リバスチグミン(イクセロンパッチ・リバスタッチ)の効果と副作用
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アルツハイマー型認知症の治療を行う際に、薬を内服できない場合、イクセロンパッチ・リバスタッチといったフィルム型の張り薬を用いられます。
本記事では、イクセロンパッチとリバスタッチの有効成分、性状、効能・効果、用法・用量、注意事項、副作用、有効性を示す臨床試験について解説します。
アルツハイマー型認知症の治療を行う際に役立ててみてください。
イクセロンパッチとリバスタッチの違い
両者は製造会社が異なりますが、有効成分は同じです。
イクセロンパッチ・リバスタッチの有効成分
有効成分は「リバスチグミン」です。
アセチルコリンを分解する酵素であるコリンエステラーゼを阻害することにより、脳内のアセチルコリンを増加させ、脳内コリン作動性神経の働きを高めます。
イクセロンパッチ・リバスタッチの性状・薬価
両者はフィルム型の経皮吸収型製剤です。
支持体がベージュ色の円形の平板で、4種類の性状があります。
- イクセロンパッチ・リバスタッチ4.5mg:面積2.5cm²、質量100mg
- イクセロンパッチ・リバスタッチ9mg:面積5cm²、質量200mg
- イクセロンパッチ・リバスタッチ13.5mg:面積7.5cm²、質量300mg
- イクセロンパッチ・リバスタッチ18mg:面積10cm²、質量400mg
薬価は両者で多少異なります。(令和6年1月現在)
- イクセロンパッチ4.5mg:199.7円/枚
- イクセロンパッチ9mg:225.3円/枚
- イクセロンパッチ13.5mg:240.8円/枚
- イクセロンパッチ18mg:251円/枚
- リバスタッチ4.5mg:210円/枚
- リバスタッチ9mg:238円/枚
- リバスタッチ13.5mg:252.1円/枚
- リバスタッチ18mg:265.6円/枚
イクセロンパッチ・リバスタッチの効能・効果
軽度および中等度のアルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制です。
ただしアルツハイマー型認知症の病態そのものの進行を抑制するという成績は得られていません。またアルツハイマー型認知症以外の認知症性疾患において有効性は確認されていません。
イクセロンパッチ・リバスタッチの用法・用量
1日1回4.5mgから開始し、4週ごとに4.5mgずつ増量して、維持量として1日1回18mgを貼付し、24時間ごとに貼り替えます。
患者さんの状態に応じて、9mgから開始してもかまいませんが、後で述べる「慎重に投与すべき人」の場合は、必ず4.5mgから開始したほうがよいでしょう。
増量している最中に消化器症状(悪心・嘔吐など)がみられた場合、減量するか、症状が消失するまで休薬してください。休薬期間が4日程度の場合は、休薬前と同じ用量を再開します。
休薬期間が4日以上の場合は、開始時の用量(4.5mgまたは9mg)で再開してください。再開後は2週間以上の間隔で休薬前の用量まで増量します。
なお18mg未満は有効用量ではありませんので、維持量である18mgまで増量が必要です。
イクセロンパッチ・リバスタッチを貼る場所
背部・上腕部・胸部のいずれかの正常で健康な皮膚に貼付します。
添付剤ですのでかぶれてしまうことがあり、左右交互に貼っていき、はがした側は保湿剤などでケアすることをお勧めします。
イクセロンパッチ・リバスタッチの基本的な注意事項
効果が得られない場合は、漫然と投与しないでください。本剤を使用中にめまいや眠気を起こすことがあるため、車の運転、危険を伴う機械の操作はしないでください。
そもそも認知症になりますので、運転も危険作業も控えていただく必要があります。
本剤の貼付により皮膚症状が現れることがあるため、貼付する箇所を毎回変えてください。
また古い製剤を除去せずに新たな製剤を貼付すると、過剰投与となって重篤な副作用を起こすリスクがありますから、注意してください。
特定の合併症がある場合の注意事項
以下のような合併症がある際は、症状を悪化させるリスクがあるため注意してください。
- 洞不全症候群・伝導障害
- 心筋梗塞・弁膜症・心筋症などの心疾患
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
- 尿路閉塞
- てんかん・けいれん
- 気管支喘息・閉塞性肺疾患
- 錐体外路障害(パーキンソン病・パーキンソン症候群)
- 低体重
- 重度の肝機能障害
また現実的に使われることはないと思いますが、以下のケースも注意が必要です。
- 妊 婦:治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与
- 授乳婦:治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続・中止を検討してください。
- 小 児:小児を対象とした臨床試験は実施していません。
イクセロンパッチ・リバスタッチの副作用
よくみられる副作用と重大な副作用を示します。
よくみられる副作用と対策
よくみられる副作用と対策を解説します。
食欲減退(5%以上)・悪心・嘔吐(5%以上)
よくみられる副作用ですが、軽度な場合は様子をみていれば自然におさまります。
用法のところで解説しましたように、4.5mgから開始して4週間ごとに増量していけば、大抵の場合は維持量である18mgでも副作用がなく使えます。
症状が続く場合は、吐き気止めや便秘薬を併用して、本薬を続けることがあります。
それでもおさまらない場合は、他の薬(メマリー)へ変更が必要です。
接触性皮膚炎(5%以上)
かゆみや発赤などの皮膚症状がみられることがあります。これを予防するためには、新しいパッチを貼る際に、前回と異なる場所に貼ることが大切です。
また入浴後に保湿剤を塗ってからパッチを貼るのも有効です。
皮膚症状が続く場合、軟膏を使うこともありますので、主治医と相談してください。
重大な副作用
まれにしか起こりませんが、重大な副作用を示します。
心臓関連
狭心症(0.3%)、心筋梗塞(0.3%)、徐脈(0.8%)、房室ブロック(0.2%)、洞不全症候群(頻度不明)、QT延長症候群(0.6%)
脳血管関連
脳血管発作(0.3%)、けいれん発作(0.2%)
消化器関連
食道破裂を伴う重度の嘔吐(頻度不明)、胃潰瘍(頻度不明)、十二指腸潰瘍(0.1%)、胃腸出血(0.1%)、肝炎(頻度不明)
精神症状
失神(0.1%)、幻覚(0.2%)、激越(0.1%)、せん妄(頻度不明)、錯乱(頻度不明)
イクセロンパッチ・リバスタッチの有効性を示す臨床試験
軽度および中等度のアルツハイマー型認知症患者を対象にして、本剤18mg投与群、プラセボ群を比較しました。
両群に対して認知機能検査(ADAS-J cog)を施行したところ、本剤18mg投与群とプラセボ群の間に、統計学的に有意な差がみられました。
本剤は、軽度および中等度のアルツハイマー型認知症における認知症症状の進行を抑制することが示されました。
まとめ
イクセロンパッチ・リバスタッチはフィルム型の経皮吸収型製剤です。認知症の治療薬を内服できない場合、張り薬として用いられます。
軽度及び中等度のアルツハイマー型認知症における認知症症状の進行を抑制できます。
1日1回4.5mgから開始し、4週ごとに4.5mgずつ増量して、維持量として1日1回180mgを貼付し、24時間ごとに貼り替えます。
増量している最中に消化器症状(悪心・嘔吐など)がみられた場合、減量するか、症状が消失するまで休薬してください。
参考サイト:
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:認知症治療薬 投稿日:2024年1月27日
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