、眠っている時間が増え、やがて寝たきりとなり、食事を取らなくなって体重が減ります
老化により身体の機能が衰え、自然死にいたる状態であり、まさに老衰死です。
ただし末期に誤嚥性肺炎などを併発して死亡した場合は、肺炎が死因であり、老衰死ではありません。
死にいたる合併症がなければ、大半の認知症の最後は老衰死と診断されます
死因が認知症と診断されることは少ないようです。
2022年の厚生労働省の人口統計(p.10)によると、死因のうちアルツハイマー型認知症ならびに脳血管型認知症が占める割合はそれぞれ1.6%でした。
それに対して、死因が老衰の割合は11.4%でした。
老衰の全てが認知症というわけではありませんが、老衰が死因と見なされるほうが多いでしょう。

認知症の末期に死の前兆にどう対応したらよい?

死の前兆として、眠っている時間が増え、やがて寝たきりとなり、食事を取らなくなって体重が減ることを解説しました。
これは老化により身体の機能が衰え、自然死にいたる状態です。
一昔前までは高齢者を家で看取るのは当たり前でした。
子どもの頃から死の前兆を見かけるのが日常の出来事だったのです。
最近になって、高齢者の最期は病院あるいは介護施設が中心となり、一般家庭で死の前兆を見かけることが少なくなりました。
不慣れな状況であり、不安や恐れを抱くのは仕方ないかもしれません。
しかし人間として一生を全うするうえで必ず通る道です。
決して恐ろしいことが起こるわけではなく、もし何かが起こっても誰のせいでもありません。
心を穏やかに保ち、ご家族の最期を見守ってあげてください
看取りを通じて、介護者にも何か得るところがあるはずです。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:認知症  投稿日:2024年1月20日

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