メマンチン(メマリー)の効果と副作用

【お願い】
「こころみ医学の内容」や「病状のご相談」等に関しましては、クリニックへのお電話によるお問合せは承っておりません。

診察をご希望の方は、受診される前のお願いをお読みください。

アルツハイマー型認知症の治療薬ではアリセプトが有名ですが、アリセプトとは作用機序が異なり、併用できるメマンチン(商品名:メマリー)という薬があります。
ここではメマンチンの性状、効能・効果について解説します。

1.メマンチンの剤形・薬価

メマリーには、フィルムコーティング錠、OD錠、ドライシロップがあります。
ジェネリックにも同様に、錠剤、OD上、ドライシロップがあります。
以下のカッコ内は、メマンチン(ジェネリック)の薬価になります。

1-1.メマリー錠

フィルムコーティング錠
メマリー錠5mg:薬価100円/錠(17.7~30.5円)
メマリー錠10mg:薬価179.2円/錠(34.6~54.9円)
メマリー錠20mg:薬価321.9円/錠(61.4~98.8円)

1-2.メマリーOD錠

口腔内崩壊錠
メマリーOD錠5mg:薬価100円/錠(17.7~30.5円)
メマリーOD錠10mg:薬価179.2円/錠(34.6~54.9円)
メマリーOD錠20mg:薬価321.9円/錠(61.4~98.8円)

1-3.メマリードライシロップ2%

薬価321.9円/g(124.9円)

2.メマリーの効能・効果

効果は「中等度および高度アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制」です。
ただしアルツハイマー型認知症の病態そのものの進行を抑制する効果はありません。
またアルツハイマー型認知症以外の認知症に対する有効性は確認されていません。

メマリーをやめたらどうなる?

メマリーの服用を途中でやめてしまうと、以前とまったく同じ状態に戻ってしまうことがあります。
メマリーには鎮静作用があるので、それがなくなることで興奮が強まってしまうことがあります。

3.メマリーの作用機序

アルツハイマー型認知症ではグルタミン酸神経系の機能異常が関係しています。
グルタミン酸受容体のサブタイプであるNMDA受容体チャンネルの過剰な活性化が原因の一つと考えられています。
メマリーはNMDA受容体チャンネルの機能異常を抑制する薬です。

アリセプトとの違い

メマリーとアリセプトは作用機序が異なる薬です。
アルツハイマー型認知症およびレビー小体型認知症では、脳内コリン作動性神経系の顕著な障害が認められます。
アリセプトは、アセチルコリンを分解する酵素であるアセチルコリンエステラーゼを阻害することで脳内アセチルコリンを増加させ、脳内コリン作動性神経系の働きを活発にします。
作用機序が異なるため、メマリーとアリセプトは併用することができる薬です。

4.メマリーの用法・用量

1日1回5mgより開始し、1週間に5mgずつ増量し、維持量として1日1回20mgを経口投与します。
少量から開始するのは、副作用の発現を押させる目的であり、維持量まで増量することが必要です。

5.メマリーを服用する際の一般的な注意事項

本剤の有効性が認められない場合、漫然と服用せず、継続するかどうかを検討することが必要です。
眠気・めまい・意識障害を起こすことがあるため、自動車等の運転、危険を伴う機械の操作は禁忌です。

6.メマリーを服用する際に注意すべき合併症・状態

以下の病気あるいは状態がある場合は注意してください。

  • てんかんまたはけいれんの既往:発作を誘発・悪化させることがあります。
  • 尿のpHを上昇させる因子(尿細管性アシドーシス、重症の尿路感染症など):メマリーの血中濃度が上昇することがあります。
  • 高度の腎機能障害(クレアチニンクリアランス値が30mL/mm未満)がある場合、維持量は1日1回10mgとすること。
  • 妊婦または妊娠している可能性がある女性:ベネフィットがリスクを上回ると判断させる場合のみ服用可
  • 授乳婦:治療の有益性と母乳栄養の有益性を考慮して、授乳の継続を検討

7.メマリーとの併用に注意すべき薬

  • ドパミン作動薬(レポドパ等):ドパミン作動薬の作用を増強させることがある
  • ヒドロクロロチアジド:ヒドロクロロチアジドの血中濃度を低下させる
  • 腎尿細管分泌により排せつされる薬剤(シメチジン等):メマリーの血中濃度が上昇することがある
  • 尿アルカリ化を起こす薬剤(アセタゾラミド等):メマリーの血中濃度が上昇することがある
  • NMDA受容体拮抗作用を有する薬剤(アマンタジン塩酸塩、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物等):相互に作用を増強させることがある
  • 認知症の他の治療薬であるアリセプトとの併用が可能です。

8.メマリーの副作用

注意すべき重大な副作用と、その他の副作用を解説します。

8-1.重大な副作用

まれにしか起こりませんが、重大な副作用を示します。

けいれん・失神・意識消失

けいれんの出現頻度は0.3%、失神・意識消失は頻度不明です。

精神症状

激越(出現率0.2%)、攻撃性(0.1%)、妄想(0.1%)、幻覚(頻度不明)、せん妄(頻度不明)などが現れることがあります。

肝機能障害・黄疸

頻度不明

横紋筋融解症

筋肉痛・脱力感がみられることがあります。頻度は不明です。

8-2. よくみられる副作用と対策

比較的頻度の高い副作用を示します。

ふらつき・めまい

出現率1~5%
認知症の方にとって、ふらつき・めまいはとても危険です。
散歩中にめまいが生じると、転倒して骨折や交通事故を起こすことがあります。
ですからメマリーを服用中は、一人での外出はできるだけ避けてください。

消化器関連

便秘・食欲不振(1~5%)
よくみられる副作用ですが、軽度な場合は様子をみていれば自然におさまります
メマリーを5mgから開始して1週間に5mgずつ増量していけば、大抵の場合は維持量である20mgでも副作用がなく使えます。
症状が続く場合は、便秘薬や吐き気止めを併用して、メマリーを続けることがあります。
それでもおさまらない場合は、他の薬(アリセプト・イクセロンパッチなど)へ変更が必要です。

心臓関連

血圧上昇(1~5%)、上室性期外収縮(1%未満)

9.メマリーの有効性に関する臨床成績

中等度から高度のアルツハイマー型認知症患者315名を対象にメマリー10mgまたは20㎎、もしくはプラセボを24週間投与して有効性を調査しました。
認知機能を評価するSIB-Jにおいて、プラセボ群とメマリー20mg投与群の間に有意差を認めています。
この結果、メマリーの中等度から高度のアルツハイマー型認知症患者に対する効果が証明されました。

10.まとめ

メマリーは中等度および高度アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行を抑制する薬です。
認知症治療薬として有名なアリセプトと併用できるのが特徴です。
フィルムコーティング錠、口腔内で崩壊するOD錠、ドライシロップがあります。
1日1回5mgより開始し、1週間に5mgずつ増量し、維持量として1日1回20mgを経口投与してください。
眠気・めまい・意識障害を起こすことがあるため、自動車等の運転、危険を伴う機械の操作は禁忌です。
てんかんまたはけいれんの発作を誘発・悪化させることがあります。

【お願い】
「こころみ医学の内容」や「病状のご相談」等に関しましては、クリニックへのお電話によるお問合せは承っておりません。

診察をご希望の方は、受診される前のお願いをお読みください。

【お読みいただいた方へ】
医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。

クリニック一覧

医療職はもちろんのこと、法人運営スタッフ(医療経験を問わない総合職)も随時募集しています。

(医)こころみ採用HP

取材や記事転載のご依頼は、最下部にあります問い合わせフォームよりお願いします。

画像名の[sample]の部分に記事の名前を入れます

執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:認知症治療薬  投稿日:2024年3月19日

\ この記事をシェアする /

TWITTER FACEBOOK はてな POCKET LINE

関連記事

うつ病の原因は家族かも?治療法ややってはいけないことをくわしく解説します!

「うつ病の原因は家族かも」「家族が原因だった場合はどうしたらいいの?」と悩んでいませんか? 家族が原因でうつ病になる場合があります。 本記事では、うつ病の原因が家族にあるときの治療法や、やってはいけないことをくわしく解説… 続きを読む うつ病の原因は家族かも?治療法ややってはいけないことをくわしく解説します!

投稿日:

うつ病の中高生が親に言えないときの対処法4つ!メリットやデメリットも解説

「うつ病かもしれないけど親には言えない」「親にうつ病かもしれないと言った方がいいの?」 このようなことで悩んでいませんか? うつ病になった場合、親に伝えることで、 治療を早くはじめられる 病状が理解され、サポートしてもら… 続きを読む うつ病の中高生が親に言えないときの対処法4つ!メリットやデメリットも解説

投稿日:

抗不安薬(精神安定剤)の効果と副作用

抗不安薬(精神安定剤)とは? こころの治療では、抗不安薬は即効性の期待できるリラックスできるお薬として、よく使われています。 世間的には、精神安定剤という方が一般的でしょうか。 現在使われている抗不安薬は、そのほとんどが… 続きを読む 抗不安薬(精神安定剤)の効果と副作用

投稿日:

人気記事

デエビゴ(レンボレキサント)の効果と副作用

デエビゴ(レンボレキサント)とは? デエビゴ(一般名:レンボレキサント)は、オレキシン受容体拮抗薬に分類される新しい睡眠薬になります。 覚醒の維持に重要な物質であるオレキシンの働きをブロックすることで、睡眠状態を促すお薬… 続きを読む デエビゴ(レンボレキサント)の効果と副作用

投稿日:

睡眠薬(睡眠導入剤)の効果と副作用

睡眠薬(精神導入剤)とは? こころの病気では、睡眠が不安定になってしまうことは非常に多いです。 睡眠が十分にとれないと心身の疲労が回復せず、集中力低下や自律神経症状などにつながってしまいます。ですから睡眠を整えることは、… 続きを読む 睡眠薬(睡眠導入剤)の効果と副作用

投稿日:

抗不安薬(精神安定剤)の効果と作用時間の比較

過度な不安が辛いときに有効な『抗不安薬』 不安は非常に辛い症状です。心身へのストレスも強く、身体の自律神経のバランスも崩れてしまいます。 抗不安薬(精神安定剤)は、耐えがたい不安で苦しんでいる方には非常に有用なお薬です。… 続きを読む 抗不安薬(精神安定剤)の効果と作用時間の比較

投稿日: